町の本屋さんの消滅

 あなたの町には本屋さんがありますか?

 巨大ショッピングモールの本屋さんではありません。自宅から気軽に行ける距離の、こじんまりとした本屋さんのことです。

 わたしの町にはそういう意味での本屋さんは消滅してしまいました。

 巨大ショッピングモールの本屋さんか、駅前の大き目の本屋さんしかありません。本屋さんには違いないのだけど、気が向いたときふらっといって、ちょっと物色して買わずに帰ってもいいような、そんな本屋さんはなくなりました。

 町の本屋さんは狭いスペースを工夫して使い、その店が売りたい商品を並べたり、季節感に合わせたディスプレイをしたりと、行くたびに少しずつ様子が異なるのが魅力的でした。また、本の並びもだいたい覚えていて、どこに何があるのかよく分かっていて、現物を見て探しやすいところもよかったです。

 でも、そういう町の本屋さんは消滅してしまいました。少なくとも、わたしの近くからは。


 本屋さんが次々に消えていっている。

 これが何を指すか。

 紙媒体での本、出版物が売れなくなっている、ということをとても分かりやすく表している。

 スマホの普及が本離れを加速的に促したと思う。

「ネットになんでもあるからいいや」という思考である。

 ネットには本当になんでもあるのか? 果たして。

 わたしはそうは思わない。

 むしろ、要らない情報ばかりが多く精査するのが大変なだけで、本当に必要な情報が埋もれてしまっているように感じる。したがって、LINEもTwitterもInstagramもフェイスブックも見ないのである。(まあ、最近Twitterは「更新しました」だけつぶやいているけれど。)

「なんでもある」は「何もない」と同義語のように思える。


 さて、それで。

 出版業界は存続するために、ネットの世界に飛び出した。電子書籍だ。

 多くのひとはスマホで隙間時間に見ているのだと思う。

 この間、カクヨムをスマホから見てみて、ほほう、こんな感じかと確認した。

 読むだけなら、パソコンからよりもスマホからの方が読みやすいかもしれない。紙媒体が大好きなわたしでも。なぜなら、パソコンは文字が大きくて、読むスピードが遅くなるからだ。スマホの方が速く読める。

 そう。

 ネットで見る文章って、「味わう」のではなくあくまでも「暇つぶし」「ちょっとした楽しみ」であり、そこには「速さ」という要素も重要になってくると、わたしは思う。難解であってはいけないのだ。さらさらとスライドして読めるような文章でなくては。誰も味わい、しみじみ考えることなんて望んでいない。むしろ、思考停止するために読む。


 カクヨムで上位に来ている作品は、そういう現代の出版事情にマッチしたものだとわたしは思っている。それが悪いのではなくて、今はそういう流れなのだということ。そして、さらさらとどんどん読んで、現実逃避出来るようなものは、それはそれでとてもいいとも思っている。わたしはそういう、漫画的小説も好きである。そういうものと思って楽しむのだ。

 出版社も潰れてしまってはどうしようもないので、いかに売れるか、に心血を注いでいると思う。

 カクヨムは出版社にとっては、いい宣伝の場所でもあるんだなと思っている。うまいやり方だ! と称賛を送っている。


 ところで、わたしの睨んでいるところ、現在紙媒体で最も売れている小説はライトノベルだと思う。角川つばさ文庫なども含めて。

 なぜなら、現在、小学校から高校(中学?)まで「朝の読書」の時間があり、子どもたちは毎日朝読書をしているからだ。子どもたちはどこでその本を手に入れるのか? 図書館の子もいるだろう。でも、今の親なら「学校で必要なんだ」と言われれば、また「本を読んでくれるなら」と、本の一冊くらい買い与えると思う。したがって、角川つばさ文庫や青い鳥文庫系列のもの、そしてライトノベルがよく売れるんじゃないかと思っている。そして、その本は薄くて、なるべく読みやすい文字の大きさでなくてはならない。分厚かったり、文字が細かかったりすると、手に取ってもらえないから。また、表紙や挿絵もこころ惹かれるものでなくてはいけない。手に取ってもらうために。


 わたしは読書の入り口として、ライトノベルも角川つばさ文庫系もありだと思う。

 何も読まないより、ずっといい。

 Twitterのように、文章とは言えないものを読んでいるだけより、ずっといい。

 子どもたちがそこから入って、どのような広がりを見せるかは、その子次第だ。願わくば、日本の古典や明治の文学なども「おもしろい」と思える子が少しでもいますように。日本語の美しさに感動出来る子が増えますように。

 そんなふうに思っている。


 カクヨムの中を少しだけ探検して、十代の若いひとも書いていることが分かった。

 なんだかそういうのも嬉しいなと思う。

 若いときにしか書けないことって絶対にあると思うから。


 ところで、紙媒体の本も売れるものは売れているよね。『鬼滅の刃』然り。『呪術廻戦』然り。漫画が多いけれど、『スマホ脳』もよく売れただろうし、映画化された小説も売れているんじゃないかな。

 そうして、少しでもヒット商品が多く出れば、また次の本が出版される。だからわたしは流行は流行でいいものだと思っている。


 出版社がなくなりませんように。

 紙媒体の本がなくなりませんように。

 本当に祈っているのである。

 

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