103話 恋バナ
「タ、タロさんは好きな殿方とか、いたのですか?」
「へ……? と、とのがた?」
ホモォサムライィ……?
「はい、殿方です。タロさんぐらいの年頃でしたら、たしかに恋のお話には多少の抵抗があるかもしれませんが、私は14歳のレディですわ。相談ぐらい、聞いてあげられますことよ?」
14歳って俺より二つ下なんだよなぁ。
「わ、わたしも天士さまの力になりたいので、好きな人のお話ならいつでも聞きますよ!」
リリィさんに続き、ミナまでもグイッと顔を寄せて割り込んできた。
「ちょっと、二人とも急にどうしたの」
「タロ
おっと、アンノウンさんまでノリ気だったとは……というか、どうしてみんな俺をいたわるような優しい表情をしているのだろうか。
も、もしかして、恋バナというワードで脳裏に一瞬だけよぎった
だとしたら、いけない。
俺は別に同情されたいわけではないし、同情されるような無様な失態は……してない……とは言い切れないけど……。でも、想いを告げたという行為自体に後悔はしてないんだ。
「タロさん、その、大丈夫かしら……?」
「て、天士さま……」
「あ……、いや。大丈夫だよ、何ともないから」
どうしても笑みがぎこちなくなってしまうが、こればっかりは仕方ない。
そう思ってみんなを見渡すと、ミナがリリィさんやアンノウンさん側のシート席にいつの間にか移動していた。しかも、またもや内密会議を始めたようだ。
「天士さまにあんな顔をさせるなんて……許すまじ、ロリゴン共」
「多少はお顔がよろしいからって、
「儚き恋物語もよきかな……いたいけな少女は癒えぬ傷を、二人の美少年に負わされてしまった……あぁ、その可憐な少女の傷を癒すのは誰であろうか」
「よくありません!」
「よくないですわ!」
うぉっ。
急にミナとリリィさんがアンノウンさんに吠えたかと思えば――
「天士さまの一番のフレンドである、私が適任かと!」
「タロさんの事実上のライバルである、
なんだろう。
よくわからないけど、俺の事で揉めているのは間違いない。
が、しかし、容易に近づける雰囲気ではない……。
「天士さま……今でもユウさんとコウさんの事が、その……気になりますか?」
ん、どうしていきなり
「そりゃぁ、まあ……うん」
気にはしてるな。
「どうして、ですの?」
「え?」
聞き返す俺に、アンノウンさんがとどめとばかりに言い放つ。
「気になりしんす」
どうして、と聞かれても……。
いつもお世話になってるし、一緒にいておもしろいし。
付き合いは長いし。
「上手く、言葉にはできないかもだけど……」
女性陣に迫られた俺は、
「助けてもらってるし……昔から一緒にいるし……あいつらとは一番、自然体でいられるから……普通に大事な奴らなんだ」
あぁ、恥ずかしいな。
妙に照れくさい。
「……うらやましいです」
「
ん……?
あぁ、やっぱ女子にとって俺は羨ましいポジションなのか。
あいつらイケメンだしなー。そんな奴らと仲良しこよしなわけだし、女子としては羨望の目で見つめてしまうわけか。
もうちょっとゲーム内とはいえ、イケメン二人をミナやリリィさんに引き合わせた方がいいのか。
なんて事を考えていると、女性陣は再び内緒話に突入していた。
うーん。女子が本気だすと、本当に何も聞き取れないな。
こんなに
「あれは相当に
「でも、ネット内の恋愛ですよね?」
「直接、顔を
「そうですわね……実りませんわよね……タロさんは
「しかし、一つだけ気になることがあるりゃんせ」
「何ですか?」
「昔から一緒にいるとタロ氏は言ったでありんす……旧知の仲とは、どういう事でありしんす?」
「そうですわね……けっこうな年の差もありますし、どうやってお知り合いになったのか気になりますわ」
今度は短いスパンで、女性陣首脳会議は幕を引いたようだ。
再び、三人が俺の方を向いてきた。
「コウさんやユウさんとは、どのような経緯でお知り合いに?」
ふむ。
やっぱりイケメンと知り合うきっかけとか、女子的には知っておきたいポイントなのか。でも、みんなには悪いけど、こればっかりは俺の実体験は役に立たないだろう……。
学校が同じ、クラスが同じって完璧に運だからなぁ。
「リア友なんだ。ふつーに、学校とかで会ったりする感じの」
「「「!?」」」
これにはアンノウンさんすらもビックリしていたようだった。そんなにイケメンとのラッキー遭遇が驚愕だったのだろうか?
三人は開いた口が塞がらないのか、しばらく呆然と俺を眺めていた。
しかし、恒例の女子会(俺を省く)は即座に再開されたようだ。
「これは一度集めた情報を整理する必要がありますね」
「タロ氏は、ユウ氏やコウ氏と同じ教育施設、つまり小中高一貫の私立学校の生徒でありんすね」
「学区内のチャリティー活動、もしくは何らかの校外イベント、文化祭や合同授業など学年の枠組みを超えた行事でお知り合いになったと推測するのが妥当ですわね」
「現実で私より年下の女子を……天士さまを毒牙にかけるなんて……」
「しかも口ぶりからして、頻繁に逢瀬を重ねている可能性もありんす」
「タロさんの日常生活の一部として存在しているわけですわね」
「天士さまの私生活……?」
「非常に気になりますわね」
「罪深いロリゴンの二人を拷問……いえ、尋問して天士さまの生活スタイルを聞き出しましょう」
「それはいい案ですわ。何が好きで何が嫌いなのか、あの美しくほわっとしたタロさんの生き様を、ぜひともお聞きしたいですわ」
「きっと、身もだえするような神々し……可愛らしいに違いありません」
「お二方、話の筋がズレているでありんすよ。問題は美少年二人に心を患っているタロ氏でありしんす」
「そもそも、二人なのですか?」
「確かに、そのへんはしっかり把握する必要がありますわね……」
女子三人組はなかなかに長い会議を終えた後、なぜか姿勢をスッと伸ばし、何かの試合本番前のような緊張感をその身にまとって俺を見た。
自然と俺も身構えてしまう。
一体、何を言い出すのだろうか……。
ゴクリと唾を飲み、俺は彼女たちの言葉をジッと待つ。
それから永遠とも錯覚してしまう程の……いや、実際には5秒と経たずにして、リリィさんがとんでもない質問を投下してきた。
「で、タロさん、どちらが本命ですの?」
「ほ?」
一瞬、彼女の質問の意図が全く理解できなかった。
「あの殿方二人のうち、どちらの方と色恋を
「はい?」
キョトンとする俺に、みんなもキョトン。
「えっえ、え、ええっと、その、ですわね。た、タロさんが、ユウさんとコウさん、どちらの殿方と恋仲にあったのかと、お聞きしているのですわ」
「え!?」
いや、確かに
あれ、自分で思ってみてアレなんだけど、俺の親友たちってスペック高いな。
対する俺はどうだろうか……いや、落ち込むから今はやめておこうか。
今はあれだ、そんなに凄くいい奴らだけど、恋愛感情なんかこれっぽちもない、友達だって伝えることが先決だ。
「あの二人はただの友達だよ?」
だが、三人は疑いの眼差しを俺に向けてきた。
なぜだ。
「天士さま?」
「はいはい、ミナさま」
またまた、俺の意識外からテレポートでもしているのか、気付くと俺の隣へと移動していたミナが、急接近に問い掛けてくる。
「私たちは友達ですよね?」
「ん、まぁそうだよ」
ミナさんの暗く
ちょっと何を考えているのか、わからない表情だ。
「じゃあ、ウソはなしですよ?」
「うん、わかってるよ?」
俺の答えに、ホッと息をつくミナ。
何をそんなに安心したのか、本当に分かりかねる。
「じゃあ、天士さま。質問です」
「はいはい、ミナさんどうぞどうぞ」
俺はミナの至極真剣な瞳に気圧されながらも思ってしまう。
どうしてこんなにも緊張の連続なのだろうか。
ただ、『屋台』で出す商品の案をワイワイと話し合っていく予定だったのに、どこで何を間違えたのだろうか。
そんな愚痴めいた事を内心で吐きながらも、ミナの質問に備える。
「ユウさんとコウさん、どちらが好きなのですか? これは恋愛的な意味で、です」
恋愛……。
……。
…………。
だからどうしてそうなるのだろうか……。
わからないけど、ここは再度、否定しておかないといけない。
今の彼女たちの様子じゃ変な方向へと勘違いしてしまいそうだ。
だから俺は言った。
「いや、普通に恋愛的に好きとかないから」
「本当ですか?」
速攻で確認してくるミナに、俺は平然と答える。
「いや、殿方っていうか。普通に女の子が好きだから」
ごく自然に本音を彼女たちに伝えた。
「「!」」
俺の発言を聞いて、スピィーッと可愛らしく鼻息を上下させるミナ。
リリィさんは、まじまじとこちらを見つめ、ポッと頬を染めて顔を背けた。
二人の様子が若干おかしいなか、アンノウンさんに限っては『はらはらぁ』と、妖艶な微笑で平常運転。
ん、あれ?
当たり前の事を言ったはずなのに、彼女たちの反応はどこか不自然で……って、あぁぁああああああ!
やってしまった!
女性陣の妙な迫力に焦って、自分が今、少女姿であることを素で忘れていた。
「いや、その、えっとこれはですね!?」
外見が女子の恰好で、女の子が好き宣言とかアブノーマルな発言だ。やばいと思い、何か言い訳をしようと口を開きかけたが時すでに遅かった。
「あっら~~んっ♪ 遅れたのは悪かったけどぉンっあちきを仲間外れにして、先に乙女の恋バナとか、いけずぅううん!」
色黒パンチオカマこと三人目の待ち人、ジョージの参戦である。
俺の商売仲間と言えば、ジョージだ。
『
ジョージが加われば、何かいい案が出るんじゃないかと呼んでいたのだ。
「あ、あぁ……遅かったね、ジョージ。大丈夫?」
こうして『屋台』に出す商品会議に足を運んでくれたのは、すごく嬉しいんだけど……言い逃れする機会を逃してしまった俺は決まりが悪い。
「ちょっと取引相手とのぉん、スキル
「ジョージさん……」
「ジョージ氏、良いところにきたでありんすよ。タロ氏の意外な面が発覚したでありんす。ジョージ氏とは気が合うかもしりんすね」
「男漁りの鉄血さん……タロさんはレディに……なるほど……ある意味、道理ですわね」
いや、もう何だろうね。
みんなの認識はこのままでいっか……どうせ、本音ではあるわけだし。
なぜかドン引かれてるわけでもないし、この件は放置というか、なかったことにしよう。
よし! そうと決まれば、ジョージをダシに使って『屋台』で出す商品の話題に無理矢理にでも持って行こう。
「ジョージ、本当に
色黒オカマはこう見えて、
「天使ちゅわんに誘われたからには、余程の事がない限りィンッきちゃうわよぉん☆ イベント当日の『屋台』もぉん、うちの
「そっかぁ、それならよかった。ジョージが俺達の『屋台』に参加してくれるのは、すごく力強いよ」
「あらあらぁん♪ 天使ちゅわんの
「
ジョージの発言に、アンノウンさんが妙に過剰な反応をした。
彼女も裁縫スキルを極めんがために、日夜精進している職人の一人なのだから、
いわゆる業務提携、共同開発みたいなものだろう。
これには言わずもがな、互いの信頼があってこそ成り立つ関係性である。
それぞれにかかる負担は、作る物によって違うし、その
やっと作成できた武器を、レシピがわかった途端『
「おぅ? 銀の嬢ちゃんと
そんな話の流れに入ってきたのは、サービスで『曇りのち晴れジュース』をジョージに運んで来てくれた店主のニュウドウさんだった。
「ちょっと……あなたぁん? だれが、にぃちゃんですって?」
うお、ジョージのこめかみがピクピクしてる。今の兄貴発言が、オカマの沸点を容易く突破させてしまったようだ。これはマズイと判断した俺は、即座にニュウドウさんへと話題を全力で振る。
「美味しい料理を作れるニュウドウさんに褒めてもらって嬉しいです。錬金術士としてニュウドウさんの作る料理には前々から興味津々で、この『曇りのち晴れジュース』なんかもどうやって作ったのかなーってずっと感心してました!」
「お、おうよ……そりゃあ、嬉しいこったぁ。そぉーいやぁ、銀の嬢ちゃんは錬金術士だったんだよなぁ……」
ジョージの突き刺すような視線を浴びながら、ニュウドウさんがビクビクと答えてくれる。その針を刺すようなオカマの冷たい精神攻撃に屈したのか、彼はあたふたと痛い空気を入れ替えるようにまくしたてる。
「そうだってぃ! ここはよぉ、こんなに客を集めてくれた嬢ちゃんのためにも、俺も一肌ぬぐかねぇい! おめいら、『屋台』に出す商品を考えてるんだってぇい?」
「そ、そうなんですよ」
全く、そっちの話は進んでないけどね!
「そうだなぁ、ホレ、そこの『曇りのち晴れジュース』のレシピぐれぇなら、ちょっとぐれー教えてやってもいいってもんよぉ!」
「本当ですか!? でも、これはニュウドウさんが努力して編み出したジュースですよね……そんな貴重な商品のレシピを、教えちゃってもいいんですか……?」
「まぁ料理スキルのレベルを上げねェと、レシピを知っててもおんなじモンは作れねぇからなぁ。ま、何かの参考になりゃいいと思ってなぁ」
「あ、ありがとうごいます!」
「俺も『屋台』にゃぁ料理を出すつもりだってぃ。一品ぐらい似たようなもんが売りもんにされてても気にしねえってこったぁ!」
おぉ。
これは棚からぼた餅というか、渡りに船だ。
さっそくニュウドウさんにレシピを教えてもらうことになったが、素材以外はよくわからなかった。というのも料理スキルの行程に関しては、無知に近い俺達が聞いてもわかるはずがなかった。
「意外だったのがよぉ、アビリティ『
『曇りのち晴れジュース』の素材は、『上質な水』『シュワシュワの角』『灰粉』『グレープル汁』『蒼火花』だそうだ。
上質な水なら『水』の上位変換ですぐ作り出せるし、町で拾えたりする。
他の素材に関しても、どのモンスターがドロップするのか、採取場所はどこなのか詳しく聞いておいた。
「なるほどねぇん。料理ができる男って素敵かもしれないわぁん」
そこまで親切に教えてくれたニュウドウさんに、男認定されたジョージの態度も多少は軟化していた。
「そういやぁ、
和睦のチャンスと見たニュウドウさんだったが、またもや地雷を踏んでしまった。だけど、本人は構わずジョージへ絡み続ける。
「これでも飲んで、機嫌なおしてくれやぁ。ヒンヤリしてるぜー? こう熱い日が続くと、グッといきたくなるってもんだろぉ?」
「あらぁん? たしかにあちきもグッとくるのは好きだけどぉん、あちきを乙女だってわかってない、ゔぁなだはぎらいよ゛」
色黒オカマの形相がどんどん険しくなっていく一方で、ニュウドウさんは青ざめていった。
――――
――――
恰幅のいい店主がとぼとぼと調理場へと引っ込んでいく後姿を見送った俺達は、いよいよ本格的に『屋台』で売り出す商品について検討し始めた。
「夏祭りといえばラムネです。これを参考に作るのはどうでしょうか?」
『曇りのち晴れジュース』をジーッと観察していたミナが唐突にそう言いだす。何の脈絡もない提案だったけど、それには俺も大賛成だった。
ラムネ、大好き。
「ミナの言う通りラムネがいい。だけど、それだけじゃ夏らしさってインパクトに欠ける気がする……コウやユウが言ってた、装備品関係も売り出したいかな」
そこで期待を込めてアンノウンさんを見る。
「はらはら、そこは私に任しんす」
ミナの
「商売時でありんすねぇ」
守銭奴のごとく、ほくそ笑むアンノウンさんがやけに頼もしく思えた。
「ラムネと、夏らしい日本の伝統装束を売り出すのは決まったわけですが、
「素材集めに決まってますよ! リリィさんはダメ女ですね!」
「なんですって!?」
「まぁまぁ二人とも、落ち着いて……素材集めをするにしても、まずは色々試さないといけないからさ」
ラムネが作れるかどうかすらわからないし。
「二人はとても可愛いから、売り子として気合いを入れてくれるだけで、すごく戦力になるよ」
「ぽ、ぽ、ぽけーっとしているタロさんにして上出来ですことよ!? よ、よく、
「ふぁあ……天士さまぁ、ミナは嬉しいですぅ……」
「ラララ、ラ、ラムネと言えば……ヒンヤリシュワシュワの日本特有のソーダ水の事ですわね?」
「ん? はい、そうですよリリィさん」
「ど、どのようにして作るのかしら? そもそも料理スキルがない
「そこはニュウドウさんに聞いたレシピを元に、天士さまの錬金術でチョチョイのチョイッ、ですよ!」
「え……!? あ、いや、まぁ、うん……できるかな……」
前から思ってたけど、ミナってけっこう俺に抱くハードルが高いよね。
「冷やすねぇン……冷却するぐらいなら、あちきのアビリティ『
まぁそこは何とか、俺とジョージで試行錯誤の繰り返しをしていくしかないか。
冷やすといえば、雪を発生できるというスキル
あれさえ、習得できれば色々とできる事が増えていきそうな気もするのだけど。雪を元に『屋台』でアイスを売り出すとか!
「そういえば、ジョージ。例のスキルはどうなの? 『熟成』できる場所は見つかった?」
スキルを習得するためのアイテム、
「それがねぇん……やっぱりダメなのぉん……でも、今は『呪いの雪国ポーンセント』って街の近辺で『熟成』ができるか試しているわぁん」
「そっかそっか。ありがとう、ジョージ」
「いいぇん♪」
「タロ氏とジョージ氏は何の話をしりんすか?」
職人だからだろうか、アンノウンさんが質問をしてくる。
それに堂々と答えたのはオカマだ。
「あたしたちの子供の話よぉん?」
うん、まあ、二人の共同製作で創ったスキルについて話しているのだから、その表現は間違ってはいないと思うけど……。
その言い方はやめてほしいかな……。
「「「!?」」」
そして、なぜかジョージの言葉にシーンと場が静まり返った。
しかし、それも数瞬の事。
「ジョージさんは犯罪者ですね!」
「タロさんの本命って変態でしたの!?」
「さすがにジョージ氏では、倫理に反するでありんすねぇ」
アンノウンさんは薄々、勘付いてそうなんだけど、妙にミナとリリィさんを助長させるような発言をチラホラ投げている。
「え!? ちょっとぉん!? みんなどうしてそんなに殺気だってるのぉん!? えっえぇぇん!? かっか弱い乙女をいじめちゃいやぁん!」
さっきまでニュウドウさんに取っていた態度はどこへやら。
普段はめっぽうPvPに強いジョージも、女の戦いでは白旗を上げざるを得なかったのだろうか。ある意味、紳士的な結果を叩きだした我らが愛すべきオカマの末路は凄惨だった。
「ぎゃっやめっめつぶしぃん、ふあぁいおぅっ、たすけっ天使ちゅわんっっ!」
ご、ごめん、ジョージ。
ちょっとみんなが修羅すぎて、俺は隅っこでまるまっておくぐらいの事しかできない。これを機に心を入れ替えて、誤解を招くような発言は控えような?
こうして、ジョージの乱入により無事? 俺達は『屋台』に売り出す目玉商品開発への一歩を踏み出したのだった。
――――
――――
「ふぅ」
クラン・クランからログアウトした俺は、なんだか少しだけ疲れたので身体をほぐしながらベッドへと寝そべった。
なんとなく、リリィさんに聞かれた内容が頭の中をよぎる。
「恋バナ、か……」
そもそも、中身が男で……現時点では、身体が少女の俺が……まともに恋愛なんてできるのだろうか……。
そんな想いが胸のうちにジンワリと浸透していく。
大好きな
「こんな状態で、恋をするなんて……うん
ハハッと自嘲気味の乾いた笑いが自室に落ちる。
俺、中身は男です。でも身体は少女なんです。それでもキミが好きなんです。なんて言ってみろ……そんなの生理的に受け付けられません! なんて可能性もあるはずだ。
「あぁ、何をしているんだろう俺は……」
まとまらない負の思考がスパイラルして、しばらくベッドに顔をうずめる。
すると隣の部屋から不意に声がかかった。
「太郎? 少し、でかけてくるから」
「はいよぉ……」
「ん、太郎? 何かあったのか?」
「いや、別に……」
「あんたも来る?」
「いい、行かないー……」
どこかに出歩く気分にはなれなかった。
「知り合いとアイス、食べに行くのだけど。もちろん、太郎も来るのならオゴってあげるわよ?」
ぐっ。
アイスは食べたい。だが、しかし姉の知り合いが一緒となると、疲れそうだ。
今は他人の対応に気遣いできるほどの余裕は、俺にはない。
「太郎が来るにしても、
!?
なんだって……。
あの高級チョコレートショップと名高い、○ディバさんだって!?
「いきます!」
沈みがちな心には甘いものが最適!
お酒ならぬ、アイスは俺にとって百薬の長だ。
姉に感謝の念を抱きつつ、俺はいそいそと出かける準備に取り掛かった。
◆◇◆◇
タロ 「ユウとコウは……普通に大事な奴らなんだ」
ミナ 「うらやましいです(天士さまにそんなに大切に思ってもらってる、ロリゴン共が)」
リリィ 「羨ましいですわ(タロさんにそう認められてる、お二人が)」
タロ 「いや、普通に女の子が好きだよ」
ミナ 「!(わたしも好きです、天士さまが大好きです! きっとこの気持ちはラブの方です)」
リリィ 「!(多少は上流階級の心得があるようですわね。同性愛を嗜むなんて
◇◆◇◆
あとがき
新作、始めました!
『どうして俺が推しのお世話をしてるんだ? え、スキル【もふもふ】と【飯テロ】のせい? ~推しと名無しのダンジョン配信~』
お読みいただけたら嬉しいです。
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