第12話 決戦

 間一髪で間に合った。

 バグベアと剣士の間に入り、左腕にストレージをまとい防いだのだ。

 俺のストレージの使い方は特殊だ。

 他にスキルがない分、工夫しないと強くなれない。


 ストレージは生き物をできない。

 これを利用し部分的にストレージでおおうのだ。

 そして物理攻撃は受け止めて衝撃はする。

 これならどんな攻撃も防げる。

 だが欠点は異常に魔力を消耗することと、部分的にしか纏えないことだ。

 

 MP130⇒125⇒120⇒115⇒110⇒


 今の魔力量では続けて纏うと、30秒も持たない。

 立ち上がったバグベアの柔らかい腹に風をまとった剣を刺す!


「「「「 グゥォ~~~~ン!! 」」」」


 苦しさのあまりバグベアは両腕の爪を振り回す。

 ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!

 爪を受けるたびにMPが減っていく。


 MP110⇒105⇒100⇒95⇒90⇒85⇒80⇒75⇒


 右手で剣を押し込み左手で、ハエ叩きのようにバグベアの腕をいなす。


 やばい、やばい、やばい。

 俺は焦った。


 後ろを見ると剣士は左腕の傷のためか、うずくまっている。

 剣士が逃げてくれないと、バグベアと剣士の間にいる俺は動くことが出来ない。


 収納防御は攻撃を防ぐことは出来るが、それだけだ。

 MPが無くなったら終わり。


 魔法?MP?そうだ!


 MPを見るとMP70⇒65⇒60⇒55⇒50⇒


 出来るか俺?

 俺は腹に刺さっている剣を右手で持ち、生活魔法:火で青い炎をイメージし剣伝いに流し込んだ。


「「「「 グワォ~~~~ン!!! 」」」」


 バグベアは苦しみだし肉の焼ける臭いが立ち込め、両腕を目茶苦茶に振った。


 そして剣を持つ手が異常に熱い!

 「あち、ち、ち、ち、ち、ち!」



「魔法剣?!!」


 剣士が何かを言っている。


 一気にMPの消費が激しくなった。

 MP50⇒40⇒30⇒20⇒

 

 バグベアの動きが散漫になった。

 このすきに俺は一旦距離を取り、ストレージからマジックポーションを出して飲んだ。

 ゴク、ゴク、ゴク。

 体が青白く光りMPが10回復した。


 その時だった。

 「「「「 パキッ!! 」」」」

 剣が溶けて折れたのだ。


 【スキル】世界の予備知識が教えてくれえる。

 青い炎になるのは温度が約10,000℃から、そして剣である鋳鉄は1,200℃程度で溶けます。

 今さらですか。


 バグベアはうずくまり、苦しそうに泣いている。

 お腹の中で鋼が溶け内臓が焼かれているはずだ。


 可哀そうだがMPがもうなく、楽にしてやれるすべが俺にはない。

 俺は剣士の脇の下に手を入れ、引きずりながらその場から離れた。



 「クゥ~~~~ン」


 そして段々とバグベアの鳴き声は小さくなり、ついには動かなくなった。



 俺はストレージからハイポーションを出し、剣士の腕と足の傷にかけてやった。

 徐々に肉が盛り上がり、治っていく。

 不思議な光景だ。

 まるで巻き戻しを見ているようだ。


「大丈夫ですか?」


「バグベアは死んだの?」


「えぇ、死にました」



 そこにはバグベアに飛ばされた時に見た黒髪、黒い瞳の少年がいた。

 私は身を起こし、お礼を言った。


「ありがとう、助かったわ」

 バグベアにやられた左腕と足を見ると、防具は引き裂かれてはいるが治っていた。

「これは?」

「余計な事ですが、ハイポーションを持っていたので治しました」


「えっ!」


 ハイポーションは高い。

 1本5,000円はする。

 冒険者のE、Fランクなら1日3,000円くらい稼げれば良いほうだ。

 そして宿屋と食事代に消えていく。


 冒険者が稼げるのは魔物を討伐し、素材を売ることだ。

 だが毎日は討伐できない。

 それを見ず知らずの他人に、ポンと使うなんて。


 あぁ、なんて崇高な人でしょう。

 この人の見る視線の先を、私も一緒に追っていきたい。


 我ら虎猫族は仁義を尊重する。

 受けた恩は末代まで忘れてはいけないのだ。

 気が付くと私は両手を胸の前で組みながら話していた。


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