2−3
数分後、商談部屋。
コンコンコン、とノックが鳴りユウヒが部屋に入る。
「こんにちは」
「なんだ、今『兎』を待っているのだが」
ぴょこっと鞄から顔を出す兎。
そのままにユウヒは自己紹介する。
「はじめまして、運び屋『兎』です」
「おまえが兎なのか?」
「はい、そうです。ギルド長からお届け物があると聞いていますが」
「まだ子供ではないか。大丈夫なのか?」
男の目から見たユウヒは、まだ幼く頼りない。
今回の依頼がほんの少しまずい依頼だという自覚もあるので確認する男。
「お仕事はちゃんとやります。報酬は配送完了してからいただきますし」
「ふむ」
「お仕事の内容伺って、無理でしたらこの場でお断りしますね」
どの道、恋する男にはほかに当てがない。
改めて依頼をユウヒに伝えた。
「届けたいモノはこの文だ。届ける先は領主様のご令嬢なのだ」
「領主様の邸宅にいってお手紙渡せばよいんですか?」
「警備や家人に気づかれず、ご令嬢に直接渡してほしいのだ」
「あー、そういう依頼ですか。そうすると不法侵入ですか?」
「ん、まあ、そうだな」
男は言葉を濁すが、かまわずユウヒは続ける。
「そうしたら、大目に金額いただきますが、大丈夫ですか?」
「できるのか?」
「はい、運び屋ですので」
ユウヒは問題を全く感じさせずに言い切る。
続けて依頼内容の確認をはじめた。
「お届け物はこちらの文、依頼内容は領主様のご令嬢に文を渡すこと。間違いないですか?」
「おお、おお、それでよい」
「ひとつだけ。お渡しできれば配達成功でいいですか?」
「ん、どういうことだ?」
「運び屋ですので、運ぶことはしますがその後はお約束できません」
「なるほど、そういうことか」
文による結果は保証しない。
男としては結果が欲しいところではある。
それを見て執事が発言した。
「運び屋としては成功で間違いないですな」
「まあ、それはそうだな。その条件で問題ない」
執事の助言もあり、条件について承諾する男。
それをみて、ユウヒは費用について切り出した。
「費用は金貨200枚です」
「金貨200!?それはさすがに」
手紙一つの配送で金貨200枚は男にとっても小さい費用ではない。
不満げな男に対してもユウヒは言い切った。
「普通の配送で50枚です。見つからないで不法侵入、なので200枚ですね」
「……本当に届けられるんだな?」
「もちろん、運び屋ですので」
再度同じ言葉で言い切るユウヒ。
覚悟を決めて男は依頼した。
「それでは、依頼する」
「恋文の配送、確かに請け負いました」
席を立って頭を下げるユウヒ。つられて兎も頭を下げる。
机の上にある男の力作を手に持ち鞄に入れ、部屋を出て行った。
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