第96話 古代エルフ族の遺跡

「広範囲に浄化が必要だな」

「リヒト様、どうします?」

「うちのベースに浄化できる奴は何人いた?」

「ハイリョースエルフは皆できますよ。7人でしたか?」

「そいつらにも浄化させよう」

「りひと、ユニコーンに乗って空かりゃ浄化しゅりゅ」

「空からか……なるほど。ルシカ、ハルを連れてユニコーンで先に出てくれ。俺も指示したら直ぐに出る」

「了解です。ハル、行きますよ」

「ん、りひと先に浄化始めりゅじょ」

「ああ。ハル、絶対にユニコーンから下りるなよ!」

「ん!」


 分かっているのか? ハルは何をするか分からないから不安だ。

 リヒトが、魔物を撃退しようと外に出てきているエルフ達に指示を出す。浄化ができるハイリョースエルフは結界の内側からと、ユニコーンで空からとに分かれて浄化だ。他の者は、結界の内側から魔物を討伐する。浄化が進めば魔物は大森林へ戻って行くはずだ。全ての指示を済ませてリヒトもユニコーンに乗ろうと走る。


「リヒト様!」

「おう! イオス」


 イオスがリヒトのユニコーンを連れて走って来た。


「ルシカから聞きました。カエデにはミーレが付いています。俺も攻撃に加わります!」

「ああ! イオス、頼んだ!」


 ユニコーンへヒラリと跨り、リヒトはルシカのユニコーンを追って飛ぶ。既に空からハルが浄化を初めている様だ。


「ルシカ! ハル!」

「リヒト様! 見て下さい! ドワーフが行った遺跡から魔物が出てきています!」

「りひと! 元を叩なきゃらめら!」

「おう! 浄化しながら遺跡に下りるぞ!」


 ユニコーンに乗って空から見ると一目瞭然だ。魔物はドワーフが魔鉱石を採取に行っていた遺跡から次から次へと出てきている。遺跡の中には魔物などいなかった筈なのに一体どこにこれだけの魔物がいたのか? その遺跡が黒い靄に包まれて異様な空気になっている。

 リヒトとハルの瞳がゴールドに光る。ユニコーンが遺跡の上空で旋回している。


「マジかよ……」

「じーちゃん呼んじゃう?」

「だな。規模が大き過ぎるな。ルシカのパーピを目印にしてもらうぞ。ルシカ、ハルから離れんな!」

「はい、もちろんです!」

「ハル、下りるが絶対にルシカから離れるな!」

「分かっちゃ!」


 ゆっくりと遺跡の中央へと下りて行くユニコーン。リヒトは2頭のユニコーンに結界を張る。ハルは下りる場所を目掛けて浄化している。下りると同時にリヒトが自分達周辺へ結界を貼り直した。


「りひと、どーしゅりゅ?」

「ハル、待て。もう直ぐ長老が来る」

「じーちゃん、転移れか?」

「ああ、そうだ。てか……この黒い靄、地面から出てないか?」


 リヒトがそう言った時だった。急に周りの黒い靄が晴れ、白い光が集まり出したかと思えばそこに堂々と長老が立っていた。


「じーちゃん!」

「おう! ハル! リヒトとルシカも無事か!?」

「長老、すんません!」

「いやいや、これは異常事態だからな。しかし何だ? この靄は」

「長老、地面から……そこ、そこです! そこから靄が出ています」


 リヒトが直ぐ近くの地面を指差す。そこは遺跡の中心辺りの場所だ。


「なんだ……? 穴でもあるのか? 靄で見えんな」


 長老がそう言いながら、靄が出てきている場所を狙って指で白い光をピンッと弾き飛ばした。地面に当たった白い光が弾けて黒い靄を消していく。


「じーちゃん、かっけー!」

「アハハハ! そうかそうか! じーちゃんはカッケーか!?」


 長老……曾孫に褒められて、喜んで笑っている場合ではない。ヒーロー枠はリヒトの筈なのに……


「長老、下に下りる階段があるぞ!」

「リヒト、地下か……行くしかないな。ルシカ、ハルをしっかり捕まえていてくれ」

「はい! 長老! ハル、絶対に勝手に下りたら駄目ですよ」

「下りねーよ……」


 何度も同じ事を言われて、ちょっとハルさん拗ね気味。リヒトを先頭に地下へと下りて行く。


「こりゃぁ、スゲーな。この遺跡に地下があるとは知らなんだ」

「こはりゅ」

「はいなのれしゅ」

「こはりゅ、結界張りながら進めりゅ?」

「お安いご用なのれす!」


 コハルはリヒト達の上にフワフワと浮き、結界を張る。長老とリヒト達が地下へと続く階段を下りると一直線に通路が伸びていた。何が光源になっているのだろう? 通路はライトが必要ない程度の明るさがあった。

 通路を真っ直ぐに進む長老とリヒト達。ハルはずっと瞳が光っている。精霊眼を使っているのだ。

 リヒトは魔物を倒しながら先頭を行く。長老は周りを浄化しながら進んでいく。魔物が通路の奥から出てくるが、リヒトがすべて一太刀で仕留めている。その魔物をハルが浄化する。浄化すると何故か魔物は消えていく。流れ作業の様に、淡々と進んで行く。

 

「じーちゃん、古代の人達がここに封印したんら」

「ああ、そうらしいな……」


 よく見ると両側の壁に壁画が描かれていた。古代のエルフ族だろう。耳が少しだけ尖った人物が描かれている。

 その古代のエルフ族が、地上に発生した黒い靄を大きな魔石へ取り込んでいる様子が壁画から分かる。


「長老……」

「ここは、古代のエルフ族……エンシェントエルフの遺跡だ。それは分かっていたんだ。だが、この地下は古代……いや、原初のエルフ族が地上に蔓延した瘴気の黒い靄を大きな魔石に吸い込ませている様子が描かれている」

「じーちゃん、魔石は1つじゃねーな」

「ハル、そうだな……4……5……6つか。現在、管理している遺跡も6ヶ所だ。これは他の遺跡も再調査せねばならんな。取り敢えず立入禁止にしておくか……」


 長老がパーピを飛ばした。皇帝に連絡をしたのだろう。同じ事が起きない様、他の遺跡もすべて立入禁止にしてもらう為だ。

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