16話 三限点


蚊神は人混みを避けながら後ろへと下がって行く。

それを人を突き飛ばしながら迫ってくるダール。


このバカゴミ!ここが※セイウチのシマだって知らねえのか?


※セイウチ

エルヴィス・リンスのあだ名

太っていて前髪が2本伸びているのをセイウチの牙みたいだと誰かが言ってからその名がつけられた。


突き飛ばされた人達は口々にダールの悪口を言いながら去って行く。


とりあえず……こいつ誰だ?

恨み買ってることは分かってるけどどいつだ?


ダールのスキンヘッドが太陽に反射する。


反射した太陽光が蚊神の右目に直撃する。

蚊神が目を少しつぶった瞬間、その一瞬をダールは見逃さなかった。


ポケットに入れていた右手を出して素早く蚊神の頬を殴りつける。


拳が空気を裂いて飛んでくるのを後ろに引いて避ける。


「あぶねえ。スキンヘッド攻撃あり?」


蚊神は避ける為に足を止めていた。

すぐさま蚊神の腹に向かってダールの前足が飛んでくる。


集点しゅうてん!!


発生させた力点ポイントを一点に集中させること。


集点を両腕に使い防御する。

しかし衝撃で少し後ろに飛ばされ通行人に当たる。


「おい!何してんだ。さっきから!」


蚊神はそのハゲた通行人を右目で少し見る。


まずいな。こんな所でやり合ってたら騎士団は来るしエルヴィスの配下の奴らが来たらもっとやばい。


ダールの左フックを少ししゃがんでかわす。

ダールの目は蚊神以外を映していなかった。


このバカは、俺を殺すことに命かけてんな。

ハゲを殺すなら21区に入ってから……いやワンチャン騎士団が来れば被害者を装うことも…


ダールはまた前足を繰り出す。


クソッ集点!


今度は蚊神は腹に力点ポイントを集めた。


また衝撃で少し後ろに下がったが通行人に当たらなかった。


辺りを少し見る。


まずい!俺らを取り囲んでやがる。

しょうがねえ。※点能力ポインタースキルを使うしかねえか──いやバカこんな人混みで使ったら能力教えてるようなもんだろ


点能力ポインタースキル


5話で生まれた時から職業が定められてランクもその時につけられる事を説明しました。


この世界の能力は大きく分けて2種類あります。


一つ目は"点能力ポインタースキル


これは5話で説明した増強型、補助型、妨害型、独創型の4つからなる力で生まれた時から型は決められていますが能力の内容は自分で考え決める事が出来ます。


二つ目は"職技ワーク


これは点能力ポインタースキルと違って職業によって決められた能力の事です。


例を挙げるなら蚊神空木が使った。

ファイルの能力(5話参照)

ダールを乗せた運転手が手を使わずに馬を走らせる能力(13話参照)

検問官の網の壁(13話参照)など


この能力はその職業の人間であれば誰でも使える能力の事でこれは変えられません。またランクが低い者は職技ワークすら得られない場合も多い。


………実は力点ポイントの仕組みなども物語に組み込もうと思ったのですが、そうなると2〜3章ほど先になるのでここで説明します。


まず基本の3つの点 "三限点さんげんてん


支点、力点、作用点です。


支点は力点ポイントを生み出す能力者のこと


作用点ポインター力点ポイントが能力を使う為に変化したもの。


支点(能力者)は力点ポイントを生み出し体外に力点ポイントを発生させて身を守るか身体能力を上げる事が出来ます。


体内にある力点ポイント作用点ポインターに変えられて能力に必要なほど生成され能力を使う度に消費されます。



これが基本の三限点です。



人混みに入りながら運送馬車が区間検問くかんけんもんをしているのが目に入る。


検問官は先程の眼鏡と寝癖だった。


ラッキー。あそこから出よう。


蚊神は集点を使い足に力点ポイントを集めて今度は後ろ向きに走るのをやめて区間検問の網の壁まで前を向いて勢いよく走った。


「テメェ逃げる気か!」


「お前、バカか?ここはニューロッズだぞ?」


「知らねえな」


運送馬車が検問を抜けようとしていく。


やばい!壁しまったら挟まれて逃げ場がなくなる!


「おい!壁開けててくれ!」


しかし蚊神の声を無視して壁は閉まり始める。

蚊神とダールは速度を上げる。


蚊神のすぐ後ろでダールの息遣いが聞こえる。


蚊神とダールは間一髪で網の壁を突破した。


「おまえら!ふざけるな!」


眼鏡の検問官が力点ポイントを発生させる。


「お前さんも一回きりだ。これは許され……」


ダールは左拳を寝癖の顔面に直撃させる。


「ぐ、ぐへえ」


「「こいつバカか?」」


眼鏡と蚊神の声が重なる。


「うるせえよ!」


ダールの回し蹴りが眼鏡の眼鏡に当たって割れて破片が飛び散る。


「……本当に死ぬ気で俺を殺すつまりなんだな」


ダールの目は闘志で燃え上がっていた。


「お前を殺すこと以外どうでもいい」


他の検問官が走って近づいてくる。


「ここじゃあ邪魔が入る。サシでやりたいだろ?」


「お前のその余裕そうな感じ、頭に来るぜ」


蚊神とダールは今度はいっぺんに走り出した。


とかなんとか言って後ろから俺をぶっ飛ばす可能性あるからな。こいつより速く走らなきゃいけねえのは変わらないか。


21区 労働の街 バアルリン 工場地帯跡地───


錆びて朽ちた鉄の残骸が転がる跡地で蚊神とダールは肩で息をしながら暫しどちらも動かなかった。


「はあはあ。見ろよここ。鉄と有刺鉄線とゴミとゴミしかねえ」


「………」


「はあはあ。ここまで来れば検問官も来ねえだろ」


蚊神は大きく息を吸った。

ダールはポケットからメリケンサックを取り出して右手につけた。


その瞬間、とんでもない量の力点ポイントが右手に発生する。


「う、嘘だろ。やべえ量の力点ポイントだな」


「これはお前の友達…ヴェニスから買ったお前を殺す為だけの武器だ」


「やっぱあいつか」


「名は"復讐者の手元リベンジ・ナックル"」


復讐者の手元リベンジ・ナックル


これは敵対者の手元エネミーガントレットが相手の敵対心によって威力が上がるのとは反対に自分自身が相手に抱く敵対心の大きさによって威力が変わる。


「俺に相応しい名前だとは思わねえか?」


「……そうだな。出し惜しみは出来ないな。本当に殺されちまうよ」


蚊神は体内にある力点ポイント作用点ポインターに変えて生成する。


「やるか」


蚊神が力点ポイントを発生して窃盗猫ロブキャットを生み出す。


蚊神空木 


【探偵 ☆4】 点能力ポインタースキル 補助型 


能力名 "犯罪者の動物達クライムアニマルズ

3種類の動物を召喚して使役する能力。

作用点ポインター力点ポイントを両方使うのでいっぺんにたくさんは召喚できない。


一体目 窃盗猫ロブキャット


ペルシャ猫の形をしていて色を自由自在に変えて景色に同化する事が出来る。

相手の意識からも消え去る事ができる。

また触った相手、攻撃した相手の情報を取得する事もできる。

窃盗猫ロブキャットを破裂させると取得した情報が紙状になって出てくる。


二体目 ???


三体目 ???

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