第11話 バグベア

 今俺は冒険者ギルドにきている。

 朝の混む時間は避け、掲載された依頼書を見ている。

 するとライオンラビット討伐依頼が目に入った。

 冒険者レベル、討伐個体数不問。達成期限なし。


 ほう、誰でも受けることが出来て達成期限の制限もない。これはいい。


 ライオンラビットの肉は美味しく、毛皮は高く買い取ってもらえるようだ。


 依頼書を手に持ち受付に向かう。

 すると後ろから声を掛けられた。


「おい、坊主。その依頼は厳しいぞ」

 振り向くとベリーショートでコンサバな、24~5歳の角刈りのお兄さんが居た。


「えっ、どうしてですか?」

「まだ新人だな。ライオンラビットは臆病で素早いんだよ。弓を構えた瞬間にはもうどこかに逃げていないのさ」

「そんなに早い?」

「だから『達成期限なし』になっているのさ」

「そんな~。でも捕まえられる、人もいるんでしょ?」

「だが罠をしかけても中々掛かることはない。だから報酬が高いのさ」

「そうなんですか。ガッカリだな」

「あはは、そうショボくれるなよ。もしやるなら、他の依頼と合わせて受けるのも良いぞ」

「そうか。ライオンラビットは駄目でも、他の依頼で稼げばいいのか」

「そう言うことだ。期限があれば複数依頼を受けることも可能だからな」


「相変わらずコンラードさんは面倒見が良いですね」

 俺担当の受付のアリッサさんが言った。

「あはは!新人は何も分からないから、誰かが教えてやらないと。ほっておくと死んじまうからな」


 どうやら新人の面倒を見ているらしい。


【スキル・鑑定】簡略化発動

 名前:コンラード

 種族:人族

 年齢:25歳

 性別:男

 職業:剣士

 レベル:32


「俺でも出来そうな依頼はないでしょうか?」

「そうですね、Eランクだと常時依頼のゴブリン討伐、薬草採取くらいでしょうか」

「街中の依頼もあるだろう」

「街中ですか?」

「あぁ、街の外の依頼ばかりだと危険が多からな。街中の依頼は安いが危険が少ない。孤児達や12歳くらいの子供たちが受けるのに丁度いいのさ」

「そんな依頼もあるんですね」

「ま、1件300円くらいだがな」

「う~ん、それだと。やっぱりゴブリン討伐、薬草採取を受けることにします」

「まあそうだな。気を付けて行って来いよ」

「はい、ありがとうございます」


 依頼書を受付に出そうとしたら、

「ゴブリン討伐、薬草採取は常時依頼がでているから、依頼書は後からでいいのよ」

 と、アリッサさんに言われた。

「では、行ってきます!」

「いってらっしゃい!」

 俺はアリッサさんに手を振り、ギルドを後にした。


 町の外に出て森に入った。

 トロールを倒してからレベルが上がっていた。


「ステータスオープン!」

 名前:エリアス・ドラード・セルベルト

 種族:人族

 年齢:15歳

 性別:男

 職業:創生魔法士

 レベル:7

 HP 55→80

 MP 105→130

 筋力  22→31

 攻撃力 22→30

 防御力 42→58

 知力  52→67

 器用さ 22→31

 素早さ 42→53

 運   52→61


 状態:良好


【スキル】

 生活魔法(火・水・氷・風・光):LV1

 世界の予備知識:LV1


【ユニークスキル】

 異世界言語

 鑑定

 時空間魔法ストレージ(カスタマイズ可能):LV1

 発展スキル:収納防御:LV1


【メンタルスキル】

 沈着冷静:LV1

 高速思考:LV1

 魅力(人から好感を持たれる。発動しないこともある)


【加護】

 女神ゼクシーの加護

 愛し子


 防御力と知力の伸びが他より良い。

 高速思考で考えストレージの防御技を使ったからか?

 その系列の能力を使うと伸びやすくなるのだろうか。

 今後の課題だな。

 職業、創生魔法士てなんだ?

 そしてストレージの防御技を俺は『収納防御』と名付けた。


 俺は森の中を歩き薬草や果物を探した。

 せっかくストレージがあるのだ。

 売れるものや食べれるものは見つけておかないと。


 そして森の中ほどにブルーベリーの木が密集しており、たくさんブルーベリーが生っていた。

「おぅ、これは大量だ!」

 俺が夢中になってブルーベリーを採っていると、何か争う音がした。


 小走りに音のする方に近づくと魔物と冒険者1人が争っていた。


【スキル・鑑定】簡略化発動

 名前:バグベア

 種族:熊型の魔物

 性別:オス

 レベル:22



 冒険者は女性のようでおおがらな剣士だった。


【スキル・鑑定】簡略化発動

 名前:オルガ

 種族:虎猫族

 年齢:17歳

 性別:女

 職業:魔法剣士

 レベル:31


【特徴】

 虎のような縞模様を持つ猫族。

 動きが機敏で攻撃力も高い。

 力だけではなく魔法にも長け、虎族に劣らない能力を持つ。

 

【状態】

 右足に損傷あり



「グワ~~~!!」

 2mくらいあるバグベアが2本足で立ち威嚇する。

 


 剣士が魔法を放ち、その隙に切りかかる。

 先ほどからそれを繰り返している。


 だがいつまでも、それは続かなかった。

 どうやら剣士が足に負傷をしているらしく、動きが散漫になってきた。

 そしてバグベアの目を剣士が切った瞬間、痛みのあまりバグベアが右手を払った。

 その払った右手が剣士の左手をえぐったのだ。


「きゃ~~~!!」

 剣士の声が響く。

 剣が飛ばされ、横に倒れた。


 必死で剣士は逃げようとするが動けないでいる。


 駄目だ、やられる。


 冒険者は魔物を倒し報酬をもらうのが仕事だ。

 そのため、助けに入ったつもりでも、横取りと思われることもある。

 だからむやみに助けにも入れない。


 でも死んでからでは、助けられない。


 俺はロングソードを抜き、風魔法を真空状態で剣に纏うようにイメージした。

「助太刀します!」




 うずくまったオルガは、バグベアの右手が大きく振りかぶるのを見た。


 あぁ、もう駄目、やられる。


 だがいつまで経っても衝撃は来なかった。


 目を開けるとそこには美形で黒髪、黒い瞳の少年。

 なぜか人の心を引きつける、雰囲気を持つ少年が立っていた。


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