第81話 ウルカーンの手前
俺達の前方には、小高い丘の上に築かれた街が見えていた。その丘にはまだ少し距離があるが、手前にはすでに低い柵のある畑や家屋がちらほらとあった。
「アレがウルカーンね~」と、一緒に荷馬車を曳いているミノタウロス娘のムーが言った。彼女は身長二メートルを超える巨女で、腹筋バッキバキの巨乳娘だ。少しおっとりした性格だが、斧使いで、戦うと強い。銀髪のおかっぱ頭に、立派な角が生えている。
俺も一緒に荷馬車を曳きながら、「あれがウルカーンかぁ」と言って、その周囲を見渡す。
不思議な事に、他の街の様に、城壁があってから街があるのではなく、ここはいきなり家屋が建っていた。まあ、日本の感覚なら、普通はこうだよなと考えた。かつて、子供らを連れて行った吉野ヶ里遺跡……それが現役だったころではあるまいし……
「どうしたの? ここは紛れもなくウルカーン。ええつと、資料によると、平和すぎて城塞の外側にも無秩序に街が広がっていったとあるけどね。昔は、城壁外はスラムだったらしいけど、最近ではそうでもないって」と、トカゲ娘のシスイが言った。
今日は珍しく、運動嫌いのシスイが歩いている。シスイの髪も白に近いグレーで、今日は白い服を着ているから、全身真っ白に見える。
シスイはむっちりした体付きで、お尻と尻尾をふりふりしながら俺の斜め前を歩いているから、俺としては彼女のぶっとい尻尾が一体どのようにお尻に引っ付いているのか気になるばかりだ。
彼女とは何回か
シスイは、別に俺の事が好きなわけではないと思うのだが、何故かたまにやりたがる。だから俺は、彼女が実は筋肉質で、結構運動神経も良さそうだということを知っている。
「ふむふむ。城壁の外の街にも、国家権力が及んでいるということか。それはなにより。無法地帯では、新参者は生きにくいし」と言っておく。もちろん、知ったかぶりだ。
シスイは、メモを見ながら、「あなた、スラム知ってんの? でもまあ、それは正解かもね。スラムには、お約束的に地下組織がいる。そこに新参者が入り込もうとすると、必ず流血沙汰が発生するって。まあ、私らはスラムの利権に入りこもうとは思わないけどね」と言った。彼女のメモを持つ手には鱗が生えていて、鋭い爪が付いている。
シスイが見ているメモは、彼女達の先輩方が残した情報らしい。
このキャラバンのモンスター娘達は、タケノコという国からやってきている。
タケノコは島国で、切り立った小さい島が沢山あることから、タケノコ島と呼ばれ、それが国名になっている。
だが、タケノコと言う国は、以前は『リュウグウ』と名乗っていた。
それが何故タケノコになったのか……それは、色々と事情があるらしい。
リュウグウは、闇の神『リュウ』を祭る国だった。だが、五十年ほど前に就任した国王が、リュウの巫女と喧嘩してしまった。
その時の王は、『魔王』と呼ばれており、異世界転移者だったらしい。真偽は分からないが、本人がそう言っていたのだから、一応はそうだという前提で話を進めなければならない。
その異世界転移者である魔王は、リュウグウの巫女……いや、その背後にいる『リュウ』を倒してしまったらしい。リュウとは、ウルやエアなどと同列の『神』と呼ばれる存在のはずだ。
神を倒すという事の定義はよく分からないが、とにかく魔王は自分の国の神であるリュウを倒した。
その後、リュウグウはタケノコと名前を変え、今も独立国家として生き抜いている。
それが、タケノコであり、元リュウグウであり、彼女達の故郷なのだ。
そして、タケノコの住民は、100%女性なのだとか。
モンスター娘は、どんな男と子供を作っても、必ず自分の種族の女子が生まれる。
その女子は、年頃になるとキャラバンを結成し、国外に旅立って行く。
その目的は、男をゲットするため。
もちろん、行商して外貨を稼いだり、国外の情報を収集するという目的もあるのだが……
俺は、隣を歩くシスイを見る。
シスイは、インドア派であるが、体の骨格が大きく、何故か筋肉も発達している。
特にお尻がプリッとむっちりしており、個人的にはとても好みだ。
何というか、日本人体型というか……だが、その反動で、上背の割には足が短く見える。
要は、顔はインドア派で深窓令嬢のたたずまいであるが、体格はがっしりとしており、なおかつむっちり体型なのだ。抱き心地はばつぐんだ。
俺がシスイの歩く姿を眺めていると、「さて、今日は下町の方に泊まるかな」と、後ろから声がした。今はもう夕方近いから、無理に市街地に入らず、この辺りの空き地で泊まる作戦なんだろう。
声の主は体が紫色のデーモン娘。このキャラバンの責任者であるジークだ。今日も、谷間が見えるキャミソールみたいな服を着ており、目のやり場に困る。
俺は、荷馬車を曳きながら、「どこかに止まろうか?」と言った。
「そうだな。次の空き地で止まろう」と、ジークが言った。
「私皆に伝えてくるよ」と、マジックマッシュルーム娘が言って、荷馬車から飛び降り、ひょこひょこと後ろに駆けて行った。
マジックマッシュルーム娘の名前は、シュシュマという。俺的には、彼女が一番の謎だ。一体どの辺がマジックマッシュルームなんだろうか。
シュシュマは、背が120センチくらいしかなく、ほっこりしたお顔で一瞬子供に見えるのだが、ちゃんと年頃のレディらしい。確かにお尻はがっしりとしている。顔に似合わず、セック○は結構激しいらしく、いつもケイティともう一人のデンキウナギ娘と一緒に3Pを楽しんでいる。幻覚と電撃で素晴らしい快感があるらしいのだが、俺は試していない。このキャラバンでは料理や健康管理、備品管理などの後方支援的な役割を担っている。嘘か本当か知らないが、戦闘も実は強く、怒ったら怖いらしい。
その彼女が、後ろの別の荷馬車に駆けて行く。
今の俺達は、荷馬車10台のコンボイで進んでいる。先頭が俺とムーが曳いている超巨大荷馬車だ。10トントラックほどの大きさがある。
元々は調教された化け蜘蛛に曳かせていたのだが、途中で死んでしまったため、仕方が無く俺とムーが曳いている。お陰で俺の体がバッキバキになってしまった。荷馬車を曳くのに特化した感じの筋肉が付いていると思う。
「私達が駐めるとこ探してくる」と、ウマ娘が言って、ライオン娘のナハトと一緒に先行していく。
彼女は、おへそから下がウマだ。いわゆるケンタウロス娘なのだが、心の中でウマ娘と呼んでいる。
お隣のライオン娘はウマの部分がライオンになった様な感じだ。シスイと違ってフットワークが軽く、偵察や狩りなどで大活躍している。なお、ウマ娘は茶髪の美乳で、ライオン娘は金髪の巨乳だ。
しばらくそのまま進むと、道の脇でウマ娘が手を振っているのが見えた。ここに来いと言うことだろう。
後ろの御者席にいるジークが、「よし、
ウルカーンに着いたのか着いていないのかよく分からない状態だが、実は、ウルカーンに着くと、色々とあるのだ。色々と……。
なので、俺は、ウルカーンに着くのはもう少し後でもいいかと思いながら、荷馬車をぼちぼちとウマ娘が手招きする方に曳いていった。
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