第114話 剣ができた!
「先ずは、兄さん達の剣だ。剣自体のメンテナンスもだが、グリップを調整したのと魔力を流しやすくなっている筈だ。確かめてくれ」
「ああ」
「お……リヒト様、もう持つだけで違いますね?」
「イオス、本当だ……親方スゲーな!」
「まだ驚くのは早いぜ。魔力を流してみてくれ」
親方に言われた通り、リヒトとルシカ、イオスの3人は剣に魔力を流す。
一瞬で、剣身が緑に変わる。しかも、剣身が伸びている。
「うわ……なんだこれ……」
「リヒト様、こんなに変わるのですね」
「スゲー! リヒト様、ルシカ、使う魔力量もいつもの半分も使ってねーのに、もう変化してますよ!」
「どうだ? いい感じだろう!? 兄さん達の剣は、魔鉱石を丁寧に精錬した魔鉱で作られた良い剣だ。魔鉱を使う事で、魔力を付与しやすくなっている。正直、エルフ族がここまで出来るとは思わなかったぜ。だがな、魔力を通すなら表面にミスリルの粉を焼き付けて叩いてやるんだ。それだけで魔力の伝わり方が全然違うんだ」
「親方! スゲーよ!」
「はい、本当に」
「親方! ありがとう!」
「ガハハハ! ワシの手にかかればこれくれー朝飯前よ! ガハハハ!」
親方……自慢気に胸を張っている。
「次は、カエデだ」
「はいにゃ」
「持ってみな」
親方が短剣と言うよりは、スモールソードで剣身の長さが半分位にしてある細めの剣を2本カエデに手渡す。ポンメルには親方の工房のマークが入っていて、ガードは小さめ。グリップは向日葵色とエメラルドグリーンの革で巻いてある。
「何なんこれ! 凄い手に馴染むにゃん! 扱いやすいにゃん! 凄いにゃん!」
「どうだ?」
「親方! めちゃいいわ! ありがとう!」
「おう! 兄さん達の剣と同じ様に、魔力も流せるようにしてあるからな! グリップの革はカエデのイヤーカフに付いてる魔石と同じ色にしといた。しっかり勉強してその剣を完璧に使い熟せるようになるんだぞ!」
「うん! 頑張る!」
「ガハハハ! ヨシヨシ! いい子だ! 最後はハルだ」
「ん」
「ハルにはこれだ」
親方が2本の短剣を出した。カエデの剣と同じ様に、ポンメルに親方の工房のマークが入っていて、ガードも小さい。グリップはハルの髪色からゴールドと若葉色の革を巻いてある。短剣よりは一回り細身の剣身になっている。
「お……」
「どうだ?」
「ん、振りやしゅい……ここが小しゃいから手も痛くないんら」
「ガードだな。普通の大きさだと、まだ手の小さいちびっ子達には邪魔になるんだ。当たって痛くなる。だから手の大きさに合わせて小さくしてある。で、軽いだろう?」
「ん、軽い」
「だからな、この剣で刺して止めをさすのには向かないかも知れんぞ。ハルの全体重をかけて重さを加えてやらんとな。だが、その反面素早く扱える筈だ。で、同じ様に魔力を付与しやすくしてある」
「ん……ありがちょ。大事にしゅりゅ」
「おうよ! 大きくなったら必ず持ってくるんだぞ!」
「ん、頼んらじょ」
「おう! 任せときな! カエデとハルにはソードベルトも作っといた」
「おぉー!」
「かっけー!」
「お前達はまだちびっ子だからな。柔らかい革で細目にしたんだ。これも成長にあわせて作り直すからな! 剣と一緒に持って来い!」
「親方! ありがと!」
「ありがちょ!」
「ガハハハ! いいって事よ!」
「親方、全部の代金はこれで足りるか?」
長老は現金が入っているだろう袋をドサッと出す。
「いやいや! 長老! 何言ってんだ! 金なんて貰えねーよ!」
「いや、親方。この分は別だ。個人で頼んだ物だからな。受け取ってくれ」
「いや、しかしだなぁ!」
「親方、またハルとカエデが世話になる。受け取ってもらわんと次が頼みにくくなるだろうが」
「そうか? しかしなぁ、迷惑かけたのになぁ」
「国の件とは関係ないだろう。これはワシら個人の注文だ」
「じゃあまあ……長老、申し訳ないな! 有り難く貰っとくよ!」
「ああ、そうしてくれ。また頼むな」
「おう! いつでも来てくれ! 大歓迎だ! ガハハハ!」
皆の剣も揃い、一行はやっと次の目的地であるドラゴシオン王国へ向かう。
「長老、リヒト様、ありがとうございました。お気をつけて行ってらして下さい」
「ああ、ロマーティ。世話になったな。後の事は頼んだぞ。技術提供の協定も早急に進めてくれ」
「はい、もちろんです」
一行はドラゴシオン王国へ向かって出発した。ツヴェルカーン王国からまだ北にある高山地帯へと向かう。
また何日もかけての旅路になる。しかも今度は途中から気温が下がり肌寒くなる。季節によっては高山地帯の手前から寒くて雪になる事もある。
リヒト達一行は、あと数日で高山地帯に入るだろう距離まで来た。火を囲んで昼食を取ってハルのお昼寝待ちだ。ハルは馬車の中に、マットとクッションを敷き詰めてもらってお昼寝中だ。
「カエデ、狩りに行くか?」
「リヒト様、行く行く!」
「まあ、大した魔物は出てきませんからね」
「ルシカ兄さん、なんや。そうなん?」
「はい。魔物が多いのはやはり大森林ですよ。強さもピンキリですしね」
「そっか。討伐に出てみたいなぁ」
「まぁ、腕試しだ」
「はいな、リヒト様」
リヒトとルシカがカエデを連れて周辺の魔物を倒しに行った。
「ミーレ、ドラゴンの幼体は相変わらずか?」
「はい、長老。でも、解呪してから尻尾や羽がよく動くようになりましたよ。見ますか?」
ミーレがドラゴンの幼体を寝かせている籠を馬車から出してきた。
「ふむ……そろそろ目を覚ましても良いようなもんなんだがな」
「そうなんですか?」
「ああ。状態は良くなっているぞ」
ミーレが馬車の中に籠を戻す。
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