第1546話、精霊の力?
「・・・ねえ、みーちゃ、もしかして、からだいたい?」
「つつくな。痛いに決まってるだろうが」
『うおおー、大丈夫か妹よー! ここかー! ここが痛いのかー! つんつんえばっ。あれ、何で兄だけ踏みつけられるの? 何で? 兄は心配していただけなのにー!』
限界越えの強化を複数回、しかも全力で短期間にやっている。
その上女王の攻撃を何度も食らったし、一発は直撃した。
あの魔力は随分と特殊なのか、治癒魔術をかけていても痛みが残る。
おそらくは身体的な損傷以外にも、何かしらの傷が残るのだろう。
化け物の体だからこそ耐えられているが、普通の人間なら死んでいるな。
いや、普通は直撃を喰らった時点で死ぬか。女王もそう言っていたしな。
「痛いだけで済むのが凄いと思うが。自らも使うから良く解るが、母上の力は私を越えていた。だと言うのに直撃を受けて生きているんだ。精霊付きの力は、改めて凄まじいと思ったよ」
あ? 王女は一体何を・・・ああ、そう言えばコイツ、未だに理解してなかったのか。
多分女王は気が付いていたと思うんだが、その辺りは伝えていないらしい。
まあ、必要無いと思っているのかもしれんな。俺に敵対しないのであれば。
「俺は精霊の力なぞ、女王との戦いでは一切使っていないぞ」
『兄はもっと頼られたいよ?』
「・・・は?」
「・・・へ?」
俺の返答に対し、王女姉妹は間の抜けた声を漏らした。
表情からも『何を言っているのか』という感情が良く見える。
俺の言葉を咀嚼し、その上で理解出来ないと言う感じだろうな。
「っ、い、いや、待ってくれ、あ、あの膨大な魔力が、精霊の力じゃないと言うのか?」
「そうだぞ」
『ふふふ、兄はもっと、こう、ほら、えっと・・・・すごいぞ?』
良い言葉が浮かんでこなかったな。どうせ言った所で聞こえてはいないが。
王女は俺の即答に狼狽え、また咀嚼に時間がかかっている。
「あ、あの土の棍の魔術の魔力は、全て自分の魔力なのか!?」
「そうだぞ」
『兄は土人形の方が好きかなー。棒はかっこよくないよね? 妹の妹もそう思わない?』
「シオは、ぼうもいいと、おもうよ?」
『そうだね! 棒もカッコイイかもしれない! 棒術カッコイイもんね!』
「うっ!」
一瞬で前言をひっくり返すな。お前は本当にその場のノリだけで喋るな。
逆にシオは流されずに意見を言う事が多くなったな。
好みが明確化しつつあるという所か。
王女はやはり信じられないのか、口をパクパクさせて何か言葉を探している様だ。
「じゃ、じゃあ、あの大きなネズミは!? あれこそ精霊の力か何かではないのか!?」
「アレも俺の魔術だ」
「「はぁ!?」」
今度は妹の方も声を荒げた。驚いた顔が姉妹そっくりだ。
いや、まあ、これに関しては気持ちが解るが。俺も似た様な感じだったしな。
意味が解らん魔術だからなアレ。精霊の顕現と言われた方がまだ納得出来る。
モルモットを、しかも自立行動可能な、魔術かどうか見た目では解らんモルモットだ。
触れば暖かいし、何なら内蔵の動きも感じる。必要無いのに、明らかに必要無いのにだ。
ガワだけ有れば良いだろうに、何故か生物とほぼ変わらん機能を有している。
思考もする様だし、その辺の草も勝手に食べる。自由に動く。まるで意味が解らん。
「プイプイかわいいよね。シオ、プイプイだいすき」
お前はそうだろうよ。俺は余り好きじゃない。出来れば使いたくない。
とはいえ有用な魔術なのは事実なので、これからも使う事になるんだろうな。
下手すると現状持っている魔術の中で、一番使い勝手が良いまであるのが嫌だ。
『兄は妹達が大好きだよ!』
『私は愛しい娘が一番愛しいわ』
『おーん? 何だ魚、兄の愛に勝てると思ってんのか? おん?』
『私の愛は娘一人に注がれている物だわ。妹達、などと、ましてや弟などと、他に目を向ける様な精霊に負ける気がしないわね』
『はー! これだから魚は! はー! 兄の愛は無限大なんですぅー! 兄は兄だから妹がいる限り愛は無限に広がっていくんですぅー! 一人だけにしか注げない魚と違ってね!』
『詭弁だわ。ならその愛を一人に注げばいいじゃないの』
『一人にしか注ぐ余裕のない魚と違うって言ってるの!』
そして姉妹達が呆けている最中、意味の解らん戦いをそちらで繰り広げるな。
俺の体の事は何処へ行った。実際痛いから休みたいんだ。
いや、それよりも食事が先か。全力で戦ったからか、やたら腹が減って来た。
「みーちゃ、プイプイだそう? そうしたら、あの、ぎゅっ、てなきごえ、きかなくていいよ? いたいなら、あるかなくてすむし。ね?」
そしてシオは自分の欲望を通しつつ、俺に利の有る提案をしてきやがった。
実に成長してやがる。誰を見て育っているんだか。どいつもこいつも自由だな。
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