第1551話、葬儀の出席
「ぐぅ・・・はぁ、はぁ・・・!」
「っ、お姉様! 大丈夫ですか!?」
「っ、姫様、一旦お座り下さい!」
女王が消えた事で、妹王女と女中は姉王女の状態に気が付いたらしい。
最早支え無しでは立っていられないのか、肩で息して倒れそうになっている。
慌てて女王のベッドに腰掛けさせ、本人も素直にそれに従った。
「あの程度制御出来んと、女王の後を継いだとは言えんぞ」
『妹と戦ってた時は、もっともじゃーっとしてたもんねー?』
「は、はは、手厳しいな・・・だが、そうだな、その通りだ・・・」
もじゃーが何か知らんが、実際女王と戦っている時はもっと魔力が多かった。
形作る為に相応の魔力を使っていたが、強めの砲撃一発分ぐらいだった気がする。
つまり女王なら余裕で連発できる力だ。特に苦もなく使える領域だ。
あの女の後を継ぐというのであれば、あの程度の力は平然と使えんとな。
とはいえ呪いの水晶の力の制御が、どういう形で負担になっているのかは解らんが。
「お姉様、精霊付き様の言葉も正しいのかもしれませんが、それはまた後の話です。今は少し休むべきです。睡眠をとりましょう。昨日から殆ど休んでおられないでしょう?」
「そうです姫様。貴女の邪魔をする形になった私が言えた事では御座いませんが、どうかご自愛をお願い致します。貴女はこれからが、一番大事な時期で御座いましょう」
だが姉の頑張りを良く知る妹は、今は努力よりも休息だと告げる。
女中も、どの口が言うのか、と返されるのを承知で妹王女に同意した。
「そう、だな・・・確かに、少し、休むか。昨日から、随分と疲れた」
そして本人も大きな溜息を吐きながら、二人の言う事を受け入れた。
もし注意をされなければ、この後も奔走するつもりだったかもしれんな。
女王のおかげで力を示したとはいえ、未だ城内は混乱しているだろうし。
馬鹿男のせいで眠らされた連中などは、未だ事情の把握も出来て居ない気がする。
まあ、俺にはどうでも良い話だが。今はとにかく腹が減った。
「お前達の事はどうでも良いが、食事は何処へ行けば良い。腹が減った」
『ぺっこぺこだぞ!』
「あ、ああ、すまない。君の案内は―———」
「私が致します、お姉様。どうかお休みを」
「―————いや、だが、しかし・・・」
俺の対応をするべく腰を上げかける姉を抑え、仕事を変わると告げる妹。
だが姉は危険物への対応を任せる事に、かなりの戸惑いが見えた。
妹もそれは承知の上で、当然姉もそんな妹の意図を察して悩み始める。
「・・・解った。彼女の案内を頼んで良いだろうか。下手な人間に頼むのは怖いしな」
「畏まりました、お姉様。お任せ下さい」
最終的には姉が折れ、妹が俺達の案内を引き受ける事になった。
「では皆さま、ご案内させて頂きます。どうか私について来て下さい」
妹はくるっと回って俺達に向き直ると、綺麗な礼をしてから扉へと向かう。
特に異論はないので素直に後ろをついて行く。食事が出来るなら何でも良い。
「ミク殿、母の葬儀には出るのだろうか」
ただそこで姉王女がそんな事を訊ねて来たので、足を止めて振り返る。
「何故俺が。出ないぞ。奴との別れはもう済んだ。葬儀など、奴の死に心の整理がつかない者達がする行事だろう。それを否定するつもりは無いが、俺に心の整理は必要無い」
『兄のお葬式には、妹は号泣するんだろうなぁ・・・いや、兄は死なぬ! 泣かせぬ!』
むしろお前はどうやったら死ぬんだ。死に方を教えろ。
それは兎も角、女王の葬儀など俺が出る理由は何一つない。
奴との関係は殺し合いをした相手で、それ以上でもそれ以下でもない。
するべき会話は全てしたし、別れの言葉も交わした。
そもそも奴は死んだ癖に死んでいない。
なら葬儀など、この国の人間でなければ何の意味が有るのか。
「あの女は『そこ』に居る。なら俺には、葬儀など茶番としか思えん」
『お茶番!? お茶会なら大好きです! ちゃんとお菓子用意してね!』
「ははっ、確かに・・・そうかも、しれないな」
水晶を見ながら答えた俺の言葉に、王女は苦笑しながら肯定していた。
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