Attention please!
いつも通り,玲と帰り道をとぼとぼと進んでいると,どこからか放送が聞こえた。
−通り魔に,ご注意ください。繰り返します。通り魔に,ご注意ください。–
ここらの町内放送だ。最近,この宍向市で起こった通り魔事件が話題になっている。
「あ,やばいかもしれない。」
「ん?どうしたんだよ,玲。」
「ほら,あの課題あるだろ。」
「ああ,授業参観のやつか。」
「俺,それ忘れてきたかも。」
「それは,ちゃんとやばい。」
「そうだろ。結構ピンチだ。」
「それで俺に着いてこいと。」
「まあ,そういうわけだな。」
授業参観で,作文を発表するという課題があり,担任が厳しいがために,というか厳しくなくても忘れてはいけないものだった。しかし,それを玲が忘れたため,取りに行きたいのだが,いかんせん一人で歩くのは危険だ。
まあ,何かあったら俺の仕事で
「じゃあ,俺とってくる」
玲が下駄箱に消える。急に,尿意が催してきた。近くにコンビニがあるのを思い出し,すぐ帰るからと,その場を去った。
目の前で,信じられないことが起きている。
見知らぬ女が,玲を刺していた。女は手首を捻ると,素早く刃物を抜いた。赤い液体が玲から吹き出す。女が足早に立ち去る。玲が崩れ落ちた。
腹部より少し上を刺されており,出血がひどい。経験上,もう助からないことがわかってしまい,目の前が暗くなる。地面を殴ったところで,服の内あるナイフが零れ落ちた。
そうだ。今俺がこれで玲の息を止めれば,呪いの被害者になる代わりに,玲はまた息を吹き返すのではないか。
ナイフを手に持つ。いつもなら震えないのに,手が異常に揺れている。視界が震動しているせいもあるかもしれない。玲が呻き声をあげる。
「あ,現?」
「ごめん,玲」
頬に何かが伝うのが,くすぐったかった。玲に刺さるナイフが光り,砂になって消えていく。傷口も,どんどん消えていく。
その何かを止め,また友人と話すために心を沈めた。その日以来,俺は脳の大事な何かを失っている気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます