集団
〔葵〕
どんな社会集団にも,グループによる序列というものがある。それは役職によるものだったり,自然とそれを評判が作ったものだったりする。そんなわけだが,もちろん私の学校にも,その序列はあった。
「どうしたの葵ちゃん,そうなぼーっとして」
「ぐみちゃんの可愛さに見惚れてたの」
ぐみちゃんとは,私の友達だ。本名は岩倉と同じく「
しかし,一緒に過ごすと,彼女の深い人格や,美しさに気がつくので,私からの評価はとても高かった。
現実を見てしまうと,私たちはスクールカーストの中でも中の下くらい。特に注目もされず,目の敵にもされない心地いい位置なのだが,今回の一件で少し変わってしまった。
ぐみちゃんの綺麗さに気がついた趣味の良い少年,少年Xとしよう。とにかく,少年Xがいたのだが,その少年Xにクラスのアイドル的マドンナ風注目の的,熊野さんがお熱をあげていたのだ。
これは非常にまずい,というわけで,彼女の傘下のようなグループが,ぐみちゃんを一生懸命に勧誘している。
そして,なんだかんだあって私もクラスの上位グループに入れと圧をかけられているのだが,入りたくない。
だが,お互い入らない選択をしてしまうと,名前を口に出してはいけない「あの惨事」が起きてしまう。そこで,今悩んでいるという状況だ。
「ところでさ,楠田くんだから少年Xって安直だと思う?」
「流石に行かないんじゃない?安直とまでは」
そこで現状に疲れたのか,ぐみちゃんは眼鏡を外し,少し長いため息を吐いた。
「あ,イだ。」
「え?」
「イだよ,イ。藺草だよ。畳に使われる」
イグサと言われ,少し瞳孔を開く。自分の義姉の名前かと,勘違いしてしまった。
確か,青藺は今,高校の校外学習に行っている。
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