第7話~伝説の新馬戦~
札幌競馬場第5R:2歳新馬戦(芝・良・右・1800m)
おー、パドックはずっと同じところグルグル回ってて暇だったなー。でもなんか強そうな奴が結構いたような……まぁ、さすがに俺には敵わんだろ!
だって俺、元人間ですから! むしろ俺を負かしたらソイツら化け物だよ。もう最強じゃね?
お、今から本馬場入場って奴か。行くぜぇ! うはは、めっちゃ広い芝コースだな。ここを走るのか。うおっ、人が多い!?
なんか『黄金の血脈』とかの旗が振られてるな。俺ってば黄金の血が入ってるの? 絶対強いじゃん! 関係者だけじゃなく、観客まで俺を応援してる訳? もう最高だね。
おー、ゲート前についたけどまたグルグルするのね。飽きたけど……周りの奴らでも観察してみるか。
『うわ、人間がいっぱいる!』
『怖いよぉ、どこここぉ』
『身体が僕よりみんな大きい。羨ましい』
おー、物の見事に勝つ気の欠片もない発言ばっかしてる奴の多いこと。
『へぇ、今日はここで走れば言いわけ? 別に他の奴らが増えた所で俺が勝つのは変わらないと思うけど笑』
『あれ、いつもより幼い仔ばっか。こんなの勝負するでもないじゃん』
と思ったが2頭だけふざけたことを抜かしてるやつが居るな。最初の舐めた態度を取ったのは……ディープゼロスって奴か。
そんでナチュラルに俺らを見下したのがロードクレイアスって奴ね。お前らの名前は覚えたわ。潰す!
『ねぇ、君はここが何処か知ってる???』
『なんだお前?』
『ボク、タマモクラウン!』
『知らん。俺らは今から走る敵同士だぞ。さっさと向こう行け』
『ええ、つめたーい』
なんか変な奴に絡まれたがウザかったので追い返してやったわ。今はあの2頭には負けないように怒りを沈めるのに集中したいからな。すぅ、はぁ……すぅ、はぁ……。
《さぁ、今週も開催される新馬戦ですが……観客の数はいつもの何倍もいます。それもそのはず、全14頭のこのレースで、ノーゼンクラブと社大クラブが太鼓判を押す2頭が新馬戦からぶつかります。さらに天皇賞・秋を勝ったプリモールの待望の初仔。他にもタマモクラウンなど有力馬が目白押しです。解説の細田さんはどうご覧になります?》
《抜けているのは最初に紹介したロードクレイアスとディープゼロスの2頭ですね。オッズも2頭だけ1倍台と見たことがないほどの支持率です。しかし私は3番人気のステイファートムに期待したいですね。複勝もちゃんと買いました》
《あはは、そこはどうせなら単勝行っちゃいましょうよ》
《だってステイゴールドの血が入ってますから》
《好きですねぇ。まぁ、競馬ファンの9割が好きだと思いますし嫌いな競馬ファンに至ってはいないでしょうが。ですが、私はロードクレイアスからいきますよ》
《明智さんの推すロードクレイアスはGI8勝を上げたロードクレセントの初年度産駒でもありますね。ディープゼロスもリーディング上位のコントレイルの子供ですし、やはり期待してしまいます。あ、そろそろ始まるようです》
お、そろそろレースが始まるらしい。次々と周りのヤツらが促されてゲートに入る。隣の奴がなんか騒がしいな。邪魔はするなよ? したら蹴り飛ばす!
《枠入りがもう始まってますね。ロードクレイアス、ディープゼロス、共にスっとゲートに収まりました。しかし一頭、バーストインパクトがちょっと落ち着きがないですね》
「よしよし、大丈夫だよファー」
横川さんが優しく首を撫でてくる。大丈夫、落ち着いてるよ。お、今「出ろー」って聞こえた。ゲートが開くのはもうすぐか。
《ステイファートムを横川騎手が撫でて宥めています。最後、大外枠にシャドーフェイスが収まりまして……スタートしました!
一頭勢いよく飛び出したのはステイファートム! しかし外から一気に⑭シャドーフェイスが並びかけます! ⑨ステイファートムはそのまま結局3番手か
中段に④、⑤がいて、いましたここに③ディープゼロスです。ディープゼロスは中段です。その後ろに──。
そして最後方に⑩ロードクレイアスです》
「スタートうっま! 古馬かよファーは」
ゲートを出てすぐに横川さんの声が聞こえた。そうだろうそうだろう! 俺様は人間の言葉が分かるからな! 前に2頭か。どこがゴールかは返し馬ってやつの時に把握したからな。
このペースも加味すると……スタートしてすぐある一コーナーの手前にあるゴール版をもう1回通過すれば良いはずだ。横川さん、俺はいつでも行けるからな?
「まだだよ。最後の直線まで足は使わない」
OK、確かにこの札幌競馬場は最後の直線が長かったからね。今はこのペースに任せてこの位置をキープっと。
《さぁ、一コーナーを回って先頭はシャドーフェイス。続いて出遅れから一気に前に向かうバーストインパクトですが、これは鞍上必死に抑えてますが、完全に掛かってしまっています
5馬身ほど離れまして2番手⑪。そのすぐ後ろに⑨ステイファートム。2馬身切れて④、⑤。
そしてその2頭の後ろ、僅かに2番人気の③ディープゼロスです。父は無敗三冠馬コントレイル。社大の期待を一身に背負って負けられないぞディープゼロスと鞍上は福長!
それから①レジネイトがいて──。そして、いました依然として最後方。こちらも負けられません、ノーゼンの期待を受け止める1番人気のロードクレイアス鞍上竹豊です。父ロードクレセントと同じ自慢の末脚が炸裂するんでしょうか?》
お、もうすぐコーナーが来る。第3コーナーから第4コーナーの部分か。まだ動かずに居るんだよな?
《先頭は掛かりまくりバーストインパクト。その後ろにシャドーフェイスですが、徐々に馬群が詰まってきています。半馬身後ろに⑪。そしてすぐ後ろに⑨ステイファートム。その後ろにディープゼロスも上がってきています。さらにさらに大外を通っていつの間にかタマモクラウンもディープゼロスをマークして上がってきています!》
あ? 俺の後ろにあのムカつく奴の一頭と話しかけてきた陽キャが居んのか? 抜かされたくはねぇぞ横川!
「まだ、ダメだよ。僕と一緒に勝とうぜ!」
……ふん! お前がそう言うなら従ってやるさ! 負けたら振り落としてやるからな!
《第4コーナー最後の直線! ⑭シャドーフェイスとバーストインパクトは力尽きたか後退!
⑪がいて内を通って⑨ステイファートム。外から③ディープゼロスが来ているぞぉ! ⑦タマモクラウンそして大外から一気に⑩ロードクレイアスだぁぁ!》
「いけっ!」
横川さんの声と鞭に反応して全力を出す。グンと視界が加速した。物凄い速さだ。でも、後ろを引き剥がせちゃいないらしい!
ディープゼロスの足音が聞こえてくる! ヤベぇ、フェイと走ってる時みたいに本気出さねぇとマジでやばい! でもそれと同等かそれ以上に……ディープゼロスよりもっと後ろからぶっちぎりでヤバいのが来てる!
絶対調子乗ってたアイツだ! 調子乗るだけあるわ! 1番後ろだったのにもうすぐそこまで迫ってやがる!? 馬鹿みたいにヤベぇ足持ってるな!?
《ロードクレイアスが最後方から一気に10数頭を置き去りにした! タマモクラウンをあっという間に交わして、ディープゼロスに並びかける!
先頭は内ステイファートムが逃げるが、ディープゼロスとロードクレイアスがジリジリ迫るぞ! 離れた4番手にタマモクラウン!》
「はぁぁぁぁぁ!」
クッソ苦しい! 横川の奴も息を吐きながら俺の首の上げ下げ補助をしてくれてるが、本気で走りすぎて足が限界過ぎる! すぐ後ろにいる2頭には負けたくねぇけど、負けそうっっっ!
《ステイファートム粘るが、ここでディープゼロスとロードクレイアスが前に並んだ!》
っ!? 嘘だろコイツら……。俺が僅かに目を開けば、ディープゼロスとロードクレイアスは最初からお互いのことしか見てなかった。
おいおい、隣にはもう1頭、俺がいるんだぜ? 何2人だけの世界に入ってんだ? 調子に乗るんじゃねぇぞゴラァ!
《2頭がステイファートムを交わして……依然並んだまま! ステイファートムまだ粘る粘る! 黄金の血は諦めない! テイオーの血は惜敗を認めないぞ!》
お……コイツら、ようやく俺の方に視線を向けてきやがった。なんでまだ俺らの隣に並んでるんだって顔してやがるな? 教えてやるよ! お前らに勝つためだ!
約束したんだよ、俺。関係者のみんな……産んで育ててくれた母さんと館山さんに、調教師の荻野さんに、一生懸命世話してくれた沢村さんに、そんで俺の相棒の横川さんに……勝つって!
それにフェイとも約束したんだ。あいつ以外の奴に負けないって! どっかの大手から期待されてる奴らが相手だろうが知るか!
勝つのは……俺なんだぁぁぁぁぁ!
《内ステイファートム! 真ん中ディープゼロス! 外ロードクレイアス! 並んで並んで、並んでゴールイン! 内か外か真ん中か! 3頭もつれてのゴールです!
新馬戦とは思えない激戦! 城内から大きな拍手と歓声! 勝ち時計は、なんと1:46.2!?!?!? 札幌競馬場の2歳レコードを2秒も更新するとんでもないレコードタイムだぁぁぁ!!!
3馬身ほど離れてタマモクラウン。さらに5馬身切れて後ろは団子状態ですが、やはり人気の前3頭が抜けてます! 上がり3ハロンは脅威の32.4っ!!!
肉眼ではどの馬が勝ったかは全く分かりません。発表を待ちましょう》
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モデルにした人が書いてる途中で引退を表明したけどこれはパラレルワールドなんでそこお願いします
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