第10章 おりぇ、ベースのお仕事をしちゃったよ!

第160話 フィーリス殿下3rd

「待っていたんだぞぅー! お帰りなのだぞぉー!!」


 これは、エルヒューレ皇国第2皇子であるフィーリス皇子殿下だ。

 そして、やはりハルはフィーリス殿下に抱き上げられクルクルと回されることになる。


「とおっ!」


 また、フィーリス殿下にパンチしたハル。これで3度目だ。


「痛いんだぞぉー! ハル! 今のは態とだなー!」

「アハハハ! ふぃーれんか、たらいま!」

「おう! 無事に帰ってきて良かったぞぅ! ハル、待っていたんだ! ……て!! と、虎とはびっくりするんだぞぅ!!」

「ふぃーれんか、しゅしゅら。虎の聖獣なんら。仲間になったんらじょ」

「おぉー!!」

「なあに? あなただあれ?」

「僕は第2皇子でフィーリスなんだぞ。シュシュ、カッコいいんだぞぅ!」

「あら、よく分かっているじゃない」


 一行は、ハルとアヴィー先生が目覚めてから2日程ゆっくりしてエルヒューレ皇国に帰って来ていた。その間にも長老は山中の遺跡に行きやすいよう、転移の魔法陣を設置したり魔道具を譲渡したりと忙しなく動いていた。


 帰りはヘーネの大森林の北西にあるベースまで一旦戻り、そこからユニコーンに乗り換えてリヒトの実家まで帰ってきた。

 そして、皇帝に報告と挨拶をする為に城までやって来ていたんだ。そうそう、シュシュは長老作の首輪を着けている。エルヒューレ皇国に入国する為のパス代わりの魔道具だ。コハルが着けているものとお揃いの真っ赤な首輪だ。シュテラリール家の紋章もついている。

 そして、入国する前からシュシュがうるさかった。

 

「なんなの!? エルフってホント反則だわ!」

「シュシュ、なんだよ?」

「だってイオス。ユニコーンよ、ユニコーン! 伝説の生き物じゃない! なんでこんな何頭もいるのよ!」

「アハハハ!」

「だからイオス、笑いごとじゃないわ!」

「な? みんな思うことは一緒なんや。自分も同じこと思ったもん」

「ほんと、ふざけるんじゃないわよ」

「いや、誰もふざけてねーし」

「やる事なす事規格外すぎるのよ!」


 ギャーギャー騒ぎながら、リヒトとハルの乗るユニコーンに並走している。

 シュシュも随分体形が良くなった。あばら骨が分かる程痩せていたのに、今は程よい筋肉が付いている。四肢を動かす度に動く柔軟な筋肉。堂々とした体躯に細かな毛並みが美しい。


「ハル! 行くのだぞぅ!」


 またフィーリス殿下に奪取されてしまうハル。


「ふぃーれんか! しゅげーな!」

「ワハハハ! そうだろう! そうだろう!」

 

 なんと、フィーリス殿下も魔法杖に乗って飛んでいる。


「ハルがいない間に練習したんだぞぅ!」

「しゅげー!」


 フィーリス殿下はアクロバットの様に空中で1回転をしたりしている。


「こら! フィーリス! またか!!」


 レオーギル第1皇子殿下が騒ぎを聞きつけてやってきた。ルシカもいる。


「下りなさい! ハルまで! 危ないから下りてきなさい!」

「ハル、兄上がガチで怒っているんだぞぅ」

「ふぃーれんか、ありぇはヤバイじょ」

「下りるんだぞぅ」


 2人してフワリと下りてきた。


「フィー、何度言ったら分かるんだ! 危ないと言っているだろう! ハルもだ!」

「分かっているのだぞぅ」

「あい、ごめんしゃい」

「……ッ!?」


 おや? レオーギル殿下がシュシュを見てフリーズしているぞ?


「殿下、どうしました?」

「ルシカ……こ、こ、この……白いカッコいい虎はどうした!?」

「聖獣でシュシュと言います。仲間になりました」

「シ、シ、シュシュ……」

「あら、なあにぃ? やだ、超イケメンじゃない!」

「ルシカ……雌なのか?」

「いえ、雄です」

「お、雄!?」

「なあにぃ? 雄じゃあ駄目なの? 今時、雄とか雌とかに拘ってんじゃないわよ。あたしはあ・た・し! シュシュよ!」

「おお! カッコいい!」

「あら、あなた話が分かるじゃない! 名前は何て言うの?」

「私は第1皇子のレオーギルと言う。シュシュ、めちゃくちゃカッコいいな!」

「やだぁ! ありがとう! やっぱあたしの魅力は分かる人には分かるのね!」

「シュシュ、触っても良いか?」

「いいわよぉ。特別に触らせてあげるわ」

「おお! ありがとう!」


 レオーギル殿下、フィーリス殿下を放ったままだが良いのか?


「気持ちが通じ合うってこの事を言うのね。もう、マブダチよ。マブダチ」


 と、シュシュが言う位には仲良くなっていた。そしてこの後、皇帝陛下にも……


「今度は虎か! 白虎か! 猫の次は虎なのか! ワハハハ!」


 と、大いにウケた。

 リヒトの実家でも、シュシュは目立ちまくり驚かれたのだが……


「超カッコいい!」


 と、皆が誉めたものだからシュシュは調子に乗っている。


「あたしの魅力が爆発してるわ! モテ期だわ!」


 だ、そうだ……そしてアッと言う間に馴染んだ。


   ◇ ◇ ◇


 ここはヘーネの大森林。大陸の中央にあり、魔物が我が物顔で闊歩する大森林だ。

 そこで、大きな声が響き渡る。


「おら! 抜けられてんぞ! カエデ! 何してんだ!」

「イオス兄さん! 分かってるし!」

「リヒト様!」

「おう! ルシカ!」

「ちゅどーーん!!」

「終わりなのれす!」


 ――ゴゴゴドゴーーン!!


 大森林に地響きがし地面が揺れる。


「まあまあじゃねーか?」

「いや、リヒト様。イマイチッしょ!?」

「カエデは詰めが甘いですね」

「えぇー! 頑張ったやん!」

「けろ、おりぇが仕留めた」

「そうなのれす!」


 お馴染み、リヒト様ご一行です。

 何をしているかと言うと、ヘーネの大森林で大型の魔物を狩っていた。カエデの訓練の一環の様だ。

 

 一行は、リヒトが管理するベースまで帰って来ていた。

 変わった事と言えば、イオスがシュテラリール家の執事見習いだったのにハル付きの従者になった事だ。ルシカと立場が一緒になる。

 ずっと、リヒトとハルに付いて旅をしていたから一層の事ハル付きにしようと言う軽い考えらしい。ハルがもう少し大きくなって本格的な従者を付けるまでの期間限定の従者だ。カエデの師匠らしき役割もしていたから丁度良いそうだ。

 で、一行はカエデの訓練を兼ねて大森林へ魔物討伐に来ていた訳だ。


「もう、みんな脳筋なんだから」

「ね、嫌よねぇ。ミーレ」

「何言ってんの? シュシュもじゃない」

「違うわよ。あたしは知識と知性に富んでいるんだから」


 相変わらず、意味が分からない。

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