第46話
トライデルフト帝国に行く事を決めたが、手持ちの地図だと距離までは分からない。
分かるのは、帝国までの道中に街や村が六つある事と、たぶん国境?にあたる所にも街があるって事ぐらいだ。
手持ちの食料が十五日分程度なので、距離によっては途中で補給が必要になる。
まあ、適当に獲物を狩るって方法を取ればもっと持つんだろうけど。
取敢えず、次の街「ゴルーブ」まで行ってみる事にする。
そうすれば、そこまでの距離や日数で地図上の距離の概算ができるだろう。
それに余裕を持つためにも途中で狩り易そうな獲物も探そうか、俺の戦闘訓練になるしな。
そこまで決まれば後は寝るだけ。
とっとと寝るに限る。
まあ、寝るといっても熟睡する訳じゃ無いけどな。
二人に散々やられたんだよな、睡眠訓練・・・
まだ完全にはできないんだけど「寝る時は半分だけ起きてろ」って良く分からない事を言われたんだ。
で、詳しく聞けば、熟睡したらダメで、寝てる時も意識の一部だけは起きているような感じにして、異変があったら直ぐに起きて行動できるようにしないと、一人での野営は失敗するって事だった。
この場合の失敗は、即、死亡らしい。
なんで、仮眠を取らされ、完全に寝入ると頭を殴られるってのが二晩続いたんだ。
最終的には、完全では無かったけど取っ掛かりは掴めた感じになった。
「慣れて自然にできるようになるまでは」と教えられたのが、今寝てる斥候用の空中での寝床だ。
「慣れるまでは平地では寝るな!」って厳しく言われてる。
「斥候用の寝床の仕掛けが無いんなら、二・三日なら寝るな!」とも言われてる。
まあ、散々一人旅の厳しさと過酷さを聞かされたので、無謀な事をしようとは思ってない。
二人が、今までやってきた斥候の仕事に比べたら楽なんだし・・・
翌朝は早くに起き出し、陽が登り始める時間に荷物の片付けを始めた。
街道に向けて足を進め掛けたが、何か嫌な予感がするな。
二人も言ってた、予感、勘、感じっていう感覚は大事にしろって。
結構馬鹿にできないらしい。
なら、このまま森を横断しよう。
当初の目的だった距離の確認はできないけど、面倒事は避けた方が良いしな。
何年も経ってからこの時の予感が当たってたのを聞くんだけど、領主が軍を街道に派遣して隣街までを捜索してたんだって、セーフ!
森を警戒しながら進む事二日、俺は森の端から隣街を見てる。
街道を進んでたら一日で着けたんじゃないかな?
森の中は平坦な道なんて無いし、木々が邪魔して真っ直ぐ進めないし、割と時間をくってるはず。
警戒してても、三度アサルトラビットに襲われたし、その処理とかしてたから余計に時間が掛かってるよな。
ゴルーブは、トリニードより少し小さい感じだな。
まあ、領主の住む「領都」と代官の住む街が同じ規模って事はないな。
まだ食糧はあるけど、ゴルーブに寄るか?寄らないか?
・・・止めよう。
ついでに、次の村も飛ばして、その次のルーニアの街に向かおう。
何故って?予感?かな。
次の街は隣の領になるはずだし、そこまで行けばトリニードの領主も手は出してこないだろうって事だ。
えーっと、街道を使って約一日って事は、ルーニアまでが約二日。
森を通るなら、最低でも倍の四日、余裕をみるなら五日かな?
手に入る素材を見ても蜘蛛系や虫系の魔物はいないみたいだし、用心するなら蛇系だけ。
比較的安全に行けそうだ。
水場の情報もあるし、特に困る事はないはず。
さて、今日の寝床を探すか!と、楽には行かなかった。
ゴルーブには三本の街道が繋がっているが、帝国側に行くのに街道を一本横切る必要があった。
ただ森を縦断してる街道なので簡単に横断できると思っていたら、向かおうとしていた森から魔物が街道に出て来ていたみたいで、その魔物と冒険者が街道で戦闘を繰り広げていた訳だ。
魔物はロックベアーという身体の一部に岩の様な外殻を持つのが特徴で、通常の剣や槍では外殻を貫く事はできないらしい。
冒険者の半分ほどが大きなハンマーを持ってるのは、その対策だろう。
盾を構えた前衛がロックベアーの攻撃を防ぎ、そこでできた隙にハンマーで殴り付けるって戦法だな。
ただ、相手がデカイせいで有効な攻撃が決まらず、なかなかに戦闘が長引いてる。
結局、戦闘が終わるまで待つ事しばらく、陽が傾き少し薄暗くなり始めたところで冒険者達がロックベアーをデカイ荷車に載せて帰って行った。
それを見送ってから俺は行動を始めたんだが、随分遅くなったな・・・
ちなみに、移動できるようになってから気付いたんだけど、俺って隠密スキル持ってたから冒険者やロックベアーに見付からずに街道を横切れたんだよな。
かっー!失敗したー!
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