2−5
大木から降りたユウヒは領主邸の裏側に回る。
肩には梟が止まっており、兎は相変わらず鞄で寝ている。
曲がり角の先、人が少ない夜道に潜み機会を待つユウヒ。
しばらくすると、領主邸の警備兵が二人で見回りする気配が近づいてきた。
「寒いな」
「とっとと見回っちまおうぜ」
軽口をたたきながら見回りする警備兵。
そこにユウヒが声をかける。
「こんばんは」
「「!?」」
暗がりから声をかけられ、驚く警備兵。
反社的に目を向けるとそこにはユウヒと、肩にのった梟の姿がある。
警備兵が梟を見た瞬間、鈍く光る金色の目から目を離せなくなってしまう。
「アヤシイモノ、イナイ」
目が合った状態で梟が言葉を発すると、警備兵はのろのろと頷いた。
「あ、ああ、怪しいものはいないな」
「異状ないか。もどるか」
警備兵は、目の前にいる見るからに怪しいユウヒと梟が怪しいと認識できなくなっていた。
デモンズアウルの能力、
梟と目を合わせた相手の認識に、別の認識を刷り込むことができるのだ。
誤認させられた警備兵は、見回りを終えて邸宅に門に向かう。
怪しくないユウヒと梟は堂々と後ろについて歩く。
門の前について門番に報告する二人の警備兵。
「もどったぞ」
「異状なしだ」
「こんばんは」
警備兵の報告の最後に紛れ込んで夜のあいさつをするユウヒ。
門番はつられて挨拶をしながら梟を見てしまう。
「こんばん、は?」
「アヤシイモノ、イナイ」
「異状なし、了解した」
門番にも見送られ、警備兵とユウヒと梟は正面の門から邸宅内に入っていくのだった。
警備兵が屋敷の中の部屋に入っていくのを見送り、ユウヒと梟は庭に移動する。
結界石に守られている邸宅内、夜間の庭ということもあり人気はない。
するすると目標にしていた木の根元にたどり着いた。
ユウヒが上を見上げると、二階のバルコニーがみえる。
一階から見る限り、バルコニー上に人はおらず、周囲にも人影は見えない。
「デモン、お願い」
「ミテクル」
ユウヒが頼むと梟は飛び立ち、今から登る予定の木の上に止まる。
そして、木の上からユウヒに向かって目を一回光らせた。
「人はいない、っと」
梟の合図を受けて、木を登るユウヒ。
するすると登って、手すりに手をかけてバルコニー上に移動した。
バルコニーの上は薄暗く、人に見つかる心配は少ない。
ユウヒがゴールとなる令嬢の姿を確認しようとして部屋からバルコニーの入り口を見ると。
「どちら様でしょうか」
中で編み物をしているはずの令嬢がそこに立っていた。
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