132話 迷走する茜
茜ちゃんのターン
◇◇◇
えっと、あれ?
あの二人って、
タロちゃんの助っ人、私の救援活動に参加しようとしてくれた二人をまじまじと見てしまう。
いつもヒトの良さそうな柔らかい表情の
冷静沈着そうで、たまに厳しい顔をする
うん、どう見ても、いつも教室で女子たちが『イケメン』って騒いでる
二人はリアルの見た目のままでキャラクタークリエイションをしたんだ……。
ちょっとだけ、いや、かなり驚いちゃうなぁ。
危なくないのかな。
こんな身元がバレちゃうような事、それこそ今わたしが一方的にクラスメイトだって知れちゃうわけだし。
二人に私もクラスメイトの
「それでこの人が、タロが言ってた初心者さんかな?」
「ア゛ー、タロよ。お前、人助けしてる場合かよ」
「うん、トワさんって言うんだ。いいじゃんか、別に」
タロちゃんがふくれっ面になって晃夜くんの物言いに抗議すると、そんな彼女に対して、教室では冷徹な晃夜くんがソワソワたじたじしちゃってる。
へぇー意外だぁ。
でも、なんだろ……この三人の気慣れた雰囲気、いつも見てたような気がする。
「まぁまぁ、コウもあんまり気負い過ぎずいこうよ。あんな事があったとはいえ、ゲームを楽しむ事を忘れちゃったら、やっぱり精神的にくるものがあるしね」
「そうだぞ、コウ。まったくこれだから鬼畜メガネは」
「おま、なんだと。心配して来てやったのに、こうしてやる」
そう……
晃夜くんがタロちゃんに掴みかかろうとするのを、夕輝くんがサッと間に入って壁になるのを見ながら、ありえない事を考えてしまう。
「おーっと、ストップだよコウ。今は初対面の人もいるし、そのままいくと変態ロリ眼鏡の称号がもらえるね」
そうだね晃夜くん。だって、タロちゃんは幼くて可愛い女子なんだし、そんな子に乱暴はいけないよ。このゲームは性別を変えてのキャラクリはできないはずだし、何よりしっかりと私は現実でもタロちゃんの姿を見てる。
この子が訊太郎くんのはずがない。
でも、なんだか少しだけ引っ掛かりを覚えてしまう……。
だって、晃夜くんと夕輝くんの二人がいるなら、訊太郎くんがいてもおかしくないし。
って、これはもしかして、早くも訊太郎くんと会えるチャンスなんじゃないのかな! でもでも、まだ私は全然つよくなってなんかないし、何もわからないし、お世話されちゃうのも違う気がして……でも二人の繋がりから訊太郎くんを紹介して欲しいし、うーあー。迷うなぁ……。
「あ、そうだ。そろそろ出て来ていいよ、RF4you」
私がまごまごしていると、夕輝くんが右手をサッと上げて誰かに合図を送るような仕草をした。
すると二人の後ろから、スゥーッと影のように佇む青髪の少年が現れる。
「あれ、RF4youも来てくれたのか」
「あぁ、こいつは後からインしてきてな。万が一を考えて、RF4youに潜伏役を頼んでたんだぜ」
「おぉ、『隠密』スキルのレベル上がりすぎじゃないか? でも、わざわざありがとな、みんな」
タロちゃんは青髪の
その人は、夕輝くんや晃夜くんたちとも気心知れた仲のようで、ってアレ? もしかして、このアールなんとかって人が訊太郎くん!?
「閣下のピンチとなれば、喜んで出撃するであります」
「近いから。それ以上こっちにくるな」
タロちゃんが青髪少年に対して、一歩後ずさる。
ん、確かに無駄に近いかな?
「しかし、
「ふつうにキモいから、やめてくれ」
ん……。
見た目は、うん。中性的な美少年って感じだけど……
それにすごく変わった名前だし?
あ、でもでも、たしか
「しかし、閣下。小官は貴方の影となりいつでもどこでも見守りたく」
「ストーカー願望をここで告白してどうするんだ」
でも、こんな変な人が訊太郎くんなはずない……よね?
でもでも、ゲームの中だからありのままの訊太郎くんをプレイしているのかも? 隠された訊太郎君の一部ってこと?
たしかにタロちゃんはすごく、可愛いし。こういう子が実はタイプで……ゲーム内だからなりふり構わずプレイしてるのかな……。
でも、こんな幼い子に変な視線を飛ばしてるなんて……訊太郎くんって……最低。
私だって現実じゃ作ってばかりの自分に窮屈さを感じて、このゲームを買ったようなものだけど。
なんだか、もやもやする。
「RF4you、その辺にしておけよ」
「そうだね、とりあえずここはご新規さんもいるようだし、お互いに自己紹介って事でいいんじゃないかな?」
晃夜くんと夕輝くんがタロちゃんからアールなんとか……訊太郎くんを容赦なく引きはがして、私へと話を振ってきてくれる。あぁ、あの遠慮のない動作、やっぱり気心知れた仲じゃないとできないよね……うわぁ……。
「俺はコウ」
「ボクはユウ」
二人は笑顔で挨拶をしてくれた。
「自分はRF4youであります」
訊太郎くんは変な敬語だなぁ。
なんだかクラスメイトに、こんな喋り方をするような男子がいた気もするけど……誰だっけ。
「とまぁー、三人は俺のフレンドなわけなんだ。で、みんな、こちらにいるのがトワさんで、さっき知り合ったばかりの初心者さんだ」
タロちゃんが私を紹介してくれるのに合わせて、軽くお辞儀をしておく。
「トワです。よろしくお願いします」
なんだか自分のクラスメイト達に、改まって自己紹介をするのは変な感じだった。
「せっかく集まったわけだし、何かするか?」
「そうだねぇ」
「小官は閣下に同行するであります」
そんな三人の言い分に、タロちゃんは『うーん』と唸り、何かいい案を思いついたのかポンッと手を叩いた。
「せっかくだしレベル上げとかどう? トワさんのためにもなるし。どうかな、トワさん?」
「え? えっと……強くなれるの?」
「うんうん、さっきみたいな奴らが現れても戦えるようになりたいでしょ?」
「それは、うん……」
なんだか結局、これじゃあ最初から訊太郎くんたちのお世話になりそうな雰囲気だなぁ、なんて迷っていると。
「みんなはどう?」
タロちゃんの問い掛けにそれぞれが、さっさと賛同してしまう。
「俺は別に構わないけどな」
「レベル上げねーいいよ。この辺だとやっぱり、最近活発な
「任務開始でありますな」
ん、お世話になりっぱなしも悪いので断わろうかな……なんて一瞬考えたけど、アールくんが訊太郎くんの隠された姿だと知って、このまま観察するのもちょっといいかな、とか悪い事を思いついちゃった。学校では見れない訊太郎君の内面をコッソリと覗けるなんて嬉しいけど、今は複雑な気分で……。
そんなもやもやとした気持ちを燻らせていたから、私はすっかりクラスメイトであることを三人に明かすタイミングを逃してしまう。
そうこうしているうちに、方針はすぐに決まってしまい、私たちは先駆都市ミケランジェロを出る事になった。
◇◇◇◇
あとがき
茜ちゃん、訊太郎のことで頭がいっぱいですね。
クラスメイトでもあり、タロとベランダで喋っていた変態ユウジの存在を忘れてしまっていますね。
あの時の二人の詳しい会話内容について、茜ちゃんは後続から来たのでほとんど耳にできていません。
◇◇◇◇
美少女になったけど、ネトゲ廃人やってます。 星屑ぽんぽん @hosikuzu1ponpon
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