第32話

 優奈が小さく身悶えた。その反応を見て、智樹はさらに大胆になる。


 人差し指を膣内に入れると、中を掻き回した。同時に親指ではクリトリスを刺激する。


「やぁん!」


 優奈が高い声で鳴く。それでも彼女は腰の動きを止めなかった。それどころか、より激しく動かしてくる。その動きに合わせて、智樹は自分も腰を動かし始めた。二人の性器が触れ合うたびに快感が生まれる。その度に二人は甘い吐息を漏らした。


 やがて限界が訪れた。


 智樹は最後の力を振り絞ると、一気に昇りつめた。


 その直後、優奈もまた達する。


 二人はしばらくの間、荒い呼吸を繰り返していたが、そのうちどちらからともなく唇を重ね合わせた。舌を絡ませ合いながら唾液を交換する。しばらくしてようやく満足すると、ゆっくりと口を離した。銀色の糸が伸びて切れる。


 それから智樹は優奈を見つめた。


 優奈も見つめ返してきた。その瞳は潤んでいる。


 二人ともまだ余韻に浸っていたが、先に智樹の方が正気に戻った。

彼は慌てて起き上がると、ベッドの上で土下座をする。


 しばらくそのままの姿勢でいると、頭上から呆れたような溜息が聞こえてきた。


 恐る恐る顔を上げて様子を確かめる。


 そこには姉の姿は無かった。


 自分も、さっきまで見ていた夢とは違って、服を着ている。夢精もしていない。


 ほっとした反面、少し残念にも思った。


「夢か……」


 そう呟いて時計を見る。時刻はまだ六時前だった。いつもなら起きる時間だが、今日は日曜日だ。もう少し寝ていてもいいだろうと思い、再び横になった。


 しかし眠気が一向にやってこない。目を閉じても羊を数えるように脳裏に浮かぶのは夢のことばかりである


「やばいなあ、おれ」


 智樹は独り言ちた。どう考えても自分は姉に欲情している。それも実の姉に対して。


 でもこのまま放置しておくわけにもいかない。何か対策を考えないと大変なことになるかもしれないのだ。


「このまま一緒に暮らしていたら自分をコントロールできなくなる」


 いずれ、姉を襲ってしまうだろう自分が怖かった。


 そうなったとき姉はどんな目で自分を見るだろうか? 軽蔑されるだけならまだマシだ。最悪、憎まれてしまうかもしれない。それだけは何としても避けたかった。


「もう、家を出るしか無いのか?」


 だがそんなことをしたら、姉との暮らしは終わってしまう。

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