第89話 リヒトと一緒がいい
ハルがトコトコと長老のそばにいく。長老はハルを抱き上げ膝に座らせる。
「ハル、ベース位すぐそこだ。いつでも会えるさ」
「じーちゃん、しょうか?」
「ああ、ワシなら一瞬だ! アハハハ」
「じーちゃんはしょうらけろ……」
「ハル、ずっとベースに行ったままという訳じゃない。俺達だって休みはある。また帰ってくればいいさ」
「とーしゃま、かーしゃま。おりぇはりひとと一緒にいたい。らめか?」
「駄目なもんか!」
「とーしゃま、ありがちょ」
「そうね……ハルはそう言うと思ったわ。寂しいけど、仕方ないわね。でも、ハル。お休みには帰っていらっしゃいね。父様も母様もハルの事は本当の子供だと思っているのよ。忘れないでね」
「かーしゃま、ありがちょ」
それから、久しぶりにリヒトの家族と長老も一緒に食事をした。ハルは美味しそうに嬉しそうに沢山食べた。
アンスティノス大公国での事を色々話しながら食べた。
「そういえばハルちゃん。髪色はうまく変えられたの?」
「あ……かーしゃま、忘りぇてた」
「まあ! せっかく練習していたのに」
「え!? ハル、髪色を変えられるのか!?」
「ん、りひと。行く前にじーちゃんに教わったんら」
「1度も変えなかったよな?」
「ん、忘りぇてた」
「アハハハ! 忘れてたか!」
「ん、じーちゃん。こりょっと忘りぇてた」
「アハハハ!」
「それより、長老。ハルの耳です」
「ああ、伸びてるな」
「伸びたな」
「ホントだわ、伸びてるわ」
「しょうなんら。ばーちゃんはおりぇの魔力が馴染んだかりゃらって言ってた」
「まあ、そうだろうな。ハルも精霊魔法を使うからな」
「じーちゃん、やっぱしょうなのか?」
「ああ、ハルは精霊に好かれているらしい。それでもハイエルフにしては短い。ハイヒューマンの血が入っているからだろう」
「そうだ。長老、母上。一体ハルにどれだけの魔法を教えたんですか? 俺、びっくりしましたよ」
「嫌だわ、リヒト。ハルちゃんは直ぐに何でも覚えちゃうのよ。もう嬉しくなっちゃうじゃない?」
ああ、やはりだ。嬉しがって教えていたんだ。
「さすがワシの曽孫だ。リヒトより使えるかもしれんぞ! アハハハ」
長老、笑って良いのか? まあ、良いか。
「えぇ!? 俺よりですか!?」
「そうね、そうかも知れないわ」
「長老、母上。さすがにやり過ぎです」
「リヒト、そんな事はないぞ。ハルはまだまだ伸びるぞ。そんな事よりリヒト、明日は一緒に陛下に報告だ」
「はい、長老」
翌日、ハルが起きると既にリヒトはいなかった。長老が言っていた通り皇帝陛下への報告に出掛けていた。
「ハルちゃーん、よう寝たか〜?」
「ん……かえりぇ、おはよ」
朝から元気なカエデだ。ハルはテンション低めだ。
「カエデ、ハルの身支度をするわよ」
「はいな、ミーレ姉さん」
おや、今日からミーレとカエデの2人に世話を焼かれるらしいぞ。
「ハル、お顔を洗いましょう」
「ん……」
ハルは抵抗する事もとっくに諦めている。大人しくミーレに顔を洗われている。
「アハハハ、ハルちゃんテンション低いなぁ」
「かえれ、おりぇは普通ら」
「ハルは毎朝こんな感じよ」
「クラゲを踏んづけている時とえらい違いやな」
「ハル、いいわよ」
「ん」
ミーレとカエデに着替えさせられ、鏡の前に座らされる。
「ミーレ姉さん、ホンマ上手やなぁ。自分は真似でけへんわ」
ハルの前髪を編み込んでいるミーレの手先を見てカエデが感心している。
「慣れよ、慣れ。リヒト様の髪を編み込む事を思ったらこれ位大した事ないわ」
「え? リヒト様も編み込みするんか?」
「かえれ、べーしゅに行ったりゃわかりゅ」
「そうね……またあの髪型をするかと思うとため息が出るわ。まぁ、毎日はしないんだけど」
ミーレは面倒そうに言う。そりゃぁ、あの髪型は面倒だろう。どんだけ時間が掛かるんだ?
「それでも1時間も掛からないわよ。ただね、指が攣りそうになるのよ」
あー、そりゃそうだろう。お気の毒様。
「なんなん? 全然分かれへんやん」
「まあ、楽しみにしてなさい。さ、ハル。出来たわよ。朝食食べに行きましょう」
「みーりぇ、今日はりゅしかの方?」
「そうよ。もう皆様お城に出掛けられたから」
「しょっか……」
「大丈夫よ。ハルはお寝坊してないわよ」
「ん」
「まあ、あのふかふかベッドやとズッと寝てたくなるやんなぁ〜。自分、あんなベッドで寝たん初めてや。感動したわ」
「これからはそれが当たり前になるのよ」
「ミーレ姉さん!」
「カエデもしっかり食べて、グッスリ寝てもっと大きくならなきゃ」
「ミーレ姉さん、マジもう子育てできるで」
「あら、そう?」
ハルが『ルシカの方』と言っているのは、リヒト達家族が食事をしている食堂ではなく、従業員達が使っている調理場に直結している食堂の方だ。
ハルはその時々で両方の食堂を使っている。ハル1人だけで食事をする事のない様にとの配慮だ。
「ハル、おはようございます。よく眠れましたか?」
「りゅしか、おはよう!」
「おう、ハル。おかえり」
「シペしゃん、たらいま」
「なんだ? ネコちゃんが増えたのか?」
「カエデ、このお邸のシェフのシペさんです。シペさん、ハルに付く事になりましたカエデです。私とミーレが教育係です」
ルシカが紹介してくれている。
「カエデ、挨拶よ」
「うん、ミーレ姉さん。シペさん、自分カエデです! よろしくお願いします!」
「おう! よろしくな! まだちびっ子じゃねーか。沢山食べんだぞ」
「はい! ありがとうございます!」
カエデがキビキビしているぞ。
「さあ、ハル、カエデどうぞ」
「やった。りゅしかの飯ら」
「ルシカ兄さんの飯は美味いもんなぁ」
ハルは子供用の椅子に座らせてもらい、カエデが正面にすわる。何故なら、ハルの隣りは既にミーレが陣取っているからだ。
「コハルは起きてますか? 食べませんか?」
「るゅしか、ありがちょ。こはりゅ」
「はいなのれす! 食べるなのれす!」
コハルが元気にポンッと何もない空間から出てきた。ここでは遠慮なく亜空間から出る事ができる。
「え……待って待って! 今コハルちゃんどこから出てきたん!? いつもハルちゃんの胸のとこに入ってたんちゃうの!?」
「あら? カエデは初めて見る?」
「うん、ミーレ姉さん」
「ハルの亜空間よ」
「りゅしか、んまい!」
「アハハハ、ありがとうございます」
ルシカが自分とミーレの分も持ってきてカエデの隣に座る。
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