第24話 分業化?
『主様はアホですか?』
プリちゃんから大絶賛されてしまった。照れるぜ。
『主様はアホですね』
断言されてしまった。ちょっと泣きそう。
『なぜ火縄銃を十挺も買っているのですか? しかもまた値段を聞かずに』
「の、ノリと勢いって大切かな~なんて」
『主様はアホですね』
そろそろ泣くぞ?
まぁしかし後々十挺手に入ることだし、今回入手した火縄銃は(装飾もいいし)贈り物として使うことにした。もちろん一つは私の手元に残すけど、残りのうち一つは父様に、もう一つは(本能寺ファイヤーが恐いので)光秀さんに送ってご機嫌取りをしておいた。
父様は『娘からの初めての贈り物が火縄銃か……いや嬉しいのだが、もうちょっとこう……』と大歓喜していたし、光秀さんはオモチャを与えられた子犬のように目を輝かせていた。
『明智光秀の鉄砲の腕前は有名ですからね。朝倉義景の前で腕前を披露した際はまさしく百発百中。一説では堺で修行したとか、斎藤道三から習ったとかで』
明智のみっちゃん、色々とやり過ぎである。
まぁとりあえず、喜んでくれたみたいなのでこれで本能寺フラグは薄まっただろう。そうだと信じたい。
『そもそも困らせるような言動をしなければいいのでは?』
マグロは泳がなければ死んでしまうのです。
◇
生駒家宗さんたちは商取引のために飛騨へ向かった。
今井宗久さんが飛騨に行くということで『まさか白川郷で硝石の量産!?』と期待しちゃった私だけど、よく考えればこの時期だとまだ硝石(火薬の原料)の国産化はされていない。
硝石の作り方は何パターンか知っているし、火縄銃も買っちゃったので今度作ってみよう。ニオイがきついけどそこは風魔法で空気の流れを変えちゃえば問題なし。魔法って便利だね。
家宗さんたちは四日ほどで帰ってくるそうなので、それまでにできるだけの薬を作ってしまおう。そして現金を手に入れよう。
とりあえず、戦傷者の中で足を失った人は薬研を使って生薬をすりつぶしたり、簡単な加工をしてもらうことにした。座りながらの作業なので足が不自由でも何とかなるだろう。義足に関しては職人さんと相談の最中だ。
片腕のない人は生薬を倉庫から運んできて薬研を使っている人の元へ運んだりする仕事を任せる。他にも障害の程度によって薬を入れる紙袋を作ってもらったり山へ行って薬草を採ってきてもらったりといった仕事をお願いしてみると、何とか全員にそれっぽい仕事を与えることができた。
ちなみに薬研は本来なら石工あたりに注文するのだけど、今回は時間がないから河原で拾ってきた岩を風魔法(父様を暗殺しようとした足軽たちの槍を切り落としたアレね)でそれっぽく成形したものを使ってもらっている。
ただ、やはり使い勝手は悪いからあとで(金銭的な余裕ができたら)ちゃんとした石工に作ってもらおうと思っている。
別に薬の製法を秘密にするつもりはなかったのだけど、父様から『戦傷者を雇い続けたいのなら秘密にした方がいいぞ』と助言された。薬の売り上げが減ったら戦傷者たちが困るので助言を受け入れることにする。
というわけで現在の薬の製造は秘密保持も考えて、
・生薬を加工する人は1品種だけ担当する。たとえば消炎・解熱などの作用がある黄芩を加工する人は黄芩だけを加工し、附子を加工する人は附子だけを担当するとか。
・各人が加工した生薬は調剤担当者たちの元へ集められ、調剤。ちなみに調剤担当者は父様から派遣してもらった。信のおける人物ばかりらしい。
・乾燥などの加工が必要な場合は私が魔法で行う。ただし家宗さんたちが四日後に戻ってくるための急ぎの処置であり、余裕があるときは自然乾燥させた方がいいだろう。それ自体も仕事になるし。
と、いう感じにしたところ、期せずして分業化っぽくなった現状である。一人で生薬を持ってきて、加工、また別の生薬を持ってきて加工、混ぜて固めて薬にして――とやるよりは効率的だけど、まぁケガのせいで思うように身体が動かない人も多いので生産性は普通と同じか少し劣る程度になっている。
薬を作り始めた初日は薬研などの道具の使い方を教え込んだり生薬の加工方法を紙に書き記している間に終わってしまった。よく考えたら薬作ってない。
二日目からは実際に生薬を加工させてみて、とにかく練習。そして指導。
三日目になってやっと満足できる加工ができるようになり。四日目にはぼちぼちと薬が完成してきた。
『四日でここまで鍛え上げるとは……主様って教え方がうまいのでしょうか? いやしかし魔法の訓練は『ほあぁあ!』でしたし、うまいわけじゃないですよね……』
なにやらプリちゃんが悩ましげにつぶやいていた。きっと私の優秀さを褒め称えているに違いない。
初心者が作った薬なのでちゃんと目的とした効能になっているか一応
その日のうちに家宗さんたちは飛騨から帰ってきて、すでに薬の量産体制を整えつつあることに目を丸くしていた。
どうせならより多くの薬を持ち帰りたいとのことだったので、家宗さんたちはもうしばらく美濃に滞在することになった。
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