【035】過ちが作り出した雲と、廃星と、一人と一機の夢

 宇宙が終の棲家となった遠い未来。人々の故郷であった筈の地球は、巨大なビジネスの場と化しておりました。

 最後に行われた全地球規模の戦禍で、衛星軌道上には夥しい数の浮遊機雷・無人兵器が回遊し、それは幾重にもなるリングを描いて、廃星となった地球を取り囲んでいます。想像以上のスケールです。


 これが莫大なマネーを生むのです。


 対人用では禁忌とされる、大量の兵器を積み込んだ重戦闘衛星が月のスイングバイで加速、地球へと向かう冒頭のシーンは圧巻でした。


 惑星間航行がありふれた技術となった未来のロマン。

 それは外ではなく、内にあります。


 先にお話しした事情で、もう数百年、地上を撮ってこれた者は居ません。無人機雷と兵器の雲を抜け、地上に辿り着ける衛星を作った者に与えられる栄誉……こんなスポーツの在り方を描いた作品があるでしょうか。


 資力もコネも無い主人公は、一風変わった衛星を地球に向かわせます。それは物理的・電子的な囮と速力に特化した、ただひたすらに逃げ切る衛星です。

 幼い頃から傍に居てくれたAIを、やむなく機体に組み込む。

 明るい別れのシーンは涙を誘いました。


 果たして、彼等は夢を叶えられるか。

 読んで、確かめてください。

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