第58話 ⭐当日は⭐

天気の良い朝だ。

陽は珍しく緊張して寝不足だ。


碧は仕事で先に出かけて行ったので、ひとりで準備をする。

ハンガーにかけてある服に着替えた。

『陽、こっちのインナーの方が良くない?』

と、昨夜、碧はオーディションに着ていく服を用意してくれた。


コーヒーを入れて、碧が用意してくれた朝食をゆっくりと食べる。

(よし、やるしかない!)

気合いを入れて、上着を羽織り玄関を出た。




見たこともない、凄い人が集まっていた。

(あのFLY!!がメンバー募集!)

さすがにマスコミも反応していた。

テレビ局だろうか、カメラがたくさんある。


オーディションの記録としてのカメラマンもいて陽はかなり緊張していた。

オーディションの受付だけでも凄い列ができている。

この中から何人選ばれるのだろうか。


ボーカルなのか、パフォーマーなのか、それすらも公表されていない。

長い長い列に並び、受付をする。

『桜木陽です。よろしくお願いいたします』

『じゃ、書類を確認させていただきますね!この番号をよく見える場所に貼って下さい。オーディションの流れは順番に説明していきますね、あちらに進んで下さい。』


陽はキョロキョロしながら、言われた通り進んでいく。

『358番』陽の番号だった。

書類選考の応募人数はとても多く、書類選考で半分ほどになったようだ。

ここからが勝負だ!

とりあえずは1次審査を通過しなければ始まらない。

今までの積み重ねてきたものをここで出しきらなければならなかった。

いつもは碧の震える手を包んでいる陽の手は、今日は珍しく少し震えていた。


少しずつ少しずつ前に進み、審査員のいる場所に近づいていく。

(大丈夫大丈夫大丈夫!)

『はい次の方どうぞー』

陽は深呼吸をして前に出た。


『358番、桜木陽です!宜しくお願いいたします!』


陽は持っている全てを歌声に乗せて届くように歌った。


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