第43話 見つけた宝物
「ボクも逝かなくちゃ」
溶岩に沈みゆく封印の間。
ユウキは故郷を偲びながら、今にも崩れそうな崖の上に立った。
「何を言ってるんだ!?」
「ユウキ殿、そこは危ない。戻ってくるでござる!」
オレとコジロウは慌てて駆け寄ろうとするが。
「
オレとコジロウが身につけていた首輪と腕輪を解除。
コジロウの魔装具が消滅。オレも急激にチカラを失った。
「ユウキ。いったい何を……」
「これでもうキミたちを縛り付けるものはない。死印は危険だ。ボクの存在もろとも永遠に葬り去るよ」
ユウキはそう言うと、浮遊魔法を使って宙に浮かぶ。
魔法補助のないオレたちでは、ユウキの手を掴むことすらできなかった。
「待てユウキ! オレはまだ……!」
「二人ともありがとう。キミたちと冒険ができて嬉しかった。人形のボクでも人並みの幸せを感じることができた」
「ユウキ殿……」
「今ならわかる。ボクは……魔女マリアは自らの意思でこの洞窟に封印されたんだ。死印に関するすべての情報を隠し、数千年かけて呪いの影響を薄めていった」
ユウキは首を横に振る。
「けれど呪いが……ヒトの欲が消えることはない。行きすぎたチカラはヒトを、国を、世界を滅ぼす。自らを傾国の魔女と名乗ったのも道理だね」
「何を言ってるんだ。だからっておまえが死を選ぶことはないだろ」
「子として親の犯した罪を背負うおつもりなら、生きて償いを果たしなされ。拙者のように救われる命もあろう」
「だけど、ボクはヒトじゃない。一緒にいちゃいけないんだ。名前すらなかった、ただの人形で……」
「馬鹿野郎!」
だだをこねるユウキに、オレは大声を上げて叱りつける。
「オレが好きになったのは魔女の生まれ変わりじゃない。ユウキ、おまえだ! ヒトか人形か。そんなの関係ない!」
「ロイス……」
「魔女の呪いなんてクソ食らえだ。名前がおまえを縛ってるなら、オレがおまえを解放する」
オレはユウキに手を伸ばす。
「ユウキ・コレート。今日からそう名乗れ」
「それって……」
「この状況で求婚するとは。ロイス殿も隅に置けませぬな」
「えっ!? いや、違……違わないか」
クエストが終わったら告白するってフラグも立ててたな。
これでもオレは元騎士だ。
騎士が相手に告白するときは、プロポーズを意味するわけで。
「ロイス……」
ユウキは崖に降り立ち、一歩ずつこちらに近づいてくる。
目に涙を溜めるユウキを、オレは優しく抱きしめた。
「いいの? 本当にこんなボクでも……」
「約束しただろ。二度とこの手を離さないって。ユウキ……これからもずっとおまえのそばにいる」
「ああ、嬉しい。ボク、その言葉をずっと待ってた気がする……」
あたたかい。ユウキのぬくもりを感じる。
本当の意味で、オレ達はようやくいっしょになれた気がした。
「あ~、こほん。拙者のこともお忘れなく」
「もちろん。ボクたちはずっメンだよ★」
――――ズズズ……。
そうやってオレたちが笑い合っていると、足場や天井が崩れ始めた。
「ここはもう限界でござる。早く脱出を」
「だけど魔竜との戦いでチカラを使いすぎて……」
「安心しろ。こんなこともあろうかと、ってな」
オレは懐からカーラ人形を取り出して呼びかけた。
「もしもし。聞こえるか、カーラ?」
「感度良好じゃ。魔竜が消えたことでようやく外から干渉できるようになったわい」
「いつの間に人形を仕込んでたの?」
「おぬしらが街に帰る前にロイスと世間話をしてな。そのときに人形をせがまれたのじゃ」
「【精霊使役】で動かしてる人形は魔力いらずで動ける。いざって時に役に立つと思ってさ。んで、その時は今だ」
「よかろう。魔竜との戦いで天井に大穴が開いておる。このまま上に飛ぶぞ」
カーラが風の精霊を召喚。オレたちは魔竜の洞窟から脱出した。
遙か上空まで浮かび上がったところで、洞窟は音を立てて崩れ去った。
「さようなら。ボクは行くね」
ユウキは寂しそうに瓦礫を見下ろすと、故郷に別れを告げた……。
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次回はエピローグとなります。
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