第27話 私はばれてもいいよ?
「まじで、体育の時に落とし物? こんな裏手に落ちてなくね、普通?」
「うん、ヘアピンなくしたみたい。一応、見てみないと分からないでしょ。ここまできたんだし、ちょっと付き合ってよ」
どうやら探し物をしているらしい二人組。声の主が、誰であるかは美夜の方がすぐに気付いた。
「この声、クラスの子たちだ……、私がいつも一緒にいる子たち」
彼女は声をひそめながら名前を挙げてくれるが、クラスメイトの名前と顔が一致するほど、関わっていない俺にはどれも記号にしか聞こえない。
そんな人もいたような……くらいのものだ。
分かるのは、クラスメイトであるというのが、プラスの情報ではないことぐらい。
むしろ、一番遭遇するには面倒な存在だ。
さて、ここをどう乗り越えるか……。
俺が第一にやるべきことは、明白だった。
「とりあえず離れてくれるか?」
「いやだ、って言ったら?」
「いいや、どいてもらう。楽しんでる場合じゃないからな、どう考えても」
こうして二人でいることが露見するだけで、面倒くさいことになるのは必至だ。
変な噂が立って、クラスで発生するは強烈な思い込み。
付き合っていると誤解されるなんてことになったら、俺の明日からの学校生活は、暗幕が下りること間違いなし。
色んな人からの嫉妬や怒りを、無条件で買わなくてはならない。
高校二年生にして、人権はく奪状態だ(もうされている、という説もあるが)。
「私は別にばれてもいいんだよ。どうせ、いつまでも隠してるなんて無理なんだし? むしろ噂ウェルカム、とか思ってたりするし?」
ダメだ、美夜はもう完全におふざけモードに入っている。
こうなったら、説得する道をさがすより、俺の方でなにか解決への糸口を持付ける方が早そうだ。
もうすぐそこまで、彼女たちの気配は近づいていた。
俺は、あたりをきょろきょろと見回す。
そして、自分たちのいるスペースのすぐ横手、校舎と体育館の間に、ちょうど人が一人通り抜けられるくらいの細道を見つけた。
ここならば、もしくは……!
「ごめん、美夜。ちょっと手、借りるぞ」
俺は、手早く弁当を一度片付けると、いまだ肩に寄りかかっていた彼女の手を取り、立ちあがる。
細道へと彼女を連れ込んだ。
「…………山名、今」
「いいからしゃがむぞ、それから静かに頼む」
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