第25話

ドモルガー鍛冶店を出て通りを歩きながら次の予定を考える。


まず、ギルドに帰って冒険者登録だな。

次に、部下の仕事のチェック。

最後に、明日の用意。

・・・リザベスさんに素材採取の件連絡した方が良いかな?


まあ、ギルドに着いてから考えるかぁ。

考える必要は無かった、だって受付カウンターにリザベスさんがいるから。

最近は忙しくて受付の仕事はしてないって言ってたのに・・・


と、そんな事を今考えても遅い。


「あらっ!エドガー君にデズット、休みに何か用?」

リザベスさんの疑問は至極当然で、更に二人でいれば一人が言葉に詰まっても、もう一人が答えるのも至極当然だった。


「ああ、リザベス。エドガーが薬草採取をやってみたいんだってよ。で、冒険者登録をするために今武器を買ってきたところだ」

・・・言っちゃったよ。

あっ!リザベスさんの目が笑ってない・・・


「エドガー君、どう言う事かしら?少し向こうで話を聞かせてね」

何故か背中が寒くなって、身体がブルッとする。

デズットを思わず掴んで離せなかった。


「おいっ!エドガー話して無かったのか?」と小声で聞かれ、小さく頷く。

「こうなったらしかたねぇ、大人しく従っとけっ!」と小声で指示される。


「デズットも付き合ってくれるか?」

「乗り掛かった船だ、付き合うさっ!」

そう言ってくれたデズットとリザベスさんが待っている部屋に歩き出した。



話し合いの時間は長くは無かったが、リザベスさんが納得するまで背中に何か冷たい物が当てられたような感覚は無くならなかった。

デズットがドモルガーさんの俺への評価を伝え「俺が一緒に行動して実力を見る」と言ってくれたのが決めてだったみたいだった。


「そこまで言うなら、エドガーの冒険者登録をしましょうか。でも、エドガー。あなたは今部下を五人持っているんです。その人達が、あなたの手を離れるまで責任があるんですからね。危ないと思ったら直ぐに戻ってきて下さいよ」

リザベスさんの言う事は当然の事で、俺に自覚が足りてなかったんだと反省する。

一時的とはいえ、あの五人に仕事を教える役目を与えられているのだ、その責任がある事に考えが及んでなかった。

単純に戦闘系のスキルを使う可能性があるかも?という理由で思い付いただけだったので、余計に自分の考え無しな行動に反省しなければ。


なんだかんだと揉めたが、登録もできて採取の予定も決まった。

後は、採取のための道具や布袋を用意すれば良い。

その辺の細かいところもデズットが道具屋に付き合ってくれるらしい。

助かるよ、ホント!



翌朝、ギルドで五人の仕事具合を確認してからデズットと森に向かう。

森は西と東にあって、今回向かうのは西側の森だった。


東側の森は、そのままその向こうにある山へと繋がっているため、魔物の出現率が高いそうだ。

それに比べて西の森は広さこそあるものの、低い丘全体を木々が覆うような場所なため、魔物の数が少ない。

特に街道に近い森の浅い部分は、街の子供達でも採取に行けるらしい。


「今日はエドガーの初めての採取だしな。なるべく安全な場所でやるぞ。といっても、子供達と違ってお前は成人してるからな完全に安全な場所じゃあ無い」

どうやら成人前の子供達が採取できる場所と、成人後の大人の採取できる場所は分けられてるようだ。

そんな事を質問すれば、やはり、その通りだった。

基本的に子供達が採取する場所は、日用的な採取ができる場所で採取できる物も限られていて売れるような物は取れないらしい。

逆に大人が採取できる場所は、ギルドなどに売却できるような物が採取できる場所になるんだとか。

それと魔物や動物の出現する可能性で分けられているんだと。

大人が子供の採取場所で採取するのは、子供と一緒にいる時だけ認められていて、それ以外だと巡回してる街の警邏兵に捕まるみたいだ。

罰金もあるの?マジっ!


で、俺らが向かってるのは大人用で、俺が薬草の採取って言ってたので、それがありそうな場所らしい。

安全性の高い場所ではあるが、採取場所としては割りと奥の方。

魔物の出る可能性は、ある、らしい。


戦ってみたい気もするし、安全な方が良い気もするし、どうなる事か?

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