第12話 二人の活動 優先順位決め。

二日目の夜 


 疲れた。


「お疲れ様」


 アイリーもお疲れ様、手伝ってくれて助かったよ。鑑定が有り難かった。


「いいのよ、二人のお財布だもの、私も力に成れて良かったわ、思わぬ副業を得られたわ、部屋の掃除とお医者様ごっこ兼情報収集」


 四組のパーティの治療を終えて、俺たちはダブルベッドの上で、浄化とクリーンを互いにかけて腕枕をしていた。


「彼らはレベル15~25くらいの冒険者だったわ」


 それでも倒せない魔獣がいるんだろうな。当たり前だけど。上には上がいる。明後日、冒険者ギルドでの初心者講習会で、魔獣の分布図や注意点をしっかりと聞いておこう。少なくとも今日、怪我をしたパーティたちからは、場所と魔獣を教えてもらった。良くここまでたどり着けたものだ。


 俺たちは二人だけど、無理はせず、確実にやって行こうと、再度二人で確認しあった。無理のないレベル上げと、スキルレベル上げ、そして新しいスキルの獲得。金稼ぎ。宿確保。つまり優先順位を決めておこう。


「一、宿30日分の確保、二、金稼ぎ、三、スキルレベル上げ、四、レベル上げ、五、新しいスキルの獲得、六、風呂付の家を買う、七、ゴールは互いの声と目の治療。最後に、強盗団退治」


 了解。欲張りセットだな。ははは。


 そういえばさ、他の四人。ほら、転生で六人組だと女神様が話していた他の四人。彼らと出逢ったら、どうする?


「あら、手を繋いでいないから、敵対する恐れがあるのよ、他人でいいんじゃない、たとえ互いの事が認識できたとしても」


 わかった。そうしよう。そういえば、手を繋いだ相手は絶対に敵対しない。他は、味方ではない。その決定でブレなくていいな。


「そうだ、私の目とあなたの喉に、回復ヒールをかけましょう」

 うん。


回復ヒール

回復ヒール


「昨日よりも、効いた気がするわ」

 昨日よりも力を込めたからね。


「ねえ、初心者講習会で、パーティを誘われたらどうする?」

 初心者だよね、申請してくる相手は。


「そうね」

 危なくないかな。それとも、このタイミングを逃したら、パーティを組めなくなるかな。いつかダンジョンには行ってみたいけれど。二人だと現実的ではないよな。


「うん、相手次第でいい?ひょっとしたら杞憂で、私たちなんて相手にされないかもしれない」

 手持ちのスキルを開示しなければ、相手にされないかもね。


「そうなのよね。まあ、相手次第ということにしましょうか」

 ああ、最低でも男女ペアがいいな。どっちかに偏ると、しんどそうだ。食事とかの手配が。


「ああ、それはそうね、うん、そうしましょう。でも女の子二人でハーレムパーティでもいいわよ」

 それは勘弁してくれ。こうして二人でイチャイチャしている方が俺は好きだ。


「あら、意外だわ」

 どうして?そんなに女好きに見えるか?


「ん~趣向というよりも、本質的に男のヒトってハーレムに憧れるのかと」

 人に依るんじゃないかな、今はそんな気分にはとてもなれないな。自分の事で精一杯だ。


「私が、逆ハーレムを望んだら?」

 家出するよ。泣きながら。


「あはは、冗談よ、でもあなたがもっと強く成れるなら、私はあなたがハーレムパーティを望んでもいいと思うわよ」

 気持ちだけ受取っておくよ。コスプレでもして、人数分アイリーが俺を楽しませてくれ。


「縫製Ⅱのスキルで衣装が作れるかも、どんなコスプレが好き?JK?ナース?それともメイド?それともアニメとか漫画の世界とか?」

 うーん。それほど詳しくはないんだよ、アニメは。アイリーが着てみたい服装でいいよ。ひょっとしたら、この世界にも前世を越えるアパレルの世界があるかもしれない。


「どうかな。それも楽しみね」

 ああ。


「ねえ、毎日キスをして3ポイント稼げば、年間1095ポイントよ」

 凄い世界だよな、10年で1万越えかよ。


「お互いが求め合えばね、おざなりのキスだと、ダメなんじゃないかしら」

 ああ、そうか、やればいいってものでもないのか。


「ねえ、ベルン」

 うん?


「ここにも回復ヒールをかけた方いいんじゃない。元気がないわよ」

 やっぱりそう思うか?ベルンのここってまだオッきしたことがないんだよ。大丈夫かなこの体。


「精神的な影響もあるのかしら、鑑定でも状態異常はなかったわよ」

 まあ、初日、死体の中で目覚めたからな。二日目だから焦らなくていいよ、別の方法でも十分ポイントは稼げるから。


 俺は彼女を抱き寄せて、キスをした。そしてもう一度抱きしめた。


▽ステータス 二日目

アイリーミユ

HP:181(+3)


ベルンハルト

状態:正常。

HP:181(+3)


宿泊32日分、所持金55000G


三日目の朝


 俺とアイリーは相変わらず、20部屋のクリーンと浄化Ⅱをしている。


「昨日はお楽しみじゃなかったの?」

「ええ、二人とも緊張しちゃって、まだなのですよ」


「わかるわー私も最初はうまくいかなかったからね、そういやあそこに回復ヒールをかけると二回戦に行けるという噂よ」

「あは、今度、彼にも伝えますね」


 ソフィアとアイリーの会話だ。ちなみに俺はここにいる。空気だ。


 足の膝の皿を割った冒険者たち以外は、今日も出発したようだ。彼には今日も回復ヒールをかける予定だ。代金は無料でいいと伝えてある。彼も喜んで、無理をしない様休息を仲間に勧められて大人しくしているようだ。

 そういえば、昨日の四組のパーティは、いずれも男女半々のパーティだった。そういうことなのだろう。お察しだ。


 この日も宿屋の掃除を済ませると、のんびりと過ごした。そして夜またもノックをされ怪我人の手当てのため階下に降りた。


 一人目は、レッドスライムにやられたらしい、女の子だ。右半身やけどしている。顔も爛れたように真っ赤だ。治せるかな。回復ヒールをかける、傷は見る見るうちに治った。ほっとした。仲間も、彼氏も、そして本人が鏡をみて大喜びで俺に抱き着いてしまった。俺は両手を上げて無実の降伏ポーズだ。いい匂いがするかと思ったが臭かった。クリーンをサービスした。


 二人目は、ブルースライムの酸にやられたようだ。右目を押さえている。どうやら川の水をかけたようなのだが、心配だ。回復ヒールをかけた。効いたようだ。いちいち結果にビビってしまう。でも、視界も確保できたようで、一安心だ。特異種のスライムは強いんだなと思う。


 あとで、アイリーに聞くと一人目も二人目もレベル10を越えているという。それでもレッドとブルーにやられるのか。門番の人が、勇気があると云われたのも納得だ。


 三人目は、一角ウサギに腹を刺されたらしい。おいおい。ぼたぼた血が落ちている。クリーン、そしてアイリーの浄化。最後の俺の回復ヒール。止血ができた。一安心だ。

 ヤバいな一角ウサギの角。一角ウサギはレベル8前後だという。マジか。俺たちもこの一撃の致命傷に気をつけよう。


 最期に、膝の皿のヒトを回復ヒールした。


 明日は、冒険者ギルドの初心者講習会だ。


 この夜も、二人で抱き合ってキスをした。いい感じなのだけど、下半身はスリープがかかっている。大丈夫かベルン。


▽ステータス 三日目

アイリーミユ

HP:184(+3)


ベルンハルト

HP:184(+3)


宿泊41日分、所持金79000G

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