第39話 ハルのじーちゃんだ
「ハルは神に会ったか?」
「この世界に来りゅ前に呼ばりぇた。あいちゅいきなり森の中に落ちょしやがって、おりぇまた死ぬちょこらった!」
ああ、やはり根に持っている。仕方ない。
「アハハハ! そうか! 神をアイツと呼ぶか!?」
「れも……こはりゅをくりぇたからちょびっとゆりゅす」
「コハルとは聖獣の事か?」
「うん……こはりゅ」
コハルが亜空間から出てきてハルの肩にのる。
「ピヨヨヨ……ハル、泣かないでなのれす!」
「らいじょぶ。もう、らいじょぶら」
「喋れるようになったか」
「うん、昨日りひとのかーしゃまに魔法を教えてもりゃったら、喋りぇりゅようになったんら」
「そうか、何を教えてもらったんだ?」
「りゃいとと、くりーん」
「アハハハハ! ライトにクリーンか!?」
「うん、後はちょうりょうに見てもりゃってかりゃの方がいいって」
「そうか。今日は、ハルのステータスタグを作るんだ」
「うん」
長老はハルをソファーに座らせ、小さなプレートの形をしたペンダントトップをハルの手に握らせた。
「ハル、魔力を巡らせる事は教わったか?」
「うん、ゆっくり身体の中を動かしゅ」
「そうだ。それを手のひらに集められるか?」
「うん、できりゅ」
「ワシが持たせたそれへ込める様に動かすんだ」
「わかっちゃ」
ハルは目を閉じて集中する。ハルの身体がまた少しずつ光り出した。
「ち、長老……」
リヒトが思わず長老を呼ぶが、長老は静かに首を横に振る。黙っていろと言う事か。
暫くすると、ハルの手から光がこぼれ出した。
「ハル、もういいぞ。ゆっくりと魔力を抑えるんだ」
長老がそう言うとハルの身体の光も収まっていく。ハルがゆっくりと目を開けた。
「よし、上手だ。これがハルのステータスタグだ」
長老がそっとハルの手を開かせた。
小さなタグには何か文字の様なものが刻まれている。
「これに魔力を流すと、ハルの今のステータスが見られる。だがな、すべてを見せてはいかん。スキルや使える魔法等は隠すんだ。その方法も教える。だが、今のハルのステータスを確認しておこうと思う。よいか?」
「長老とりひとも見りぇりゅのか?」
「ああ、そうだ。リヒトはハルの保護者だ。それも刻まれている」
「分かっちゃ」
「よし、じゃあ魔力を込めてみなさい」
ハルがタグを握った。すると、何もない空間にブウォン……と半透明の大きな画面が現れた。PC画面の様だ。
「これがハルのステータスだ」
「おりぇのすべての情報……?」
「そうだ……ハル、モリオと言う家名だったのか?」
「うん。向こうの世界の文字で、森に生きりゅて書くんら。じーちゃんとばーちゃんで決めた名前らって聞いた」
「そうか……そうか、あ奴等らしいわ。森に生きるエルフだ。2人で力を合わせて生きていたのだろう」
「うん、じーちゃんとばーちゃんはしゅごかった! 何れも知ってて何れもれきた! おりぇはだいしゅきらった!」
「そうかそうか! ハルは良い子だ!」
ガシガシと遠慮のない手つきで長老はハルの頭を撫でる。
さて……この時点でのハルのステータスを見ておこう。
名前:ハル(モリオ ハル)
性別:男
年齢:2歳11か月(20歳)
種族:ハイヒューマンとハイリョースエルフのクオーター
体力:1,053
魔力:198,000
称号:耐え続けた者 / 転生者 / 聖獣の主 / エルフ族皇族の守護を受けし者
加護:創造神の加護 / 世界樹の愛し子 / ハイエルフ族の愛児 / ハイヒューマン族の愛児
保護者:リヒト・シュテラール / ラスター・エタンルフレ
生活系スキル:家事 / 礼儀作法 /識字 / 解語 / 計算 / 並列思考 / 薬学 / 鍛治
戦闘系スキル:体術 / 剣術 / 短剣術 / 暗器術 / 弓術 / 投擲術 / 隠密術 / 身体操作
魔法系スキル:聖属性魔法 / 風属性魔法 / 水属性魔法 / 氷属性魔法 / 土属性魔法 / 火属性魔法 / 空間魔法 / 時間魔法 / 結界魔法 / 強化魔法 / 魔力感知 / 魔力操作 / 創造魔法 / 索敵魔法
耐性系スキル:肉体苦痛耐性 / 精神苦痛耐性 / 物理攻撃耐性 / 魔法攻撃耐性 / 精神攻撃無効 / 状態異常無効
特殊系スキル:獣魔術 / 魔力回復速度上昇 / 体力回復速度上昇 / 生命強化 / 耐久力強化 / 精神集中強化 / 世界言語 / 精霊眼 / ワールドマップ / 無限収納 / 亜空間
「長老……なんスか、このステータスは」
「リヒト、あれだ」
「なんスか……?」
「ワシの娘と婚約者であるハイヒューマンのスキルを全部受け継いでおると言うことだな」
「マジッスか……」
「ああ、大マジだ」
「『転生者』て……」
「ああ、ワシの娘が飛ばされたと言う別の世界に生まれたのだろう。こっちの世界に生まれ直したのだとワシは思う」
「それに長老、この『精霊眼』て、まさか……」
「ああ、リヒトの鑑定眼の上位種だ」
「マジかよ……!!」
「それよりこの耐性だ」
「こんな耐性スキル、聞いた事もないです」
「ルシカ、それだけの経験をして来たという事だ。称号を見てみろ。『耐え続けた者』とあるだろう」
「……!!」
と、大人はあれこれと思いがある様だが、当のハルは殆ど……いや、まったく理解していない。きょとんとしたままだ。
「ちょうりょう、りひと、りゅしか。おりぇ変なのか?」
「ハル、変ではないぞ。ハルの大好きな祖父さんと祖母さんの力を全部引き継いでおる。ハルがつらい思いをしてきたことも無駄にはなっておらんよ」
「しょうか、じーちゃんとばーちゃんの!」
「ああ、それにな。祖父さんと祖母さんが神の国でハルを見守ってくれておる。加護を与えてくれておるんだ」
「じーちゃん! ばーちゃん!!」
ハルは余程、2人の事が好きだったのだろう。涙をポロポロと流しているのに嬉しそうな笑顔だ。
「ハル、本当によう帰ってきた! ワシもハルの保護者になっておる。これからはワシがじーちゃんだ!」
「ちょうりょうがおりぇのじーちゃん!?」
「ああ! じーちゃんだ!」
ハルの心からの笑顔をリヒトとルシカは見た。
どれだけ辛い思いをして来たのだろう、2人には想像もできない。
最初の頃の尖った突き刺すような警戒心、人を信じようとしない事、それにこの耐性スキルだ。
今、嬉しそうに泣いているハルを見ると心が痛むと同時に、ハルがこの世界に来て良かったと思える。保護して良かったと。
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