第123話

夕食の直前、やっとガルさん達"守護者の盾"の皆が帰ってきた。

なかなかに面倒な会合をしてきたようで、精神的にお疲れの様子。

取り敢えず、夕食を一緒に摂る約束だけをした。


暫く経って、皆が声を掛けてくれたので食事をする。


「で、何をそんなに疲れてたんです?」

食事をしながら、帰ってきた時の疲れていた理由を聞いてみた。


「あれはな、エドガーが調査してきたスロー・モンキーのメスのことを信用してない馬鹿が多過ぎて、ギルドで揉めてたんだ」

えっ!伯爵家からの通達だったはずなんだけど?


「あれって、俺の名前じゃなくて伯爵家の名前で出てませんでしたっけ?」

「そう!伯爵が魔物の生態を知ってる訳が無い!だから信用できない!だってよ。馬鹿野郎が多過ぎだろ」

そりゃあダメだな、話にならんわ!


「で、揉めてどうすることにしたんです?」

「ギルド主導で、生態調査するってよ!」

また、無駄なことを。

ってか、今までやってなかったことに驚くわ!


「それは裏付け調査なんですか?それとも新規?」

「一応、裏付けを優先するように話をつけるのに時間が掛かったんだ」

あぁ、それを約束させた訳だ。

新規で調査からなんてやってたら、対策が何時になるか分かったもんじゃないからな。


「ってことは、その裏付けが終わるまでは待機ですか?」

「そうなるな」

うーん、俺は明日にでも回復薬を作りに行くていで、街の外に出るつもりだったんだけど、これは日程をズラした方が良いのかな?


「俺は皆さんに伯爵が渡す予定の回復薬を作るために採取と調薬に出るつもりだったんですけど?」

「それは明日からか?」


「そうですね。明日から五日ほどの予定です」

「そうか、流石に五日も街を離れることはできんな。今までもソロでやってきたんだから、今更かもしれんが、注意して行ってきてくれ」

あらっ?普通に許可が出たな。

まあ、過剰に干渉されるよりは良いけど、もっと、こう、引っ付いてくる感じがしてたんだけど?

俺の気のせいか?

それとも、ギルドの相手をするのに精一杯?


まあ考えても分からんし、それは置いといて、明日から野営になるんだし食材を追加しとかないとな!

あっ!そうだ!アンバーにブラシも買ってやろう!

長毛種は毛が絡み易いって、動物の憩い亭の女将さんが言っていたしな。

この街だと魚は干物だから日持ちするし、あと肉類は絶対に切らしちゃダメだろ、あとは調味料かな?


昨日も保存食や穀物などは買っていたが、それ以外の食材を考えながら外出の用意をした。

その後は街をブラブラしつつ、必要な物、必要そうな物、必要無さそうな物と色々と買った。

必要無い物は、必要無いんだから買わないぞ。

必要無さそうな物は、可能性が残ってるから、興味がある物(調味料とか)だけは買ったけど・・・


買い物を終えて宿に戻り、休憩がてらアンバーのブラッシング。

まずは布を濡らして、アンバーの身体を拭く。


顎の下とか胸元、あとは腹側の毛は汚れがあるな。


『エドガー!そこダメ!』

『えっ!でも汚れてるぞ、綺麗な方が良いだろ?ちょっと我慢してくれよ』


アチコチ触られて嫌がるアンバーを説き伏せて、何とかかんとか体全体の汚れを落とす。

拭き終わる頃には、何故かアンバーがグッタリしてた。


『アンバー、拭き終わったから魔法で乾かせるか?』

『ダメッって言ったのに!エドガーを吹き飛ばして・・・』

『物騒なこと言うなよ!乾かしてみればアンバーも納得すると思うんだけどな』

『納得できなかったら、キノコ全部食べてやる!』

『はいはい、分かった分かった、早く乾かしてくれよ。最後に気持ち良くブラッシングしてやるから』

『もうっ!』


そんな態度を取りつつも、きちんと風魔法で自身を乾かすアンバーに微笑みながら、購入してきたばかりのブラシで毛を梳かしていく。

アンバーも最初は普通にしていたのだが、段々とブラッシングが気持ち良くなってきたようで、風が安定しなくなっていき、最後は完全に止まってしまっていた。


『アンバー?魔法は?』

『・・・そこ良い、もっと・・・』


これはダメだな。

今話し掛けても聞いてないわ。

全身、頭から尻尾の先までブラシをし終わる頃には、ほとんど寝落ち状態になってた。


『アンバー終わったぞ。ほら、寝てないで自分を見てみろよ』

そう揺すって起こしてやる。


『もうっ!気持ち良く寝てたのに・・・』

そんな文句を言いながら、自身の体に目を向けて言葉に詰まった。


『どうだ?フワフワのモフモフになっただろ?汚れも落ちて毛艶もバッチリじゃないか?』

『・・・エドガー、アンバー綺麗?』

『おう!綺麗だぞ!』

『そう・・・また、やってね』


アンバーは綺麗になったのが嬉しいようで、リクエストまでしてきた。

俺は勿論、了承しておく。


さて、良い時間になったんだが、ガルさん達はまだ帰ってないみたいだし、先に食事を摂ってしまうかな。


夕食後も待っていたのだが、彼等が帰って来る様子は無く。

流石に、明日の朝には出発する予定もあるので、帰るのを待たずに就寝することにした。


アンバーは、ブラッシング以降非常に機嫌が良くて、今も俺の腕を枕にして寝てる。

枕にされてない方の手で頭を撫でてやってるのだが、喉のゴロゴロ音から機嫌の良さが伝わってくる。


『アンバー、明日から五日間外で野営するけど、やりたいことはあるか?』

『ちょっと運動不足。狩りがしたい』

『ああー、確かにそうだよな。分かった、良さそうな所に拠点を作ったら狩りに行けるようにするよ』

『良かった。動かないで食べてばかりだと太りそうだった』


猫が肥満を気にするとか、思わず吹き出しそうになるのを必死に耐えた。

折角機嫌が良いのに、俺が笑ったりしたら途端に機嫌が悪くなりそうだしな。


そんなのんびりと時間が過ぎる内に、俺は自然と寝落ちしていた。



翌朝、起床して直ぐにガルさん達を探したが、どうやら昨日は帰って来なかったようだった。

流石にどこにいるかは分からないし、態々調べるほどでも無いだろう。


彼らも俺が今日から街を留守にすることを知ってるんだし、問題無いはずだ。


そう考えて、朝食後に荷物をチェックしてまとめた。

そのまま宿を出て、街も出る。


ガルさん達が行動するだろう東西と北側は目撃される可能性が高いから却下。

南東方向は帝都の方向になるので人の往来が多そう。



なので、向かうのは南南西の方向だ。

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