第44話 毒を喰らわば皿まで
獣人は血塗れの口元を手の甲で拭い、クリスタの太ももに齧り付く。我に帰り、デオを恐怖と勇気で握りしめた拳で殴った。
「生命の
自身の寿命の半分を消費し、怪我、病を完治させられる魔法。
だけれど、死人に効果はなかった。
「起きて‼︎ お願い‼︎」
「痛い……、殴られた……、エサ横取りした」
獰猛な狼、奪われた死肉を取返すために、一歩、一歩、威嚇しながら、近づく。
「来るなァ‼︎」
エルナは無事であったクリスタの、上半身を抱きしめながら、涎を垂らす狼に向けて、炸裂魔法を発動した。しかしながらも、肝心の炸裂は相手の片腕を吹き飛ばすだけで、終わり、私は連発した。
次第に建物は急速に崩壊へ進んでいく。
「痛いィィィ‼︎‼︎ ……腕……ないなったァ……」
喰らうも喰らわれるも、強者と弱者の関係。だけれど、戦わずして強者には慣れない
「死ねよッ‼︎ なんで……、いつも……、」
「お姉さんも、美味しそうだね……」
もう、腕が取れたことに構わなくなった。
「……食ってみろよ。死ぬより、恐ろしい事。してやるからさ」
エルフ、獣人、天使、今用いている種族の特徴に変化し、万全に迎え討つ。相手にとってオードブル《前菜》かもしれない。そんな思いもあった。
口を大きく開き、とびかかる。綺麗な歯並びと、恐ろしく鋭い牙がみえる。
「酒豪の導きで、酔いへと誘わん」
冷静に導きを唱え、デオを無力化した。ふらふらとヨタヨタと獣の覇気は無い。
「効いてくれて、よかったよ」
毒を食らわば皿まで、毒をもって毒を制す
腹を引き裂き、亡骸と胃酸の混じり合ったクリスタの一部を手に取る。泣き喚き乍、爪をたてるデオ、私の腕に猫リスカが刻まれる。
考える事を失わせ、生きる気力を失わせ、そして、意識を失わせる。だけど、足りない……コイツにとっての大事な物を失わせたい。
「暴れるな餓鬼……」
「ひょくりゅょうが……くぅ……イタイヨォォ……」
指の二、三本、骨の5、6本を殴り折った。
気絶し動かなくなるまで、殴打する。
「我が契約せし、悪魔ラミアよ……我に力を」
「ふぁぁ……、……召喚とは、初めてじゃな。何かあったか?」
「ラミア……、この世界に蘇生魔法はある?」
「ないな。死せし者の魂は、ヘカーテの元へ行く。しかし魔法は開発してきた物。蘇生概念さえ分かれば、できないことはないだろうな」
寝ぼけていた目を擦り、ラミアもまた、クリスタの死をみたのである。
「上品な小娘だったのにな」
「ラミア、トドメを刺した方がいいと思う?」
「悪魔にそれを聴くか? 妾ならやる。だが好きにせい」
「まだ、晴れないな。この気持ちは」
「遡行の導きで、時を逆流す」
ピンクの兎が、変哲もない空間から、パッとマジシャンかのように、姿を表した。
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