第21話 ⭐登校⭐
朝になると雨は止んでいた。
水溜まりを避けながら学校へと向かっていく。
いつも以上に碧の目線は低くなっていた。
陽は碧の後ろ姿を見つけて少しホッとした。
『おはよ』
いつも通り微笑んでみる。
『おはよう』
碧はいつも通りに挨拶を返した。
『今日は大丈夫?昨日休んでたし、体調悪かった?』
遠慮気味に陽は聞いてみた。もしかしたら、
何も話したくないかもしれない。
何となく、そう感じていたから。
『ぅん、ちょっとね!』
碧は足元を気にするように下を向いて答えた。
(パニック障害だなんて、言えないよ。)
『そっか。』
陽は迷ったが。
『背比べは?』
『ほいっ!』
碧は少し背筋をのばしてみた。
『おっ!やっぱりキレイだ!』
陽は少しホッとして微笑んだ。
碧も少し微笑みを浮かべた。
心の中は不安でいっぱいなのに、陽の姿を見ると少しホッとした。
いつも陽の後ろ姿を見ながら教室に向かうのだが、今日は少し並んで歩いた。
碧は気付いていた。陽はいつもより少しゆっくりと歩いてくれている。
何だか心がザワザワしていた。
(お薬飲んだから大丈夫だよね。。。)
碧は、ヒソヒソ話のメンバーといつも以上に距離を置いて過ごした。
(あんな怖い思いしたくない。。。)
思い出すだけでも怖くなる。
(大丈夫大丈夫。。。)
碧は自分に言い聞かせる。そして、視線を陽に向ける。窓から入ってくる風が、陽のサラサラとした前髪を揺らした。
不意に陽がこっちを見る。
碧と目が合うとニコっと微笑んでくれた。
(びっくりしたーーー!)
碧も少し微笑んだ。
薬はそんなにすぐに効果は出ないと聞いていたが、何事もなく1日を終える事ができた。
碧はいつものように教室に残り、外を眺めていた。
(あ、テスト前だから部活はないんだ。)
グランドにはいつものサッカー部も野球部もいない。
それでも碧は、のんびりと外を見ていた。
(もー夏だなぁ。)
窓から入ってくる風は、夏の匂いを運んでくる。
『今日は部活ないよー』
入り口から声がした。
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