第139話 青龍王の里で

「ほう、皆強いな」


 青龍王が呑気に皆が戦っているのを少し離れて見ている。


「ランロン様、見ていて良いのですか?」

「ん? 平気だろう。もう終わるぞ」

「おや、本当ですね。リヒト様は最強の5戦士の1人でしたか」

「ああ。リヒトも強いが他の皆も強い。あれでは、ヒューマン族が束になってかかっても歯が立たないだろうな」

「あのヘーネの大森林の守護者ですから」

「そうだな」


 そうこうしているうちに、終わったらしい。


「ふぅ、おっけーぐりゅぐりゅ。じーちゃん!」

「ハル、どうした?」

「この剣、しゅげーな!!」

「ハル、今更かよ!」

「らってりひと。わしゅれてたんら」

「失礼なやつだなぁ」

「れもりひと、しゅげーじょ! さしゅが親方の作った剣ら!」

「な、ハルちゃん。剣使いやすいやろ?」

「かえれ、使いやしゅいなんてもんじゃねー」

「アハハハ! ハル、それは良かった」

「ん、じーちゃん。ありがちょな」

「ワシか?」

「ん、らってじーちゃんが買ってくりぇた」

「アハハハ、そうだったな」


 ハルさん、剣も気に入ったらしい。良かった良かった。このまま忘れられたりすると、ドワーフの親方に大変申し訳ない。

 さて、長老が結界を張りもう一方の通路に入って行く。こっちがメインだ。最奥が行き止まりになっている。やはり扉が何もない。


「じーちゃん、りひと。ここら」

「よし、長老」

「ああ」


 長老とリヒトがタイミングを合わせて、そこだけ飾りの付いているプレートに乗ると、何もない筈の壁がゴゴゴゴと大きな音をたてて両側に分かれて開いた。

 中はやはり広間になっている。壁には壁画、最奥には巨大な魔石が設置されている。


「ありゃ、ここが1番黒いな」

「魔物が出やすいからかも知れんな」

「長老、ハル、コハル浄化するぞ」

「ん、りひと」

「はいなのれす」

「ぴゅりふぃけーしょん」

「ピュリフィケーション」


 長老、ハル、リヒト、コハルとで手を翳し浄化する。すると、目も眩む様な白い光が漆黒の巨大な魔石を包み込み消えていった。光が消えるとそこには、透明に輝くクリスタルが現れた。


「ん、みっちょんこんぴゅりーちょ」


 もう少し大きくならないと、ちゃんと言えないかもね。


「ハル、どこだ?」

「んっちょ……じーちゃんここら」

 

 ハルが何もない壁を触った。すると、まるで蜃気楼の様にユラユラと壁画が現れ出した。

 壁画には、巨大なクリスタルをドラゴンが持ち上げ、エルフ族とハイヒューマンが協力して魔法陣や魔法言語で設置している場面が描かれていた。


「設置している場面だな」

「じーちゃん、しょうらな」

「次で最後か。最後の壁画はどんな内容なんだろうな。もう設置していたな」

「長老、他の遺跡も同じ様な感じなのか?」

「ランロン様、そうですね。作りも同じですし、壁画の内容が違う程度ですよ」


 最初は原初のエルフ族が瘴気の靄の浄化に乗り出した。そこにドラゴンが参加し、ハイヒューマンも参加した。今回の、青龍王の里の遺跡には瘴気の靄を吸い込む巨大なクリスタルを設置している場面が描かれていた。

 次は一体何だ? クリスタルを設置して終わりではないのか?


「このハイヒューマンが参加している壁画だけ隠しておく意味があるのだろうか?」


 青龍王ランロンの疑問は最もだ。ハルがいないと気付けなかった。誰も気付く事ができなかっただろう。


「壁画が描かれた時には、まさかハイヒューマンが同じヒューマン族に絶滅させられるとは思わなかっただろうに」

「ランロン様、取り敢えず戻りませんか? 皆様にも昼食をご用意しております」

「そうだったな。昼飯にしよう」

「おー」

「ハル、食いついたな」

「ん、りひと。飯は大事」

「アハハハ! ハル、沢山食べるといい」

「あい、ありがちょ」



「んまい!」

「ハル、美味いか? 気に入ってくれて良かった」


 青龍王の邸で昼食を食べている一行。保護したドラゴンの幼体や他の兄弟達も一緒だ。


「みんな仲良くしてりゅか?」

「キュルル」

「しょっか。いい子ら」

「キュルー」

「ハハ、食べたりゃお昼寝らじょ。遊ぶのはしょれかりゃら」

「キュルル」

「ん、一緒にな」


 ハルと幼体達が話している。


「不思議だ。ハルには何故分かるのだろう? 兄弟皆と話している」

「仲良しなんら」

「ああ。赤子達とか?」

「ん、みんなと仲良しら。可愛いんら」

「そうか。仲良くしてくれてありがとうな」

「気にしゅんな」

「アハハハ、そうか」

「龍王様達はみんないいやちゅら」

「私達か?」

「ん」

「そうか、ありがとう」


 ハルさん、青龍王に対してその言葉使いはどうだ? とは思うが、青龍王自身が気にしていない様なので良しとするか……?


「長老、明日は最後の白龍王の里の遺跡だな」

「はい、ランロン様。戻りましたらご報告致しますよ」

「あのハイヒューマンの壁画がどうなっているのか気になるな」

「今日見た遺跡の壁画では、もうあのクリスタルを設置しておる場面でしたな」


 設置した後に何かまだあるのだろうか?

 とにかく、明日白龍王の里の遺跡を調査すれば分かる。


「ハル、もう眠いでしょ?」

「ん、みーりぇ」

「ハルちゃん、あたしも一緒にお昼寝するわ」

「しゅしゅ、みんなもお昼寝ら」

「キュルル」


 シュシュにくっついて、ハルとドラゴンの幼体達がお昼寝をしている。


「シュシュがお母さんみたいやな」

「カエデも一緒に寝たら?」

「ミーレ姉さん、それは無茶ぶりやで」

「あら、どうして?」

「猫に虎と一緒に寝ろなんて、自殺行為やで」

「あら、シュシュは聖獣なんだから平気なんでしょう?」

「本人はそう言ってるけどな、これはもう本能なんや。無理やって」

「カエデ、それはそうとお母さんみたい、て言うけど、シュシュは雄でしょ?」

「あ、そうやったわ……」


 あのキャラのせいで忘れがちだが、シュシュは歴とした雄の虎だ。

 お昼寝の後は、また皆でおやつを食べて、ドラゴンの幼体達と沢山遊んで城に戻ってきたハル。


「可愛かったなぁ」

「なんだ、ハル?」

「りひと、ドラゴンの幼体達ら」

「ああ、ハルにめちゃ懐いているな」

「めちゃ可愛いんら」

「ハルもまだちびっ子なのに、先生みたいになってますね」

「アハハハ。ルシカ、そうだよな。ハルも可愛いぞ」

「りひと、しょんな話してねー」


 あらら、そっけないハルさんでした。


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