第110話 討伐完了

「うぉーたーかったー」


 ハルが水属性魔法で攻撃する。ルシカも魔法の矢を射る。


「うわ……きりぇねー」

「ハル、上じゃなくて下の方を狙ってみなさい」

「ん、うぉーたーかったー」


 ハルが水の刃を穿つ。威力も速度だって高い。それでも、傷をつけた程度だ。


「れけーな、じーちゃん」

「ああ、かなりデカイな」


 また、ワームがブルブルと身体を震わせる。


「ウォーターウォール」


 再度、長老が水の壁で毒の煙幕を阻止する。長老達の後ろでは、イオスやミーレとカエデがモグラ退治だ。


「カエデ、赤は手を出すな!」

「イオス兄さん! あそこに赤が!」

「おう!」

 

 イオスが一瞬で合間を詰め上位種である赤いモグラを斬り裂く。


「げ! 兄さん今の何なん!?」

「瞬間移動だ」

「ズルイわー! マジ、そんなんええにゃぁー!」

「アハハハ! カエデもこれ位なら訓練したら出来るぞ」

「マジ!? 訓練する! イオス兄さん、教えて!」

「先にまだ覚える事があんだよ」

「何喋ってんのよ! カエデ! 緑のモグラがそこから出てくるわよ!」

「えッ!?」


 カエデの直ぐ足元に、嘲笑うかの様に緑のモグラがヒョコッと顔を出して直ぐにまた地中に潜った。


「うぅッわッ! ムカつくー!」

「アハハハ! カエデ! 遊ばれてんぞ!」

「くっそー!」


 カエデが集中して、モグラの場所を探る。


「そこや!」


 ――ザンッ!


「おう、うまくなったな」

「もういないわね」

「ああ、ミーレ。後はあれか……」


 イオスとミーレとカエデが最奥に姿を現したワームを見る。


「結局、長老が毒の煙幕を防いでるんやんな?」

「そうだな。魔石はあるが、防ぐに越したことはないからな」

「そうなんや」

「カエデ、リヒト様を見ておきなさい。身体の使い方が違うわよ。勉強になるわ」

「うん、ミーレ姉さん」


 3人は余裕らしい。カエデも初めての討伐なのに、パニくる事なく怖がる事もなく余裕を持っている。


「カエデは大森林に出てもいいかもね」

「ミーレ、まだ基本も出来ていないんだぞ」

「でも、実戦に勝るものはないわ」

「そりゃそうだけど、カエデもまだちびっ子だからな」

「イオス兄さん! 自分はちびっ子ちゃうで!」

「何言ってんだ。まだまだちびっ子だよ」

「けど、強くなりたいやん」

「焦るんじゃねーよ。この旅の間での訓練の出来次第だな」

「うぉーたーらんしゅ」

 

 ハルが水の槍を穿つ。ワームの下腹に突き刺さった。


 ――ギャオォォー!!


 なんとも表現できない声を上げて悶えている。


「じーちゃん、ちょっと苦ししょうか?」

「みたいだな。ウォーターランス」


 今度は長老だ。同じ水の槍でもハルとは大きさや数が違う。


「うわッ! 何あれ! 長老、スゲーやん!」

「規模や威力が違うな」

「ね、凄いわね」


 イオスやミーレとカエデの3人は、既に高みの見物だ。


「リヒト! 腹を斬れ!」

「おう!」


 リヒトが瞬時にワームの下に入り込み、剣で横一閃に斬りつけた。

 すると、ワームは断末魔の叫びをあげながらズシーン! と、倒れた。


「おー! リヒト様カッケー!」

「アハハハ! エルフ族最強の5人の1人だからな!」

「終わりましたね」

「ルシカ、こいつ頼む」

「はい、リヒト様」


 ルシカがマジックバッグにワームを収納する。


「りひと、こりぇれ終わりか?」

「ハル、待てよ。長老に見てもらおう」


 長老の瞳がゴールドに光っている。


「リヒト、その奥の壁の向うに巣があるぞ」

「マジかよ。ウゼー」

「ハル、壁を掘れるか?」

「ん、じーちゃん。りひと、いいか?」

「おう! いいぞ!」


 リヒトが剣を、ルシカが弓を構える。


「カエデ、ミーレとここにいろ」

「え? うん、分かった」


 イオスがリヒトとルシカに並ぶ。

 

「いくじょ! ろっくばりぇっと!」


 ハルが最奥の壁に向かって岩の弾丸を穿った。壁が崩れると同時に巨大なワームが3頭姿を現した。最初に出てきたワームよりは小型だが、それでも3m〜4mはある。


 ルシカが魔法の矢を放ち、ワームをのけ反らせ腹を見せさせる。

 と、リヒトとイオスが瞬時に入り込み腹を斬り裂く。


「ウォーターカッター」


 長老が放つ特大の水の刃がワームの腹を切り裂きワームは崩れ落ちる。あと2頭。


「うぉーたーらんしゅ」


 ハルが放った水の槍で串刺しにしまた1頭。残るは1頭だ。

 ルシカが魔法の矢を放つ。苦しそうに頭を上げ腹を見せるワーム。続けてルシカが矢を射る。


「これで最後だ!」


 リヒトが素早くワームの腹下に入り込み、横一閃に斬り裂くと真っ二つにワームが切断された。


 ドーン! と地響きを鳴らしてワームが倒れる。


「うわ、リヒト様。真っ二つに斬ったで」

「カエデ、リヒト様の剣を見て。薄い緑に光っているでしょう?」

「え? ミーレ姉さん、剣か? あ……ホンマや」

「剣に風属性の魔力を纏わせているのよ。威力が段違いに上がるのよ」

「うわ、スゲー……」

「ルシカの矢は見た?」

「うん、緑色してた」

「あれはね、ウインドアローて言って風属性の魔力をそのまま矢の代わりに射るの。普通の矢とは威力が全然違うのよ」

「マジか……」

「エルフ族はね、種族として皆風属性魔法が得意なの。私の鞭も風属性の魔力を使っているわ。長老とハルは全属性を使うけどね」

「信じれん。こんなんヒューマンや獣人が敵う訳ないやん」

「でも、エルフ族は平和主義だからそれをひけらかしたりしないわ。況してや、他国を侵略したりもしない。エルフの強さは、大森林とその中央にある国を守る為のものよ」

「そっか……めちゃカッコいい」


 また長老の瞳がゴールドに光っている。


「ハル、あの奥の地面を焼いておこう」

「じーちゃん、まら何かいりゅのか?」

「幼体だ。まだ卵からかえったばかりだな」

「ん、ふれいむばーしゅと」


 まるで、火炎放射だ。長老が差した地面を高温の炎が燃え盛り焦がしていく。


「ふむ、よし。これで終わりだな」


 長老から討伐完了が出た。


「みっちょんこんぴゅりーちょ」


 相変わらずハルは言えてない。

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