第4話

孤児院にいられるのも十三の月まで。

年末には成人の儀式がある。

じっさいは一の月が誕生月なのを誤魔化して十三の月にしてるから、とっくに十五歳にはなってるんだが。

成人の儀式をしてないからだろうけど、スキルを余分に得る事ができてラッキーだった。


色々なスキルを得る事ができ、それが大量だった事でスキルの合成もできるだけはやった。


~下級職~

農業、裁縫、清掃、漁師、猟師、運搬、木工、加工、飼育、売買、料理


11種類のスキルを三段階目まで合成してたら、下級職を全てコンプリートしてて"下級職スキルマスター"ってのに全部が統合されてた。


~中級職~

槍技→槍士→槍術師


闘技→闘士


土魔法


火魔法


水魔法


風魔法


調薬→製薬→錬金術師


言語→言語学→言語学者


隠身→隠者→隠密


~固定スキル~

猛進


というような結果で、成人までに入手できたスキル145個は11個に集約されたんだ。

集めてる途中はホントに保管できるスペースがギリギリで、上手く合成できてなかったらスキルをストックできてなかった可能性もあったんだ。

最初に農業が農業2になって、次に農業3になったら、それから何故か農業のスキルが出なくなったんだ。

たぶんスキルの上限になってたからだと思ったんだけど、確証は無い。


それからも下級職をマスターしたら下級職が出なくなったからラッキーって感じだ。

下級職が出なくなった事もあって、中級職の戦闘スキルや魔法スキルが出た時は飛び上がって喜んだんだ。


ほかにも色々違うスキル同士とかでを合成できるんじゃと試してみたけど、ダメだった。

まあ中級職スキルも手持ちのヤツはダメだったし、異種の合成は無理なのかも。


そうそう、スキルの事を色々聞いて回って分かった事がある。

例えば料理。

真面目にスキルを上げる努力をしていても、上限まで上げるのに三十年近く掛かるらしい。

で、そこから推測したんだが、料理スキルを三つ合成すると料理2になって、料理2を三つ合成すると料理3になる。

そこで上限なんだが、計算すると料理スキル9個分になる。

3年に一つ分の料理スキルを得られるとすれば、二十七年で上限に達するんだ。

そう考えると上限までに三十年近く掛かっている事になる。

何で3年か?って、見習いの料理スキル持ちが普通に仕事ができる様になるのに3年掛かるらしいからだ。


そう考えた時、俺の枠外スキル【ストッカー】が絶対に人に知られてはいけないスキルだ、と改めて感じたんだ。




俺は「ワルダー神官様、長い間お世話になりました」と頭を下げる。

勿論、形式上である。

心では、神殿の横暴を告発する気マンマンだ!

隠し帳簿や孤児の売買書類、金銭の在り処など全部調査済みである。

告発用の手紙は紙や筆記用具を買ってから書く予定。

金は、ワルダー(悪徳)神官の所から、孤児院の運営費から中抜きしてた分を金貨二枚分だけ強制返却して貰ってきた。


ワルダー(悪徳)神官は「エドガー、あなたはスキルを授かりませんでしたが、十分にやっていけると思います。挫けずに頑張りなさい。金銭的な援助はできませんが、相談にのる事はできます。何時でも訪ねていらっしゃい」と善良そうで偉そうなもっともらしい事を言う。

俺は「分かりました」と答えながら、心では『巫山戯るな!この横領犯が!』と叫んでいた。


他の孤児達とは別れの挨拶はすませていたし、そのまま神殿をあとにし街のギルドに向かう。

目的は四年前に会ったデズットを訪ねる事。

槍術と魔法は使えるが、その能力的なものまでは理解できてない。

四年前に見たような魔物と戦えるか?と聞かれれば「無理!」と答える。

なんで、生産系の職業に就きたいとは思ってる。

ただ、先立つ物は必要なんで、冒険者であるデズットに聞いてみたい事があるのだ。


何を聞くかって?

俺のスキル調薬の上限"錬金術師"で作れる回復薬の値段や需要。

それから作るための許可や申請が必要かどうか?って事だ。

あっ!もう一つ!

回復薬の材料である植物を採取できるか?も確認する必要があったな!


街のおばちゃんに聞いた感じだと、特に許可や申請は必要なさそうだったが、単に知らなかったって可能性は大。

店舗を構える予定では無いから、問題無さそうだけど・・・確認は大事だ。


「おっ!冒険者ギルドだ!」と見えてきた建物に急ぐ。

時間的に昼も近いからか、人の出入りは無いけど・・・中は賑やか?・・・どっちかって言うと騒がしいし五月蝿い?

入った事がないから、中の様子は分からん!

入るしかないだろう!


根性決めて扉を開く・・・酒臭い!

酒場と間違えてないよな?と確認するが、やっぱり冒険者ギルドだった。


えっ!ギルドの中に酒場があるの?

なんで?

酒なんて飲んでたら冒険者の仕事できないだろ?

意味がわからんぞ?

これもデズットに聞いてみるか?


再度入ってみるが、臭い。

臭いを我慢して見れば、正面にカウンター、左手に掲示板、右手に・・・やっぱり酒場があった。

酒場も掲示板も用が無いので、カウンターに向かう。

三人の女性職員がいるが、左側の若い二人より右側の年配のお姉さんに話し掛ける。

・・・言っておくが、自分の年齢より年上の女性は全て等しく"お姉さん"だ!

神殿に来るおばちゃん達が懇切丁寧に教えてくれた。

とても逆らえるような雰囲気じゃなかった。

ニコニコと話す姿に冷や汗が止まらないって経験は二度としたくない!

っと!嫌な思い出を思い出したぜ。


「お姉さん!聞きたいんだけど?」と明らかに亡くなった母より年上であろう女性職員に声を掛ける。

「私?」との返事に「ええ!デズットさんって何処に行けば会えるか知りませんか?」と質問した。

「あのーどんな関係かしら?」と少しだけ訝しげに聞かれたんで、素直に「前に魔物を見せてもらった事があって、その時に「成人したら来い」って言われてたんです」と答えた。

「そう。今は依頼を受けて街を出ているわ。たぶん夕方には戻ると思うけど?どうする?」

「少し質問しても良いですか?」と聞けば「何かしら?」と首を傾げる"お姉さん"。

『若い時は凄くモテたんだろうな!』と納得できる笑顔と仕草に『惜しい!』と思ってしまった。


「回復薬の値段って高いですか?」

「そうね。高いわね。ここでも販売はしてるけど、低級の回復薬でも銀貨二十枚。中級だと金貨一枚。上級はギルド長の許可がないと販売できないけど、金貨十枚はするわよ」

「えー、高っーー!」と、あまりの高額具合に声が出た。


金貨一枚で、一般人二人が一ヶ月生活できる。

低級が銀貨二十枚って事は、もし三本買ったら?その金額で俺が一ヶ月以上生活できるんだぞ。

高過ぎだろ!


「そうなのよ!高過ぎると思うわよね。でも、この街の調薬スキル持ちって三人しかいなくてね。三人で作れる量じゃあ必要な数に足りないのよ。そうなると、自然と高額になってしまうのよ」

その言葉に思わず考え込む。


不味いな、予定が狂いそうだ。

そんなに高額な回復薬を作れる成人したばっかりの俺って・・・トラブルに巻き込まれそうじゃないか?

言えない、回復薬が作れるなんて・・・


「どうしたの?回復薬が必要なの?」と心配気な"お姉さん"。

「そういう訳じゃ無いんだけど、興味があって聞いたんです。ただ、思ってた以上に高くて驚きました」と答える。

「そうよね、驚くぐらい高いものね」と同意する"お姉さん"が、ふっと俺の背後に視線を向けた。

「あっ!デズットが帰ってきたわよ」と言われ、俺も後ろを振り向く。

そこには逆光の中、丁度入り口を入ってきたデズットさんの姿が見えた。


「デズット!お客さんが待ってるわよ!」と手を振る"お姉さん"。

「リザベス、依頼終わったぞ!で、客って誰?」と答えるデズット。

「この人よ!」と俺を紹介する"リザベスお姉さん"。

ってか、"お姉さん"リザベスって名前なんだ。


「んっ?誰だ坊主?」


・・・覚えてないのかよーーー!

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