第6話
「まさかこんな風にディストン侯爵家の名誉を守ってれるとはな。本当に気の利く娘達を持って我々は幸せだな」
「こんな奴と姉妹だなんて思われたくないもの」
「それに、デイヴィッド殿下と結婚する為の足枷なんて、皆の前で晒しちゃダメでしょう?」
「デイヴィッド殿下にアピールも出来たのでしょう?貴女達は本当に素晴らしいわ!」
「それにコイツだってこれ以上生き恥を晒すなんて可哀想でしょう?フフッ、本人は行きたがっていたけど無駄よ!無駄」
「無能は一生、部屋に閉じこもっていればいいの」
「その通りね。賢いわね」
「お母様の子ですもの!それにわたくし、土と風の二属性も持っておりましたのよ」
「ハリエット、貴女は本当に素晴らしいわ!デイヴィッド殿下だって、きっと気に入って下さるわ」
「わたくしだって、強い土魔法を持っているって言われたのよ!きっと、お父様に似たのね」
「ははっ、きっと私に似てイーヴィーは素晴らしい土魔法使いになるな!」
そんな談笑を下から見上げていた。
この温かい輪の中に居場所は初めからなかったのだと、そう思い知らされた。
「いつも窓からわたくし達をずっと羨ましそうに見ていたわよね。今日は楽しかった?」
「……っ!」
「本当に……骨と皮だし、それにこんなゴミみたいなドレスを嬉しそうに着ちゃってみっともない」
「お姫様にでもなったつもり?」
「アハハハ、残念ね。何も出来なくて」
その言葉に目を見開いた。
言葉が詰まって、腹の中が轟々と煮えたぎるように熱くなっていく。
(私は…………誰にも必要とされてないの?)
そんな問いに応えるように、イーヴィーが声を上げた。
「でも、なんでお父様もこんな子、とっておくのよ?」
「魔力検査と、まぁ……いつかは役に立つだろうと思ってな」
「そうかしら?」
「ああ、そうだ……お前達には関係ないことだ。いつかハリエットとイーヴィーの役に立つその日までは下女として働け」
「え…………?」
「そうね。もう外に出ることもないんだし、それがいいわ」
「魔力検査も受けることなく、もう表舞台に出ることはないからな。今日から今までの恩を返す為に働け」
そう言って四人は去って行った。
背中が見えなくなるまで、ずっと見つめていた。
(…………私は、必要のない存在だ)
この日からシャルロッテ・ディストンは、ただのシャルと呼ばれて屋敷で働くこととなった。
───六年後
シャルロッテは、埃っぽい部屋で目を覚ました。
(……もう、朝)
最近では朝から晩まで働きっぱなしでクタクタだった。
最初は体力がなく死にそうな程の高熱や体の痛みに苦しんでいたけれど、それでも働いているうちに、いつの間にか体が強くなってしまったようだ。
熱にうなされながら思っていた。
(このまま死ねたら苦しまずに済む……)
それでも、朝日と同時に目が覚める。
ベッドから起き上がって、白髪を束ねてから三角巾で隠す。
長い前髪は血のような赤い目を隠す為に伸ばしていた。
擦り切れている手を擦り合わせた。
硬くなった皮膚は何度も何度も傷ついて治ってを繰り返していた。
身支度をしていると扉を強く叩く音と外からかかる声。
「シャル!起きたら、さっさと掃除しな」
「お前が働いてないと、アタシ達が旦那様と奥様に怒られるんだからね!」
「…………はい」
誰よりも長い時間、働いて屋敷を綺麗にする。
やっている事は奴隷と同じ……いや、それ以下かもしれない。
長い長い廊下を掃除する為に床に這いつくばっていると「汚ったない」「ほんと目障り」と、いつものように上から降ってくる。
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