第140話 白龍王の里の遺跡

 翌日、最後になったが白龍王の里での遺跡の調査だ。西方を守る白龍王。里もドラゴシオン王国の西側にある。

 今は竜王の地位に付いているので普段は城にいる。


「やっぱデケー」

「ほんまやな、もう慣れたけどな」

「そうね、さすがに5つ目だものね」


 ハルとカエデとシュシュのおとぼけチームだ。最後の遺跡になるとさすがのおとぼけチームでもちょっと冷めている。


「うちで最後だな」


 白龍王バイロンだ。やはりこの白龍王も立ち会うつもりなのか?


「バイロン様、私が立ち会いますので城でお待ち下されば……」

「いや、ナング。私も立ち会う」


 やはり立ち会うつもりだ。龍王達はみな気になるらしい。


「ハル、カエデ、シュシュ行くぞ」

「ん、りひと」


 そんな事も気にせず、やはりリヒトは引率の先生だ。淡々と遺跡の中へ入って行く。

 またこの遺跡も同じ様な造りになっていた。途中から通路が二股に分かれている。

 長老とハルとリヒトが見ている。

 片方の通路へ入って行く。暫く行くと向こう側へ抜けている。今回、魔物はいないらしい。


「じーちゃん、ここはらいじょぶらな」

「ハル、そうだな。しかしだ……」

「ん?」

「ここは北側に遮るものがないんだ。だから寒さも厳しい」

「バイロン様、そうなのですか?」

「じーちゃん結界張っとく?」

「そうだな」

「長老、ハルどうした?」

「バイロン様、ここは冬になるとどうなりますか?」

「長老、さっきも言ったがここは北側に遮るものがない。だから、冬になると雪が吹き込んで入れなくなるんだ」

「それは、遺跡の保存には良くありませんな。奥の方は結界を張っておきましょう」

「それは助かる。北からの風が強くてな。この通路からも冷たい風が吹き抜けるんだ」

「ん……しょうなのか?」

「ハル、どうした?」

「じーちゃん、精霊達も結界を張ってくりぇたりゃ嬉しいて言ってりゅ」

「そうか?」

「ここと、北の黒龍王の里にある遺跡を管理しゅりゅのが大変なんらって。凍り付くかりゃらって」

「なるほど。今までは精霊達が頑張って守ってくれていたんだな」

「ん」

「よし、頑丈なのを張っておこう」


 長老が片手を上げると、透明な結界が張られた。


「何度みても長老の魔法は凄いな」


 白龍王が感心して見ている。


「じーちゃんはしゅごい」

「ああ、ハル。お前の曽祖父は凄い人だ」

「おりぇもじーちゃんみたいになりたいんら」

「そうか。頑張らないとな」

「ん、頑張りゅじょ」

「アハハハ、ハルは良い子だ」


 さて、これからが遺跡調査の本番だ。一行は少し戻ってもう一方の通路へ入って行く。他の遺跡と同じ様に、こちらの通路は行き止まりになっている。


「ハル、分かるか?」

「じーちゃん……ここらな」


 ハルが小さな手で壁をペチペチと触る。


「よし、リヒト」

「ああ、長老」


 2人がまた足元にある飾りのついたプレートに乗ると、何もない壁がゴゴゴゴと音を立てて両側に開いた。


「こんな風になっているのか……これは気付かないな」

「バイロン様、入りましょう」

「ああ、長老」


 部屋に入ると同じ壁画があり、奥には魔石のある祭壇があった。


「ありゃりゃ、真っ黒黒ら」

「ハル、ヤバかったな」

「ん、じーちゃん」

「リヒト、コハル良いか?」

「はいなのれす」

「ああ、長老。いいぞ」

「ぴゅりふぃけーしょん」

「ピュリフィケーション」


 長老に、ハル、リヒト、コハルとで手を翳し浄化する。すると、目も眩む様な白い光が漆黒の魔石を包み込み消えていった。

 光が消えるとそこには、透明に輝くクリスタルが現れた。もう5回同じことをしている。さすがに慣れている。誰も驚いたりしない。感動が薄れているね。


「長老、部屋の壁画はどこも同じでしたよね?」

「ルシカ、どうした?」

「この壁画をよく見て下さい。精霊が描かれています」

「そうなのか?」

「はい、長老。ほら、この上の方に……」

「ルシカが指す場所を見ると、確かに小さな精霊が描かれている。原初のエルフとドラゴンを見守る様に精霊達がいる」

「え……しょうなのか?」

「ハル、精霊は何と言っている?」

「ドラゴンらけれなく、原初のエルフも精霊達と話しぇたんらって。しょりぇれみんなれ協力してたって」

「そうなのか!?」

「れも……ん……じーちゃんこっちら」


 ハルが指指す場所には原初のエルフが膝を突きながら瘴気の靄を浄化している場面が……


「原初のエルフが浄化に力を使いしゅぎたんら……しょりぇれ魔石を作って吸わせる事を考えた……精霊が教えてあげたんら」

「なるほど……もしかして、浄化で無理に力を使った影響で精霊の声が聞けなくなったのか?」

「じーちゃん、しゅごい。しょうらって。原初のエルフが無理をしたんら。ドラゴンはしょんなエルフを放っておけなかった。らから協力したんら」

「原初のエルフは長い年月を掛けて浄化したなのれす。だから、神は感謝しているなのれす」


 そうか、エルフの遺跡でもコハルはそう言っていたな。


「この世界が平和なのはエルフ族のお陰と言う事か……」

「ドラゴンも協力してるなのれす。それは凄い事なのれす」

「そうか……コハル、我々も少しは役に立ったのだな」

「もちろんなのれす。大きな魔石を設置できたのも、ドラゴンの協力があったからなのれす」


 これはまた、世界の始まりに関する大事な事が明らかになった。

 部屋に普通に描かれている壁画でも新しい発見があった。では、ハイヒューマンの方の壁画はどうだろう?


「ん……ろっちら? こっち?」

「ハル、どこだ?」

「じーちゃん、ここら」


 ハルが壁に手をやる。すると、また蜃気楼の様に揺れながら壁画が現れた。


「なんだ? 大きいな?」


 リヒトが言う様に、今までの壁画より見るからに広範囲に壁画が描かれていた。


「魔石を設置してからハイヒューマン達に起こった事なのか?」

「りひと、しょうみたいら……」

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