ママとの朝

「ほら、早く起きなさい」

「う~ん、あと五分~」

「その言葉、もう三回目でしょ。ほらほら、さっさと起きて支度する」

 がばっと、布団が取り払われて、私のフリフリの黒ナイトドレスがあらわになる。

「……ママって、意外とエッチだったりする?」

「意外ってなによ。お望みとあらば、私もナイトドレス着て添い寝してあげるけど?」

「……、じゅるり」

「……、いまおかしな音がきこえた気がするんだけど?」

「いやぁ、気のせいでござるよ」

「……、そう。ならいいわ。さ、起きたことだしさっさと着替えて朝ごはん食べる」

 パンパンとママが手を叩いて、私を促した。

 ふあぁ、と私は欠伸をして、ポリポリとお腹を掻き、ノロノロと着替えはじめる。

「まったく。そんなだらしのない姿、思春には見せられないわね」

「いいもん。思春様はママと違って、私のすべてを受け入れてくれるんだもん。だから、プロポーズしたんだもん」

「すべてを受け入れるのが妻の役目なら、人として最低限の礼節を教えるのが姑の役目です。尤も、本来は妻になる段階で備わってなければならないことだけれど」

「はいはい。どうせ私は出来の悪い妻でござんすよ」

「わかってるならシャキッとする。お弁当も作っておいたから、先生に注意されない程度に、学校で居眠りでもしてなさい」

「へーい」

 また欠伸をして、私は着替えて、朝ご飯を食べて、学校へ向かった。

 その夜、ママは本当に添い寝してくれた。お揃いの、黒のナイトドレスで。

「思春に教えてもらったけれど、あなたたちなかなかいいお店で買い物してるのね」

 ママが額にキスをしてくれる。

「思春と違って、ママはあなたのすべてを受け入れてあげることはできないの。そこが私のダメなところだと思うのだけれど『それが母上のよいところです』って思春にいわれたわ。いったいどういう意味かしら」

「そのままの意味だと思う。ママ、大好き」

 私はぎゅうって、ママを抱きしめた。

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