第10話 これで終わりと思った?
「どう、柚希美味しい? イイ事、出来てる? 美鈴美味しいかな……美鈴の焼きそば、柚希専用だよ? 柚希に美味しく食べられてるかな、美鈴の焼きそば?」
二人きりの真っ白な部屋の中で。
隣に座るエプロン姿の美鈴が、少し荒い息を吐きながら、ドキドキな上目づかいでそう聞いてくる。
「エプロン姿かわ……んっ、うん、すごく美味しい。めっちゃ美味しいよ。美鈴のイイ事、すごい美味しい」
「えへへ、良かった……美味しいって、美鈴の、好き……えへへ。いっぱい食べてね、柚希のために作ったんだから、柚希専用なんだから。柚希に喜んでもらうために作ったんだから⋯⋯やっぱり、好k……ぬへへ、柚希。もっと褒めて、私の事。美鈴美味しいって、美鈴の美味しすぎて止まんないって……そんな風に、いっぱい美鈴の事、褒めて欲しい。美鈴を柚希での美味しいで、いっぱいにして欲しいな」
「揺れ、ぽよ……み、美鈴美味しいよ、本当に美味しい。美鈴が美味しすぎて、俺止まんないよ……もっと美鈴、食べたいな。俺もっと美鈴の事、食べたいな」
「食べたい、美鈴……えへへそっかそっか……ありがと柚希! 柚希がそう言ってくれるなら、作った甲斐があったよ……えへへ、柚希の美味しいで、美鈴は満たされてるよ……うふふふっ、柚希、もっと食べて良いよ、美鈴の焼きそば。ポテトだけじゃ、お腹空くでしょ、柚希? いーっぱい、食べてね、柚希!」
そう言ってぽよぽよ柔らかいものを揺らしながら、えへへ、と可愛い笑顔を見せてくれる。
その笑顔は純粋で、穢れがないような、そんな笑顔で……ああ、もう!!!
「可愛い、純……美味しい、ありがと美鈴!!!」
「えへへ、どういたしまして!!! 柚希に私のイイ事、喜んでもらえてうれしいな、柚希が私を……えへへ、いっぱい食べてね、柚希!」
「可愛い、ぽよぽよ……ごめんなさい、ありがとうございます」
……完全にいやらしいこと考えてました!
キスする寸前まで行ったし、美鈴がイイ事って言うから……完全にそう言う事するんだと思ってました、美鈴と繋がって一つになって、美鈴の事いっぱい愛するんだと思ってました! 美鈴をいっぱい、愛するんだと思ってました!!!
美鈴とそう言う事して、美鈴の身体好きなようにして。美鈴の全部感じて、美鈴に溺れて、美鈴と俺だけの専用の世界へ……そんな事が起こるんだと思ってました!
いや、アレだよ、その……そう言う事しなかったのは、冷静に考えれば普通というか、それが当たり前で良かったと思うんだけど!
美鈴、もとい委員長とは学校でもそんなに話したことないし、仲良くないし。さっきたまたまナンパされてるところ助けて、それでこうやって……だからお礼としては、この焼きそばって言うのは正解だと思うけど! これが絶対普通なんだけど!
でも、だって、その、だって……だって美鈴えっちなんだもん! 俺専用とかイイ事とか熱いとか、息荒くしてえっちな事言うし! 抱き着いて来たり、キスしようとして来たり……なんか色々えっちなんだもん、美鈴!
それに巨乳で美人でスタイル良くて、かなりタイプなんだもん!!! 本当にタイプなんだもん、今の美鈴!
アル中じゃなくて、優しくて料理上手でえっちな姉ちゃん、もしくはえっちな穂乃果姉ちゃんって感じだから……こんなん惚れるわ! あの二人でさえ俺大好きなんだもん、それに教科パッチついて、そんな誘われてるというか、挑発的な事言われると……そりゃ、その気になっちゃうじゃん! そう言う事、したいって思うに決まってるじゃん!!!
俺専用に、俺の美鈴になってくれるって思うじゃん!!!
「ん~、も~……本当に美味しいな、この焼きそば! マジで美味しい、ソース拘ってるでしょ、これ!」
あと焼きそばが本格的でかなり美味しいの、なんか逆に腹立つ!
美味しくて最高なんだけど、でも……ちょっと、ねえ!
「えへへ、そう? 嬉しいな、私柚希にそう言ってもらえて。ソースは確かに、ちょっと隠し味、みたいな?」
……ああ、もう笑顔可愛いなぁ! これ、えっちな事とか、全然考えてなかったんだろうな、美鈴は! 純粋に、俺にご飯を食べてもらいたかっただけなんだろうな!
ああ、もう! 何というか、その……俺が悪いです!
全部俺が頭ピンクだったのが悪いです、焼きそば美味しい!!!
―えへへ、柚希が美鈴食べたいって言ってくれた……美鈴の事、やっぱりそう言う感じで、私に柚希の熱いの……えへへ、嬉しい、欲しい。柚希が私の事……えへへ、良いよ、柚希、もっと……
―って、ダメダメ! そうじゃなくて、その……ま、まずは確認、それと私を、美鈴を……柚希専用にしてもらわないと。まずは柚希の美鈴にならないと。
☆
「それにしても本当に美味しいな、これ! マジで飽きない、いつでも食べてられる! すっごい料理上手なんだな、美鈴は!」
しばらく頭ピンク色になっていたのを冷やすために、黙々と焼きそばを食べ続けて数十分。
お皿に山盛りに盛られた焼きそばは、もうほとんどなくなって、俺の頭も十分に冷えて、ちゃんとした感想を言えるようになったいた……言ってること同じやん! って思うかもですけど、語彙力喪失しちゃうの、美味しすぎて! 本当に美味しんだよ、美鈴の焼きそば! 何が違うかとかはわからないけど、本当にお箸が止まらなかった!
「も~、褒め過ぎだよ柚希! そんな褒めても、まだ何も出ないよ! 柚希が濃いのくれないと、何も出ない……でも、焼きそばだったら誰でも作れるでしょ? 正直、うちの秘伝のたれ使えば、誰でも美味しく作れると思うよ?」
「いや~、どうかな? それにしても、特別美味しいと思うよ、俺は! それに、焼きそば作るのを失敗する人間もいるんだよ……高宮朱里、って言うんだけどね」
夏に海に行ったときに、焼きそば自分で焼けるタイプの海の家があったんだけど、そこで朱里が盛大に焼きそば焦がして、ぐちゃぐちゃにして、店主さん呆れさせてたっけ。
それ以外にも、名誉挽回って言わんばかりに、旅館で俺に振る舞ってくれようとした炒飯も焦げ焦げでほとんど食べれなかったし、俺の家で姉ちゃんに作った麻婆豆腐で、バカ舌の姉ちゃんを悶絶させてたし……朱里は本当にやばい。
いかにも料理できそうです! みたいな可愛い顔しといて、全くできない。今まで出会った中で、姉ちゃん以上の料理下手は初めて見たってレベル。顔の可愛さは、姉ちゃんと同レベルなんだけど。
「へ~、あの高宮君が。ちょっと意外かも、調理実習が怖くなってきた」
「意外だろ? まあ、ペアにならんでしょ、名簿全然違うし」
「それはそうだけど……それより、柚希は高宮君と夏休みに海行って一緒に旅館に泊まったの? それに可愛いとか色々いってるし……高宮君と付き合ってるって事? 高宮君の事好きなの、柚希は?」
「それよく聞かれるけど、男同士だからな? 俺と朱里は男同士、そう言うのありません。友達としてなら、大好きだけど」
朱里と俺の関係は、男子から女子から色々な人が「付き合ってるの!?」とか「BL!?」とか聞いてくるけど、俺と朱里はそう言う関係じゃ全然ない。
そう言う話になったこともないし、一緒に寝ても裸見ても何も思わないし……あ、あと朱里はあんな可愛い顔しといてすごいスケベな奴だからな!
海に言った理由も水着のお姉さんを観察したいって理由だし、自分なら女風呂に入れるかも、って小一時間悩んでたし(おっきくなるって理由で辞めた)、よく巨乳のお姉さん見つけて興奮してるし……朱里、めっちゃ男だからな! 朱里の性欲、顔に比べて全然可愛くないからな!
「……ちょっと必死過ぎない、柚希? もしかして、本当に……私が言う事じゃないけど、それなら美鈴はその、ただの……えっと、本当に付き合ってないの、高宮君とは?」
「ホント付き合ってないって。朱里とは親友、そんなにはならない!」
「そっか、それならいいや……それじゃあ、もう1問質問!」
「うおっ……ど、どうしたの美鈴?」
トンと、床を軽くたたいた美鈴が俺との距離を、一気に詰めてきて。
グッと身体を押し当てるように、甘くて柔らかい女の子の部分を俺に感じさせるようにギュッと引っ付いてきて……ちょ、そんなにされると、さっきの妄想で……うっ!
そんなえっちの後遺症に苦しむ俺の肩に、美鈴はふんわりもちもちなほっぺを摺り寄せながら、
「ふふっ、柚希温かい、それに……えっとね、柚希、次の質問。さっきさ、ナンパで助けてくれた時、私の好きなところ言ってくれたよね? アレってさ、ただの思い付き? それとも誰かモデルいるの?」
「み、美鈴、ちょっと……あ、あれ? あれなら、その……七瀬ちゃん、って言うんだけど、その子の好きなとこ、いった感じかな、うん!」
「七瀬ちゃん……誰、それ?」
「ああ、ちょっと待って……こ、この子! この写真のおっきい方が、七瀬ちゃん。美人でスタイル良いのが姉ちゃん、ちっこいのは七瀬ちゃんの妹」
引っ付いてくる美鈴にドギマギしながら、この前4人でお出かけした時に撮った写真を見せる。他にもいっぱいあるけど、近々の写真だとこれかな、うちの姉ちゃんが珍しくアルコール抜きで可愛く写ってるし。
「ふ~ん、お姉さん美人だね……で、この七瀬ちゃんってのは、柚希の何なの? 彼女なの、柚希の? 彼女いるのに、美鈴にあんなこと言ったの?」
その写真を見た美鈴は、瞳を真っ黒に染めながら、俺を睨むようにそう言う。
ちょ、ちょっと怖いよ、それにぽよぽよふわふわ気持ちいいよ……んんっ!
「でしょ、姉ちゃん美人でしょ! 可愛いよね、美人だよね、うちの姉ちゃん! アル中な事が残念なんだけど! でも美人だよね、本当に! で、七瀬ちゃんだけど、彼女じゃないよ、仲のいい友達みたいな? 昔から、ずっと仲良しなんだ、七瀬ちゃんとは」
「柚希、お姉さんへの熱量凄いよね、ずっと思ってたけど……それは置いといて、じゃあ、この七瀬ちゃんって人の事、柚希は好きなの? あれだけ好きなところ言えるってことは、柚希の好きな人なの、七瀬ちゃんは?」
「ちょっと、目線怖いよ、美鈴……好き、って感じではないかな、七瀬ちゃんは? 何というか、ずっと一緒だからさ。好きなところ、いっぱい見つけちゃうんだ。だからいっぱい知ってる感じ。そんなんだから、今更七瀬ちゃんと恋愛しようとは思わないかな? ちょっとそう言う目では見れないかも、家族みたいなもんだし」
七瀬ちゃんとは、小4の時からずっと一緒で、親が単身赴任中で姉ちゃんが生活力皆無だから色々お世話になっていて。
だから、あんまり恋愛感情とか、そう言うのは七瀬ちゃんに持ってないかな……やらしい気持ちは、持ったことあるけど。巨乳で可愛いから……ってほぼ初対面の美鈴に色々んぶっちゃけすぎだ、ダメダメ。
「ふ~ん、そっか、それならいいや……それなら、美鈴が……ふふふっ……」
その俺の言葉を聞いた美鈴は、俺を拘束していた手を離して、不気味に笑う……こ、今度は何、美鈴?
「別に、何でもないよ柚希……ふふっ、何でもないよ! ほら、焼きそば食べちゃって、今日のお礼だから! 美鈴の焼きそば、全部食べてね!」
「う、うん! 美味しいからいくらでも食べれちゃうよ、美鈴の焼きそば!」
「えへへ、嬉しいな……柚希が美鈴、食べてる……えへへ」
「あ~、可愛い……んんっ!」
ちょっと不穏だけど、その可愛い美鈴の笑顔の前では、全部吹っ飛んで。
隣の美鈴の体温を感じながら美鈴の作ってくれた焼きそばを吸い込む、人間ルンバになっていた。
「ふふっ、彼女じゃないか、好きじゃないか……それなら、良いよね? 柚希の美鈴になって、良いよね?」
~~~
「ふ~、お腹いっぱい! 美味しかったよ、美鈴! 美鈴の焼きそば、最高だった!」
「えへへ、ありがと、柚希! 柚希がそんなに褒めてくれるなんて……えへへ、美鈴、柚希に食べられちゃった♪」
「……美鈴、そう言う事言うのは勘違い……!?」
突然、身体がグラっと揺れる。
背中に硬いものが当たると同時に、急に視界が真っ暗な闇で覆われて……え、何!? 何!?
「しーっ、動かないで柚希……大丈夫、目隠しただけだから」
「め、目隠し!? な、何で!?」
「だ、だって……恥ずかしいもん、見られるの……人にするの初めてで、拙いと思うし」
「!?」
ふわ~、っと耳元に熱い息とともに囁かれたその言葉に、身体がビクンと反応し、開館にも近い感覚が身体を支配する。視界がない分、その感覚はより敏感に伝わって。
え、これって……え、まさか……え!?
「……んっ……」
「ふふっ、もう我慢できてない、可愛い声洩れてる……お料理だけで、終わると思った、イイ事? そんな純粋じゃないでしょ、美鈴も柚希も。まだ続くよ、美鈴とのイイ事。美鈴は柚希専用なんだから、柚希の美鈴になるんだから……だからね、柚希……」
「……んっ、美鈴、あんっ……」
「ホントに食べていいよ、美鈴の事」
★★★
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