第17話

話って言っても内容は簡単で、時間もそんなに掛からない。

ただ、内容を理解し易いように少し用意した物があるだけだった。


「おおまかな話は以上ですが、これを見てください」と準備していた物を広げてテーブルに置いた。

何を出したか?って、神殿の見取り図だよ。

まあ、俺の手書きなんで縮尺とか、細かい所は書いてなかったりするけどな。


「マジか?」

「これって、あってるの?」

「これが正しければ・・・」

「・・・楽勝かも?」


なにやら、ブツブツと色んな言葉が聞こえるが無視。

何でか?って、次があるからだ。


「次に、こっちも見てください」って神官の部屋の見取り図(拡大したやつ)も見せる。

更に騒がしくなったけど、それも無視して説明を続ける。


隠し通路の入口の場所

その隠し通路に入る方法

隠し通路の中の様子

隠し通路で注意する事

神官の部屋への入り方

隠し場所の開け方

決行するのに適した日にちや時間

どの位の時間に余裕があるかの予想


最終的な神官の処遇に対する意見


最後のは余計かな?って思ったけど、リスクを減らす必要はあるんじゃないかと思って提案した。

それには賛否両論あるみたいだったけど、決定権はゼルシア様にあるんだし俺に責任は無い。


「予想以上にしっかりした情報だった」と、みなの声を代弁したのは、一人の冒険者っぽい男性だった。

ウンウンとみなが頷いているんだけど『結構適当な図面だぞ』と内心で俺は納得し辛かった。


「エドガー、これは記憶を頼りに書き起こした図面なんだね?」とゼルシア様に問われ頷いて答える。

更に「この前まで十年以上いた場所だし、記憶間違いとかは無いね。長さとかは適当だけど」と付け加えた。


「なら、エドガーの仕事はここまでだわい。ここからは、儂らの仕事だね!」

あれっ?ここまでで良いのか?

図面は結構雑なんだが・・・


「ゼルシア様、手書きの雑な図面だけだし、俺がいた方が良いんじゃないのか?勿論、それ以外に口出しする気は無いけど・・・」


「あんたっ分かってるのかい?危ないんだわい!」

ああー、俺が危険かもって心配してるのか。


「そんなの、話をした時点で覚悟はしてるぞ。別に荒事に手を出す訳じゃ無いし、必要なら行くけど」

もともと行く気だったし。


「分かったよ、必要なら後で声を掛けるわい」

まあ必要無いなら、別に良いんだけど。


リザベスさんに促され、まだ納得できてないが部屋を出る。

そのまま玄関へ送られ「ゼルシア様は、エドガーの事を心配してるのよ」と声を掛けられる。


いや、分かってるけど、あの図面で大丈夫か?俺の方が心配してるんだが?

そんな内心は別に「分かってるんだけど・・・」と語尾を濁した返事を返した。


ゼルシア様次第だしと諦めて、リザベスさんに見送られて屋敷から宿への帰路についた。





エドガーを見送って部屋に戻るとグラブが気絶から目覚めていたわ。

ギャアギャアとゼルシア様達に食って掛かって、何であんなに騒がしいのかしら?

だいたいグラブはマドック様の代理でしかないのに、権限も何も無いでしょう。

それをあんなに騒いで。

マドック様がゼルシア様に吊し上げられる姿が目に浮かぶようだわ、お可哀想に・・・


「ラズーレ、この馬鹿を縛り上げて物置にでも放り込んできな!」

とうとうゼルシア様が切れちゃったじゃない。

グラブも中級の冒険者だって聞いてるけど、上級でも上位に位置するラズーレが相手じゃあねぇ、子供と大人の喧嘩ぐらいの差があるんじゃないかしら?

あらっ、一瞬で終わっちゃったわね。

ラズーレの仲間の、確かボトガルだったかしら、がグラブを担いで行ったわね。


「これだけの情報が揃ってる以上、失敗など許さないわいっ!準備を進めとくれ!」


おおまかな話し合いは終わってた見たいね。

みんなが一斉に立ち上がって部屋を出て行くわ。


「リザベス、エドガーは?」

「きちんと送り出してきましたよ。それで、どんな話になったんですか?」

「ほとんどエドガーの言ってた通りだわい。何者なのかね、あの子は?」

「良い子ですよ。孤児だなんて思えないくらい」

「そうだねえ。余り危ない事はさせたくないんだけど仕方無いわい」

「えっと、エドガー君も連れて行くんですか?」

「隠し通路の仕掛けを見付けるまでだわい」

「分かり難いって言ってましたね」

「そこで手間取ると後がダメになる可能性が高いからだわい」

「確かに、その可能性はありますか・・・」


「何とか神殿の裏の尻尾を掴まないとだわい」

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