四色目 緑

まるで危険を知らせるかのような黄色だった綿。

しかし何も起こらず、わたしはいつも通りの日々を過ごしていた。

大好きなぬいぐるみに囲まれ、幸せな生活を送っていた。

あれから、例のぬいぐるみを持ち歩くことはなくなった。

不気味に思えて、手元に置いておくのが不安になった。


しばらくたった時、棚の上にあったぬいぐるみが移動している気がした。

目についておくところにはあった。だから違和感を感じることができた。


おそるおそる胸のあたりを見てみた。

前と同じ部分だ、また糸がほつれている。

私は裁縫道具を取り出し、ゆっくりと、ほつれた部分を開く。


───緑だ。


優しい、緑だった。

良かった。とその時は思えた。


後になって、色が変わったことに対して不気味さを感じ始めた。

今思えば初めからおかしかったのだ。綿の色が変わるなど……。

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