お姉ちゃんとの朝
「ハフハフハフ」
無心で白ご飯を食べる。
「いっぱいあるから、じゃんじゃん食べちゃって頂戴」
わんこそばの要領で、お姉ちゃんが次から次へと白ご飯をよそってくれる。
「お漬物、おかわりいる?」
「ぅ゛ん……、ぎゅ、ぅり、ぐ、ぼぉ……」
「およそ、十八歳の少女が出す声じゃないけれど、そんなに喜んでもらえて、嬉しいわ。胡瓜、いま出すわね」
お姉ちゃんは台所へ引っ込み、すぐにおばあちゃん特製の胡瓜を持ってきてくれた。
んで、それをまた無心で頬張るのだけれど。
「うんめぇなぁ~。ほんに、うんめぇなぁ~。この世の極楽だぜ~」
「ほんと美味しそうに食べてくれるわねぇ。浩輔だって、こんなに美味しそうに食べてくれないわ」
「おじさんだっておいしそうにお姉ちゃんのご飯食べてるじゃん」
「でも、絶対口に出して『美味しい』っていってくれないのよ」
「ふうん。でも、ベットの中じゃおいしいっていってるんじゃない?」
「ベッドの中って……!!ば、バカ!!!」
お姉ちゃんの顔が真っ赤になる。
「というのは冗談で」
「心臓に悪い冗談はやめて!」
「でもなかったりするんじゃない?奥様?」
「ぁ、ぅ……、ぅ……」
「……まさか……、図星?」
「……」
小さく、お姉ちゃんは首をたてにふった。
「……、いやぁ、めでたいことですなぁ」
「も、もう!誰がこんないじわるな妹に育てたのかしら!」
とかなんとかいって、頬をぷっくりふくらませるけれど、しっかり白ご飯はよそってくれる。
久しぶりにお姉ちゃん夫婦が帰省したから、ご相伴に与れた。
私は、お姉ちゃんが炊く白ご飯が大好きだった。なぜかわからないけれど、お姉ちゃんの手をくぐった白ご飯は、優しい味がした。
「ああ、ダメだわ。もう少しで浩輔が帰ってくるのに、真っ赤な顔が全然直らないわ」
そういって、頬に手を当てて、その玉のような恥じらいを隠そうともしないお姉ちゃんをチラリと見ながら、まだ白ご飯を食べている私は、浩輔おじさんとの約束がともかく果たせたのでホッとしていた。
「顔を赤くさせている涙香を今やってる近所の祭りに連れ出して、あの頃みたいにいろいろと買ってやるんだ。りんご飴とか、お面とかもいいよな。そうやって一日中連れまわして、そして夜の神社で、二人きりになって、そっと頬にキスをするんだ。それから、家に帰って二人で……」
はい。そうやって永遠と惚気話をきかされた私に同情してください。
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