第10話 報酬

 冒険者ギルドに戻ってきたのは午後だった。


 受付のカウンターで依頼書に完了のサインをしようした。

 すると赤い翼のリーダー、アドレーさんに止められた。


「俺たちは護衛の務めを果たせなかった。それにハイポーションの借りもある。だから今回は未達成で構わない」

「いいえ、十分アドレーさんたちは役立ちました。トロールのことはイレギュラーですから」

 そう言うと俺は依頼達成のサインをし受付に渡した。


 そして俺が受けたゴブリンの依頼は、俺が討伐したのが2体で討伐部位の右耳を2つ出した。

「ゴブリンですね。2体で2,000円になります」


「あとはトロールの買取をお願いしたいのですが?」


「トロールですか?!少々お待ちください!!」


 その声に周りがざわついた。

 すると俺が受付をした時の女性が呼ばれ、担当が代わった。

「トロールを討伐されたとか?そんな近郊に出没するなんて」

「ハグレだったようです」


「ハグレですか!よくご無事で」

「はい、『赤い翼』の皆さんと一緒に倒したのです」

「一緒にですか、そうですか。では討伐部位を出して頂けますか?」

「討伐部位ですか?どこが部位なのか分からないので、そのまま持って来ましたが」

「そのまま持って来た?」

「はい、ここに!」

 そう言いながら俺はバッグを叩いた。


「マジック・バッグをお持ちなのですね!では解体場はあちらになるので、そこで出してもらえますか?」

「分かりました」

 そう言うと俺は場所を移動し解体場にトロールを出した。


「うっ!!」


 頭が潰れたトロールを見て、受付のお姉さんは顔をしかめた。

「いったいどうやれば、こんな風に…。では査定が終わるまでお待ちください」

 そう言われしばらく待った。


「エリアス様、お待たせいたしました。査定が終わりました。素材(主に肉)と魔石で合わせて60万円になります」

 

(60万円か。生きるか死ぬかで60万とは。高いのか安いのかだな)


「ありがとうございます」

 俺は60万円を受取り赤い翼のメンバーのもとに戻った。



「トロールの買取り額が60万円なので一人当たり12万円ですね」


「いいや、俺たちはいらない」

「そう言うわけにはいきません。みなさんの防具も損傷しているので、もらって頂かないと困ります」


「悪いな、あんちゃん」

「アドレーさん。あんちゃんではなくエリアスです」

「あァ、悪い。エリアスだったな」

 アドレーさんは俺にそういわれ頭を掻いた。


 後で聞いたがギルドで受付をした者が、その冒険者の担当になるそうだ。

 ギルドも売上が無いと成り立たない。

 冒険者の意欲を上げることにより、売上が上がり担当も報酬が出るんだと。

 ま、会社だからね。

 ちなみに俺の担当はアリッサさんという人だった。


「じゃ、エリアス君」

「「またな~」」

「なにかあったら遠慮なく、言ってくれよ~」

 赤い翼のメンバーと別れ俺は宿に戻った。



「ただいま~!」


「おかえり~!エリアスお兄ちゃん」

 アンナちゃんが迎えてくれる。


 厨房に行きビルさんと調理担当のマドックさんに、森で採れた山菜やキノコをストレージから出して渡した。


「こんなに採れたのかい?助かるよ」


 そしてその夜も店は大繁盛で、お客は山菜やキノコ料理に舌鼓を打つのだった。


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 魔物図鑑:はぐれトロール

 特徴:集団から逸脱しやっと1人になれたのに、涙が出てくる寂しがり屋さん。

    寂しい夜は1人に耐え兼ね突然、雄たけびを上げることも…

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