禁足地に吹く大風は、即ち清々たる青き嵐に

長く勤めた会社の退職,母親からの配慮の
ない干渉、婚約者からの一方的な破棄。
複雑な事情や環境にも負けずに健気に
自分『自身』を護ってきた主人公の翠。
ひょんな事から、彼女のもとに一見すると
不可解なバイトの話が持ち込まれる事から
彼女の人生は大きな転機を迎える。

一族が古から守って来た土地の開発。

    禁足地
         その河の中洲には、
彼女の 一族 しか足を踏み入れる事は
 かなわない。

開発を依頼された不動産会社の副社長、尊
彼の一族も代々呪われた宿命を負う。

多くは書かない。何故ならば是非とも自ら
この物語を読んで様々なものを感じるのが
最善だから。そして、ザワザワと葉擦れの
音を聞き、何者かの気配に怯えて欲しい。
一筋縄で行かない怪異の恐ろしさと、翠の
健気で真っ当な強さ。胸の高鳴る冒険の
物語でもある。

そして、吹き抜ける 風 が齎すものは
一体何なのか。

一生懸命に生きるもの、真っ当に何かを
希うもの、そして怖い話を心底望むものを
決して裏切らない作者の心意気に感動すら
覚える。


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