第13話 ソルティを守りたい。

勇者を部屋へ送った後のお話。

王位継承第五席

皇子ブルー・ドッグ王位継承第二席ソルティ・ドッグのいる部屋へ向かっていた。ドアをノックして入室する。


「お姉様、ご機嫌はいかがですか?」

「えぇ、大分良くなりましたわ」


 姉なる者はベッドに腰掛け読書をしている途中であった。心配そうに駆け寄り姉の近くへよる。


 ソルティ皇女はミディアムまでの髪の長さと自然にカールした髪型。オオカミの耳にそぐわない、優しい顔つきで朗らか。清楚と聖女を兼ね備えた純粋なお人柄。服装は白いナイトドレスに羽衣を羽織っている。



「お姉様の風邪早く治るといいですね! 早くお姉様と遊びたいです!」

「そうですわね。それと、初めての執務はどうでしたか?」

「はい! 凄く楽しかったです!」

「執務をこなせて偉いですわよ」


ブルー皇子の頭を撫で、あごを撫でる。

「ふふ、可愛い」


 僕はお姉様に撫でられるのが好きだ。白くて汚れなき手で、撫でてくれる。純粋・潔白・誠実・抱擁。僕にとって至高の存在。あんなちっぽけな酒よりもずーっと、ずーっと、大切な僕のお姉さま。


「お姉さま、もっと撫でて!」

「仕方ないわね。よしよし」


 ソルティは悲しそうな顔を見せる。その顔を見たブルーは心配になって。


「どうしたの」

「ううん、こんな不甲斐ない皇女でいいのかなって」

「お姉さまは、居てくれる僕の拠り所。皇女である前に僕のお姉さまだから」

「意味わかんないわよ……」

 ちょっぴり笑顔になってくれた。


「皇女だからって民衆に立つことが全てじゃないと思うんです。お姉さまを守るのは僕。その病気からも」


「ありがとう、ブルー。元気が出たわ」


 零れ落ちいそうな涙を拭い。引き続きブルーの頭をなでる。するとブルーがソルティの左手とって。


「これ、お姉さまに似合うかなって、それと誓いの意味を持って」


 親指にリングを差し込む。サムリング。ブルー皇子にとっての決意表明。そして付けられた指輪はブルーダイヤモンドがちりばめられていてとても麗しい。


「ずっと、渡そうとしたけど、タイミングが分からなかったから」


「うん、ブルーありがとう。」

ソルティはブルーを抱きしめる。ブルーもまた抱きしめる。


「お姉さま。すごく温かいです。良い匂いする」

 このまま時が止まってしまえばいいのにとそう願った。ずっとこのままで、心がいっぱいで、お姉さまのことで頭がいっぱいで。もう、国民なんてどうでもよくなってしまう。


「僕、皇子なんてやめて、お姉さまと暮らしたい」

「ブルーも悩みあるんですね」

「あるよ。もちろん」

「悩み話せるなら、お姉ちゃんが聞いてあげる。」

「――この悩みは、まだ話せないかな」


「話せるようになったら、聞きたいわ」

「うん!」


 そういって、頬を撫でる。


「軟らかいわね。ぷにぷにしてる」


 皇女としての気持ちはこうして、守られている。

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