第36話
「美空くんには、私から伝えておく」
「…はい」
藤原くんは複雑そうな顔をしている。急だからだろう。
さて、今度は準也にも連絡しよう。藤原くんは事務所から立ち去って休憩に入るところだ。
「やっと電話に出たな」
「なにー、おじさん」
「準也のカメラマンが決まった」
「え?おじさんなの?」
「違う。藤原くんというカメラマンだ」
「へー、いつから?」
「来週には」
「まじー?美月くんに早く服作ってもらわなくちゃー!足助さんのデザインはもうできてんだよー」
「…そうか。仕事が早いな」
「もー忙しくてさ!おじさんからのメール見てなかったかも」
「…電話も電源切ってたな」
「撮影してるからー」
「なにも聞いてないことばかりだ。必ず決まったことは連絡してくれ」
「ぶー!忙しいからそんなのめんどくさい」
「…藤原くんにやってもらうことにするか」
「おじさーん、社長にメールの返事遅いって言って」
「準也、日本語で打ってやれ」
「えー、うそーわかんないの?えー」
「それも藤原くんにやってもらおうか…」
「その藤原くんこと頼りにしてるんだね」
「期限は守る人間だからな」
「ひどい!俺が守れないってことじゃーん」
相変わらずうるさい。
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