僕は君の中で死んだ

 ゴロゴロと音を立ててキャリーケースが転がる。道の舗装具合が違う所為だろう、家を出たばかりの時よりも音はかなり小さい。それなのに、さっきからその音ばかりがやけに胸に響く。

 もうすっかりと陽は落ちて、駅前のロータリーにはバスや迎えの車が並んでいる。この街に、こんなに人がいたんだなと少し失礼な感想を抱いた。歩行者用信号機のメロディ、バスのエンジン音とドアの閉まる音、学生が握る自転車のブレーキ音、車が通り過ぎる音。雑踏、とは言えないかもしれないけど耳を澄ませば少なくない音がこの空間を充填している。それなのに、少しでも気を抜けば、キャスターと自分自身の足音だけしか聞こえなくなる。ある程度予想はしていたけれど、緊張、している。家を出た時も、神社で手を合わせた時も、バスを待っていた時も、電車に乗っていた時も、程度の差はあれどそうだった。でも今は今までがそうとは言えない程に緊張している。電車を降りて、駅の階段を下った辺りからだ。今までも頭の中に存在していた不安が上書きされて、大きな影が思考を覆ったように思えた。


 僕は、君に会いたいのだろうか。家を出た時の荒んだ、角張っていた心は、丁度このキャスターが転がった分だけ丸くなって仕舞ったように思える。この期に及んで、僕は傷付くことを恐れている。でも、それでも、「君が僕に会いたくないのなら」とか思わないだけの自分勝手さは失われてはいないようだった。

 きっと、僕は今僕のためにここに居る、ということを忘れてしまえば、自分自身の心がそれ自身の重さによって内側に崩壊して、すぐにでもこの街を離れてしまいたくなるだろう。そうだ、決して君のためじゃない。全く期待していないと言えばそれはそれで嘘になるのだけれど、この一年、一度も君が帰ってこなかった、その事実の前でどんな期待を抱けるだろうか。


 ロータリーを離れて五分もしない内に目的のホテルは見つかった。横幅の割に縦が長く見える、どこにでもある系列のビジネスホテルだ。普通のホテルと違う点と言えば、各部屋にキッチンと洗濯機が備え付けられていることくらいだろう。そう言えば予約サイトにも、長期滞在におすすめとか書いてあったような気がしている。

 間の悪い自動ドアを潜ると、気難しそうな顔をした男が一人フロントに立っていた。休日だったらチェックインの客で溢れていてもおかしくなさそうなフロントは、さっきよりもキャスターの音が滑らかになったことに気付く程にがらんとしていた。そこそこ大きな音を響かせながらフロントに向かう間も、フロントの男はこちらに一瞥もすることなく手元にあるタブレットを眺めている。あと三歩でこっちから声を掛けるというところで、その男はハッとした顔でこちらを見た。目の前に立つと意外と背が高い。男は直ぐに表情を正して、

 「お名前をお伺いします。」

 と言った。

 「荻原です」

 「荻原様ですね。本日はお越しいただきありがとうございます。三泊、シングルルームの素泊まりプランでお間違いないでしょうか?」

 僕は、はい、とだけ答えた。

 「ありがとうございます。では、こちらがルームキーとなっております。お部屋はエレベーター上がっていただいて七階の七〇五号室となっております。チェックアウトの際は、ロビー中央の柱の前にございますカードリーダーにカードをお通し下ください。」

 それから彼は、チェックアウト時刻やガスコンロ、洗濯機を使う際の注意事項を事細かに説明した。毎日のようにこれを繰り返すのは大変だなと思いながら聞いていると、最後の方は早口になっていた。念の為、別に急かしてなんかないよという顔だけしておいた。一通り説明が終わってエレベーターに向かうと、背後から「ごゆっくりどうぞ」という声が聞こえた。

 エレベータに乗り込んで7のボタンを押す。そう言えば、自分の苗字を声に出したのは随分と久しぶりな気がする。こんなことで、苗字が同じ君と付き合い始めたばかりの頃を思い出した。




 「苗字がおんなじ人同士って結婚できんのかな」

 学内の中庭にあるベンチに座って、隣でアイスを食べている君が訊いてきた。

 「付き合ってばかりなのに結婚の話なんて大胆なことするね」

 「別にいいだろ」

 「僕も同じこと気になってさらに調べてるくらいだから僕の方が上手だったね残念」

 「それで、結果は」

 「できるってさ」

 「へー」

 「嬉しい?」

 「喜ぶにはまだ早い」

 「とりあえず喜んどきなよ。因みに隣の国では最近まで出来なかったらしいよ」

 「なにそれまじか。訊いといてあれだけど、いざ出来ないって聞くとびっくりだな」

 「ね。よかったね。」

 「よかったと思ってるの?」

 「そりゃ、まあ。」

 君は、ははっとだけ笑ってアイスにスプーンを突き刺した。

 「私ね、君と出会えたことは運命だと思ってるの」

 「また大胆なことを」

 「だって、大してありふれてもない苗字同士が惹かれあって、こうして付き合うことになったんだよ。運命以外の何物でもない」

 「・・・」 

 「なんだよ」

 「いや、そんだけの理由なんだって思って」

 「だけとはなんだ、だけとは。だって、確率で言ったら結構低めだと思わない?同じ苗字カップル界隈でもかなりレアケースだと思う。そんな界隈があるのかも知らないけど。でもきっと、本当はそれにかこつけて、これを運命だということにしておきたいんだよ私は。こんなこと語っておいてなんだけど、私は別に運命ってものが初めから存在してると思ってるわけじゃないの。きっと、そう思いたい何かがあったときに、そう思うことで初めてそれは存在するんだよ。それで、それは心に飼うおまじないなようなもので、何かうまくいかない時とか、離れ離れになってしまいそうになった時にほんの少しの力を貸してくれるんだと思う。だから私は君との出会いを運命だと思いたいし、実際にそう思ってる。」

 「中庭でアイスを食べながらそういうことを言えるところが好きだよ」 

 「お?告白か?ふっちゃおうかな」

 「運命だと思いたいんだろ」

 「それで、奏はどうなの」

 「僕は、」




 この後、僕はなんと返したんだっけ。僕の言葉で君は喜んでいたような気もするし、少し怒っていたような気もする。思い出せない。でも君の言葉はちゃんと覚えている。

 

 運命だと思っていたんじゃなかったのか。君が最後にあの家のドアを開けた時、そのおまじないは効かなかったのだろうか。やっぱり、そんな小さなおまじないじゃ君の足を止めるには足らない程の大きな理由があったのだろうか。もしかしたら、それよりもずっとずっと前から。

 少なくとも、僕はまだそのおまじないを心に飼っている。それは、今にも消えそうな火みたいで、ほんの少しの風に吹かれることさえも怖がっている。君は、どうだろうか。


 僕は、自分自身が真っ暗な部屋に一人で突っ立っていることに気がついた。別に比喩的な意味ではなくて。

 思考は君の事を回想していて、体は七〇五の部屋へと勝手に辿り着いていたみたいだった。タスクを終えたことで体は停止し、君の回想が終わったことでようやく思考が体に合流した。

 僕は手探りで壁の突起にカードキーを挿し、部屋の明かりを点けることに成功した。部屋は思っていたよりも広く見えた。恐らく、キッチンと洗濯機がある分そう思わせているのだろう。

 壁に寄せられたベッドに体を落とす。仰向けになってスマホを見ると、もう時刻は八時を回っていた。夕食はどうしようか。あそこのハンバーガー屋は十時頃まで空いているだろうか。なんとなく夕食にハンバーガーは気が乗らないけど、非日常的なのもそれはそれでいいか。

 僕は上半身だけ起こして、目線の先にあるガスコンロを見た。

 あそこのスーパー、確か九時までだったよな。

 僕は財布とスマホだけ持って部屋を出た。こんな非日常に、いつもと変わらない自炊をしようと思ったことに、特別な理由は無い。ただなんとなくそうしたいと思っただけだ。もしかしたら明日には気が変わってしまうかもしれないから、とりあえず今日の分の食材だけ買おう。

 エレベーターを降りて、ロビーを出ると、背後から「いってらっしゃいませ」という声が聞こえた。


 ホテルを出て、駅の方へと歩く。この時間になるとすれ違う人は殆ど無く、唯一、僕と同じホテルに泊まっているであろう男性が一人、ビニール袋に詰めた大量のカップ麺を持ってホテルの方へと歩いていた。確かに、カップ麺も悪くはないか。

 ハンバーガーショップを右手に過ぎて少ししたところで、目的のスーパーが見えた。入り口に積み上げられている手提げのカゴを取って中へと入ると、この街の夜に不釣り合いな程の光量が店内を照らしていた。

 まだ何を作るかも決まってないままに来てしまったので、入り口から適当に見て回る。真っ直ぐ進んで突き当たったところにある精肉コーナーは、閉店間際ということもあって、半額シールの貼られたプラスチックトレイが数個余っているだけだった。

 キッチンがあると言っても、「ある」だけで調味料の類は何も無い。油なんかは買っても使いきれないだろうし、米を炊く炊飯器も無い。一週間くらい泊まるとなればまだ考えものだったのだろうけれど、たった三泊となると買おうと思えるものも限られてくる。考えれば考えるほどに、すれ違った男の袋の中身が合理的に思えてきて仕方がない。

 あまり乗り気ではないものの、乾麺コーナーへと足を運んだ。流石にスーパーというだけあって、商品棚にはコンビニでは見ないようなものも並んでいた。僕はその中からコンビニでも、というかカップ麺が置いてあるところならどこでも見られるであろう、円柱型の容器に赤い英文字が書いてあるカップ麺を一つカゴに入れた。明日は、どこか店に入ろう。


 そうだ、明日のバスの時刻を調べなければ。僕は乾麺コーナーのすぐ隣の列にある飲料水の棚から、一リットルの水をカゴに入れて、スマホでバスの時刻を調べ始めた。


 僕は明日、君の実家へ行く。君が居なくなってから、行こうとしては止めてを繰り返していたその場所に行く。今思えば、随分と時間が掛かり過ぎてしまったとは思うけれど、それでも、そのことに関しては今日までの自分を責め立てる気にはなれなかった。

 ターミナルから出ているバスは、朝の八時が始発で、そこから一時間置きに夕方の六時まで出ていた。

 仮に今君が実家に住んでいたとしても、出かけてしまっていては意味が無いので、なるべく早く行った方がいいだろう。始発のバスに乗って、その後のことはそれから考えよう。

 僕は君の実家から出ている帰りのバスの時間を調べながら、レジへと向かった。

 こっちは六時半が最終か。意外と遅くまであるんだな。多分、駅から六時に出発したものの折り返しだろう。スマホに表示されている時刻表を眺めながら、レジに水とカップ麺の入っているカゴを置いた。バーコードを読み取る音が二回鳴った。





 「お箸はお付けいたしますか?」



 


 僕は、その声を知っている。


 誰よりも聞いた声。いつも隣にあった声。大好きだった声。

 一年なんかじゃ、どうしたって忘れられる筈がない声。

 ゆっくりと目線を上げると、そこに、ずっと会いたかった君が居た。


 「さ、つき、」

 上手く声が出ない。この一年、散々考えていた、もし君に会えたなら何を話そうか、なんてものは君の声を聞いただけで全て忘れた。

 君は、知らない。僕がどれだけその声を聞きたかったのか。君は知らない。僕が、毎日何を願っていたのか。

 そして、僕も知らない。この一年、君が何をしていたのか。君がどんな思いで、家を出ていったのか。どんな思いで、鍵を捨てたのか。なんで、戻ってこなかったのか。

 僕は、君が知らない全てを伝えなければならない。僕が知らない全てを訊かなければならない。

 もう、君を前にしてそんなことは思えるはずもなかったけれど、僕はもう一度自分に言い聞かせた。君がどう思うかは関係ない。僕は、僕のためにここにいる、と。


 僕に名前を呼ばれた君は、少し不思議そうな顔をしていた。もう一度言葉を発しようとしたその時、僕の全ての想定を覆す言葉が聞こえた。その言葉は、決してその声に乗せられて発することが許されるはずのないものだった。


 「あの、すみません、どちらさまでしょうか・・・」


 —喜んでほしい。遅いよって言って怒ってくれても良い。呆れられても良い。とにかく、君が、僕が迎えに来ることを少しでも期待していてくれたのなら—


 彼女は、僕のことを忘れていた。


 「咲月、僕だよ、奏でだ。覚えて、ないのか?」

 「奏、さん。申し訳ないのですが、苗字は、」

 「荻原だ!君と同じ荻原だ!」

 僕は僕自身を抑えきれずに声を荒らげてしまった。少し怯んだ君の目が痛い。

 「忘れるなんてありえないだろ!僕が、僕たちが何年一緒に居たと思ってるんだ!どれだけの時間を、どれだけの季節を僕と過ごしてきたか忘れたというのか!?」

 背後にあるバックヤードから、男女二人の店員が走ってきている。

 君は、一体何が起きているのか分からないといった表情をしている。その顔が、さらに僕の心を狂わせていく。

 「もう一年だ!君が居なくなってから、君が何も言わずに家を出ていってから一年だ!確かに、その間、会いにいくこともしなかったのは悪かったと思ってる。でも、それでも、君にとって、僕との時間は、たったの一年で忘れてしまうようなものだったのか?僕は何一つ忘れてなんかない!声も、肩に掛かるその髪も、顔も、思い出も、君の居た春も、夏も、秋も、冬も、何一つも忘れてなんかない!」

 「お客様、どうされましたか?」

 走ってきた男の店員には見向きもせずに続けた。

 「僕はずっと知りたかった。君が居なくなった理由を。帰って来ない理由を。そして、伝えたかった。僕が、君が居なくなってからの日々をどう過ごしていたのかを。ずっと会いたかったということを。今でも、君のことが大好きだということを。


 そうか、君は、無かったことにしたいのか。君に何があったのかは知らない。それでも、君が僕との時間を無かったことにしたいということは分かった。忘れたいんだろ。そうしたいんだろ。」

 元彼に詰められたことがよほど怖かったのだろう。彼女は棒立ちのまま涙を流していた。それを見た僕は、全てがどうでもよくなってしまった。心に大きな空白が出来たように感じた。

 僕は、虚な目のまま、横に居る男の店員に謝罪の言葉を述べた。その時初めて、僕はその店員に腕を掴まれていることに気が付いた。

 せめて水とカップ麺のお金は払わなければと、ほんの少しだけ残っている思考力に身を委ねるまま、ズボンのポケットから財布を取り出した。

 財布と一緒に何かが落ちたので、見ると、それは二本の鍵だった。僕は、その内の一本を拾い上げ、震える指先で咲月に渡そうとする。再度店員が腕を掴み、それを阻んだ。

 その時、彼女が僕の方に両手を差し出した。腕を掴まれる力が弱くなり、僕は、丁度お椀のようになっている彼女の手に鍵を置いた。

 「僕は、君が言っていた運命をずっと信じていた。君が居なくなってからも、そのおまじないをずっと心に飼っていた。ある日家に帰ったら、いつもと変わらない顔でおかえりって言う君が居るんじゃないかって、そんな期待を毎日のようにしていた。僕は、君のことが大好きだよ。」

 彼女は両手を差し出したまま、涙を流している。

 これは、彼女なりの決別の合図なのだろうか。哀れみなのだろうか。ここで受け取っておかなければ、面倒臭いことになるだろうと思った、彼女なりの防衛策なのだろうか。何れにせよ、僕は何一つとして嬉しくなどなかった。

 彼女は、同僚の心配を断り、僕の会計を最後まで担当した。


 ビニール袋を持って外に出る。窓越しに彼女を見ると、後から来た客のレジを打っていた。その顔は辛うじて笑顔を保っていたが、目の周りは誰が見ても分かるほどに赤くなっていた。

 僕は、その顔を見てどうしようもない悲しみに襲われた。

 彼女が、僕を忘れようとしていること。僕との時間を無かったことにしようとしていること。結局、僕だけだったということ。

 ついに僕は、彼女が出ていった理由を知ることは出来なくなった。もう、今となっては知りたくもないとさえ思える。僕との時間を忘れようとしているところを見るに、他に好きな人でも出来たのだろう。もしかしたら、もう既に一緒に過ごしている誰かがいるかもしれない。

 僕が、君を、君との時間をあまりにも特別に思い過ぎていただけだったのだろうか。心のどこかで、この生活は、この時間は、他の同じ関係を持つ人々よりも特別なものだと思っていた。浮気だとか、別れるだとか、そんな世俗的なものとは無縁の関係を築いていると思っていた。でもきっとそれは他の人たちも同じで、誰もが「自分たちは違う」と思っているけれど、本当はそれも含めて平凡そのもので、そして、僕たちもその一部に過ぎなかったというだけのことなんだろう。

 心の中が煩い。頭では分かっていても、心はずっと暴れている。

「君が僕との思い出を捨てた」

 その事実を今でも受け入れることができない。きっと、何年経っても同じだろう。いや、どうせ僕も平凡な人間だ。君が帰って来ないと知ったのなら、案外直ぐにでも忘れてしまうかもしれない。




 ・・・そんなのは許せない!!!

 君が僕の思い出を捨てたというのなら、僕は君の思い出と共に死んだって構わない!君の中で僕が死んだのなら、僕は僕の中で僕を殺したっていい!君の居ない人生は虚しいが、君の帰って来ない人生には意味が無い!

 君の思い出と共に、僕も居なくなりたい。君の思い出を抱えたまま、死んでしまいたい。

 どうして、どうして、どうして、

 なんで君が居ないんだろう。これからの僕の人生に、どうして君が居ないんだろう。


 あぁ、彼女は、彼女の人生を歩んでしまうんだな。

 それが、どうしようもなく苦しい。当たり前のことなのに、苦しくてしょうがない。


 やけに重く感じるビニール袋を持ってホテルへと歩を進める。どうせ死ねない僕は、これから先どうやって生きていこうか。抜け殻に命は宿るんだろうか。

 寒空の下を歩き続けている間も、心は暴れ続けていた。油断すると、その衝動は体から溢れそうになって、偶に背筋が震えた。


 部屋へ戻り、電気もつけずにそのままベッドへと寝そべった。コートとマフラーはその辺に放り投げた。カップ麺を食べる気力も無く、水だけは半分以上飲み干した。

 明日からのことを考えるのも億劫だ。実際のところ、何も変わってはいないのだけれど。

 昨日から見た今日だって、今日から見た明日だって、君が居ないということに何一つ変わりはない。でもそれでも、これから一生、君の居ない人生を生きることが決まったということが、明日からのことを考える意味を失わさせた。

 もう、何も考えたくない。

 目を閉じても、開けても、何も変わらない視界を眺めていると、次第に意識が失われていった。君が居ない明日へ向けて、眠りに就く。現実と夢の境目、夢へと落ちる微睡の中で、もう起きなくてもいいやと、そうぼんやり呟いた。


 夢を見た。さっき見たそれとはまた違う、僕が前世の記憶と呼んでいる夢を見た。

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忘れるとか、忘れないとか、そういうのじゃなくてさ 藍空と月 @aizoratotsuki

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