第8話 悪役令嬢の初乙女ゲームプレイ
「えっと……マルボタン、で、続きが読めるんでしたわよね?」
「そうそう、後のことは大体わかった?」
「ええ、私、こう見えて暗記は得意中の得意ですので」
マリアンヌは自信たっぷりにコントローラーを握りながら言い放つ。
俺もゲーム上での記憶は完全に自分の頭に保管してあるから、問題はないはずだ。
彼女にコントローラーの説明を終えて、呑み込みの早い彼女には助かった。
妹が最初にゲームをする時、なぜか俺が教えてたもんな……前例がある分だけ、説明がしやすかった。
とりあえず、マリアンヌにゲームをスタートさせることにした。
「そっか、それじゃゲームをスタートさせて」
「え、ええ」
マリアンヌは恐る恐るマルボタンを押す。
画面が切り替わり、ピンク色の鳥が映る。
確か、このゲームのマスコットキャラである鳥のミアブルのはずだ。
「じゃあ、まず攻略対象はゲームの映像で見て覚えたよね?」
「え、ええ……そもそも彼らの名前も出ていましたし」
このゲームの攻略対象キャラは全員で八人。
最初に攻略できるのは七人で、最後の一人であるウィリアム王子が最後の攻略キャラになるような構成になっている。
俺はとりあえず、脳内でキャラ確認をしながら指で数えていくことにした。
まず、一人目はオレンジ髪緑目の平民の同級生、ドミニク・グリューンアスト。
ワンコ系の頼りがいのある兄貴分である、いい奴だ。
二人目は赤髪赤目のオールバックの男性、セト・ヴァインロート。
ウィリアムに仕える騎士で、紳士で落ち着いた性格のキャラだ。
三人目は茶髪青目のクセ毛先輩、ハイド・ブラオホルテンズィー。
飄々としたチャラ男な貴族で、俺は苦手なキャラだ。
四人目は紺色の髪と橙目の同級生、シギル・プルファロータス。
ハイドの実の弟でブルーメンブラット教会の息子であり、学年首席をキープするツンデレ男子だ。意外と可愛らしい奴である。
五人目はピンク髪と赤い瞳をしたブライアン・ローザネルケ。
可愛い見た目をした女装系小悪魔後輩だ。文字通り、悪魔であり、選択肢によって攻略キャラたちの好感度を教えてくれるキャラでもある。
六人目は銀髪で金色の瞳の軍人、レイフ・ゲルプクリュザンテーメ。のほほんとしたお茶目なおじ様キャラだ。
七人目は紺色の長髪と銀色の瞳をした眼鏡教師、アーロイス・ドゥンケルブラオルヒデーエ。ダウナー系な主人公の担任教師である。
八人目は最後の大鳥で金髪金目の王子、ウィリアム・フォン・ヴァイスブルーム。マリアンヌの婚約者でもある、性格も王子様系キャラである。
イメージカラーの順番的にレッドがセト、オレンジがシギル、イエローがレイフ、グリーンがドミニク、ブルーがハイド、インディゴがアーロイス、パープル&ピンクがブライアン、ホワイトがウィリアムである。平民に騎士、貴族の息子に教会の息子、悪魔に軍人に先生に王子……思い出しただけでも、胃もたれしそうな人選だ。
ローディングが終わり、画面は夜の映像に変わる。
「あ、映像が変わりましたわ!」
映し出されているのは、主人公が車で異世界転移する、という説明シーンである。
マリアンヌはじっと真剣に見つめる。
悪役令嬢が自分が登場している乙女ゲームをしている、というシュールな光景はどうも慣れない。いや、これから俺も慣れていかなくてはいけないことなんだろうけど。
「女神様、こんな姿でしたの!?」
「みたい、だね」
「まあ、素敵なお姿ですわ……見惚れてしまいます」
マリアンヌはゲームに没入していた。
ゲームを進めて行く過程で彼女に他のキャラのことについて教えるのもいいだろうけど、あんまり女神様がネタバレ禁止らしいし下手にキャラたちの過去とかは教えてはいけないだろう。ということは……OPも観たわけだから、キャラの名前がちゃんと覚えてない場合再度言う程度でいいか。
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