第83話
面倒なことになりそうだけど、聞かない訳にいかないし・・・どうしようか?
そんな風に悩んでたんだけど、礼拝所を出ると向こうから話し掛けてきたよ。
「礼拝は終わったのか?今うちのギルドは立て込んでてな、ボンゴの件は後で処分を連絡するから待ってくれねぇか?」
何とも都合良く話を振ってくれるんだな。
まあ、このタイミングに乗るしかないだろう。
おいおい、何の問題があるのか知らんが、俺への傷害未遂より優先するのか?
そうなら、理由ぐらい聞かせてもらわんと納得はできないぞ。
これぐらいは普通の要求だろうと思うんだが、どうもギルド長は苦い顔をしてる。
「ええいっ!面倒臭せぇな!いいか、説明してやるが他言無用だぞ!住民が不安になるからなっ!」
ギルド長は、そう言って説明を始めた。
漁業ギルドが関係してる時点で、湖での漁の関係だとは思ってたが、内容はなかなか厳しいものだった。
湖は二つの領にまたがっていて、七つの漁村と二つの街が湖に面している。
ことの起こりは少し前、一番東の漁村で魚が全く獲れなくなった。
今までも不漁の時はあったが、全く獲れないなんてことは起こらなかったそうだ。
そこで終われば問題になりはしなかったのだが、時間が経つと不漁の場所が拡がっていたそうだ。
徐々に拡がり、今では五つの漁村と一つの街で漁ができない、しても獲れない状態らしい。
このままでは湖全体に範囲が拡大する可能性がでてきたことで、慌てているらしい。
他の村や街では原因も分からず困っているようだが、ギルド長は何か心当たりがあると言う。
それは湖の主、または守り神と呼べる存在のことだと言う。
・・・守り神って、そうなのか?
湖の中、このナイフォードの街に近い場所に小島があるそうだ。
そこは普通なら、神域として誰も近付いてはいけないことになっているらしい。
そこが神域である理由を代々ギルド長だけが聞かされているようで、そこに主とか守り神とか呼ばれる存在がいるかららしい。
ああー分かったよ。
まんまじゃん!
それを俺が解決しろってことかぁ。
それは領主に伝えるのか?
「しない訳にいくかぁ?無理だろ。今、至急で面会の手続きをしてるんだ」
なるほど、そう言うことなら処分の連絡は待とう。
俺だけの話より、よっぽど重要だしな。
「ありがたい。この問題が片付きさえすれば、俺のギルド長としての
うん、このギルド長のことが少し分かってきたな。
豪快だけど責任感はありそうだし、信用できるだろう。
もし約束を破られたとしても、どうにでもできるだろうしな。
俺は、その申し出を了承してギルドを出ることにした。
ここにいても、俺がクエストのことを話せない以上、何もできないからだ。
それよりも気になる事があるし、アンバーに聞きたいことがある。
『アンバー、そこの湖に神獣がいるらしいんだが、知っているか?』
『湖に神獣?・・・神獣はいないと思うけど?この辺の海や湖なら眷族のビュルギャかなぁ?会ったことは無いけど父様から聞いたことがあるよ』
神獣じゃなくて眷属?
眷属って何だ?
『下級の神のような存在です。先程は説明できませんでした』
『何か制限があったのか?』
『その通りです』
なるほど、神の名前を呼ぶことは不敬に当たる。
ビュルギャは名前であり、下級とは言え神の眷属となれば、名前を呼べない。
でも、クエストに名前があるとなれば、眷属を神獣とすることでギリギリ網を潜り抜けたって感じだろうか。
アンバーが告げたことで、制限が解除されたと言うところだろう。
『じゃあ、アンバーに質問だ。その眷属って病気になるか?』
『えー、神獣や眷属は病気になんかならないし、毒も効かないよ。神の毒なら別だけど』
ほう、病気にはならないんだな。
で、神の毒以外の毒も効かないと。
ってか、神の毒って何だ?何か背中がゾクゾクするんだけど。
さて、そうなると俺が思い付く可能性は二つ。
一つは、他の神のような存在との争い。
もう一つは、神の毒の症状では無く何かしらの原因で体調を崩してるとかかな?
で、一つ目は無い。
だって、相手が神のような存在なら、俺じゃあ解決できないだろ?
ってことで、自然と二つ目が残る。
しかし、神の毒って人間の俺に解毒できるんだろうか?
クエストの内容的に言ってできるってことだろうから、可能ではあるんだろうけど。
そうなると必要なのは、本人(人では無いけど)の状態を確認しないと、何をして良いのか判断できないってことだな。
・・・ナイフォード侯爵に頼んだら指名依頼出してくれるかな?
あーでも、理由を説明できないしなぁ。
しかたない、独自に調査してみるかな。
ホントは小島に行って見るのが早そうだけど・・・難しいだろうしな。
『エドガー、島に行きたいの?』
『行きたいけど、漁業ギルドがなぁ』
『アンバーに乗れば?』
『乗るって、島は湖の中に浮かんでるんだぞ』
『いっぱい食べて、空中を走って行けば良いんだよ』
『そうか、なら後で頼むかもしれないから、その時はよろしくな』
えーっと、アンバーのスキルっていっぱいあり過ぎて憶えてないんだよな。
改めて調べて、嵐風魔術師スキル、立体機動スキル、空中跳躍スキルの辺りが空中を走るのに有効そうだと判断した。
つまりアンバーが言う通り、空中を走れると判断したってことだ。
なら直ぐに動きたいところだが、流石に陽のある内は目立つから、やるなら夜だろう。
それに、アンバーが言ってたように腹が減るんだろう。
たぶんスキルを乱発することになるからだと思うし、食事の用意をしてやらなければ最悪途中で湖に落ちそうだ。
そうなると、まずは食材を集めて、宿に今晩は帰らないことを伝えて、外に出て野営の準備をして、それで食事かな。
で、夜になったら小島に渡って原因を探るって感じの予定だな。
じゃあ、まずは食材を買いに行くか!
あれから準備を整えて、湖の北側の街道から外れて湖沿いに移動している。
そろそろそれなりの距離、街道から離れたから、野営の準備をしても良いだろう。
水際から少し離れた、木々が密集している辺りを拠点として野営の準備をする。
準備っていっても、ただ火を
食事の準備をしながら、目的の小島を見てみる。
たいして大きくもなく少し木が生えている程度である以外のことは分からない。
さっきアンバーにも確認したが、神獣や眷属らしい気配というか存在感みたいなものも感じられないらしい。
アンバー曰くは、この距離なら気配を隠しても何となく感じ取れるはずらしいが、それも感じられないのはおかしいんだと。
俺は自由に生産職がしたいんだけど、何故かトラブルに巻き込まれるよなぁ。
さてはて、あそこに何が待っているやら。
あー、嫌だ嫌だ。
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