第二章 ドルレアンの街

生活拠点づくり

第10話 ドルレアンの街 冒険者ギルド

 ドルレアンの街に入ることが出来た。


 俺とアイリーは手を繋ぎ、道の真ん中を歩く。


「どんな街の様子か教えてね」

 

 ああ、街の大きさは1キロ四方だな、正方形か円形なのかはわからない。今、通っているのは、北門から真っすぐ南に向かう街の中央に続く道だ。巾は、5m。街道と同じ広さだ。商人が馬車を使うのかもしれない。ところどころに轍がみえる。道路は変わらず土だ。


「家の感じはどう?」


 ここらあたりは、商店が多いのかな。露店というか、入口の扉の無い店の前に、野菜棚や衣服、靴屋が、ワゴンで売っている。


「野菜が売っているの?」


 ああ。根菜と葉菜だな。キャベツっぽいのと、ネギ、キュウリ、芋、色々あるな。食べ物があるということに驚きだな。まあ、いつでも来られるからな。通り過ぎるぞ。


「うん、店の種類を教えてね」


 うん。色々あるな。人通りが多くなってきた。ぶつからない様に俺は後ろ手にして、俺の後ろを歩いてもらった。手は繋いだままだ。鍛冶屋っぽい店の前に、包丁や鍋、あとは農具?鍬や鎌のようなものもある。鉄が製品、商品化されている。こちらは木製の小物売り場。皿やコップ、木製のスプーンか。布単位で売る店もあり、中古服のような服も売っている。ここら辺りが商店街なのかもしれない。


 ヒトの群れを抜けた。


 人は、背が低かった。彼女と同等、140㎝前後の人たちだ。恰幅の良い人はいない。みなやせ型に見える。服装は俺たちの来ている服とさほど変わらない。いわゆる巻頭着にベルト、違うのはスカートかズボンかといったところ。何故か、男女のペアが多い。そしてみな、若い。


「うん、ぶつかった時に鑑定したけど、15~20歳くらいの人が多い。成人だからかな、何で男女ペアなのだろう。門番の人たちも男女二組だったわよね」


 ああ、ひょっとすると性交事情でエネルギー切れにならないよう、日々ペアで組んでいるのかな。いつか誰かに聞いてみたいな。


「そうね」


 この辺りは、宿屋と飯屋だな。飯屋には、一人あるいは、男性だけ、女性だけのグループに分かれている。男女の組み合わせはいない。


「へえ」


 宿は、幾つかあるな。木造建てか、レンガ造りか、白とレンガ色の建物が多い。三階建てはないな。宿屋は二階建てのようだ。あと、酒場、娼館、奴隷商か。表通りにあるということは、国公認の施設かもしれないな。


「そうね、行ってみたい?」


 二人で行けるとこならいいが、今のところ金がない。パーティを雇うなら、奴隷とか小説では聞いたことがあるが、まあ、当分は先立つものがない。


「確かに、出来る仕事があるといいのだけれど」


 鑑定があれば、だいたいの事は上手くいくんじゃないかな。どこかに所属するか、誰と組むかでどうなるかわからないがな。まずは、二人で生活が続く目途を立てよう。


「ええ」


 この辺りはギルド街かな、商業ギルド、木材ギルド、衣料ギルド、錬金ギルド、色々あるな。診療所かな、あとは鍛冶ギルド、お、冒険者ギルドっぽいのがあるぞ、行ってみよう。


「ええ、登録料が必要なのかしら」


 成功報酬から引いてもらえるよう交渉しよう。文無しだ。恥じることは無い。左右開きの扉を開いて、中に入っていく。カウンターが三つ。中には職員のような制服を着た人が、1.2.3.4.5.6人いる。受付に三人、中で事務処理っぽいことをしている人が二人、あとは、素材を見ている人が一人だな。どこに並ぼうか。


「カウンターまで連れて行って、ここからは私が話すわ」


 おう、頼んだ。


 俺は、彼女の手を引き、誰も並んでいない女性職員の前に進んだ。


「ようこそ、ドルレアンの冒険者ギルドへ、私はファリナ。こちらは登録専用の窓口です。新規の登録ですか?」


 俺は頷き、彼女を前に出した。


「二人の登録をお願いします」

「かしこまりました。それではこちらに手を乗せてください」


 何やら、用意された機械の上に手を乗せると、ピカッと光りそれで手続き自体は完了した。ギルドの内容説明は、1週間ごとに新人を集めそこで行うということで、冒険者カードを受け取った。

 次回の説明会は明後日のお昼からということだ。こちらのギルドの二階に来てくださいと云われた。


 あとは、持ち込んだ魔石も、薬草類もあっさりと売れた。


 ファリナの話では、スライムは倒しても、通常は魔石が無いことが当たり前なのだという。ブルー系も、レッド系も特殊個体だという。良く倒せましたね、と門番と同じことを云われた。いやいや普通に踏みつぶしたのと石を叩きつけただけなのだが。戸惑ってしまった。

 やはり魔道具の燃料になるらしく、レッド系は火。ブルー系は水で、需要はいくらでもあるので今後もお願いしますと云われた。それでいいならいくらでも取ってきたいな。


 レッド系は、ひとつ大白銅貨1枚、ブルー系は白銅貨8枚となった。薬草は10枚単位で白銅貨5枚。毒消し草は白銅貨7枚、ポーション素材の薬草は大白銅貨1枚となった。通貨単位が分からないな。受け取ったのは、大白銅貨2枚と白銅貨20枚だ。あとでアイリーに鑑定結果を教えてもらおう。


 ファリナに二人で一部屋の宿屋を紹介してもらった。一泊食事つきなら白銅貨5枚。食事なしなら、白銅貨3枚だという。食事なしの宿を10日分払うと11日泊まれるらしい。


「白銅貨30枚は、大白銅貨だと何枚?」

 恥を忍んで通貨の単位について教えてもらった。


 大白銅貨1枚(5000G)で白銅貨5枚(1000G×5)、つまり、先ほど受け取った分がちょうど、10日分の白銅貨30枚分だという。なるほど、理解できた。


 金貨より上の単位もあるらしいが、冒険者ギルドでは扱わないようだ。また小白銅貨よりも小さな単位で鉄貨があるようだが、これも取り扱わないらしい。どうやら錆びて判別できない場合があり、かつ。偽造しやすいからだという。なるほど。


 アイリーからは、手つなぎで、G《ゴールド》換算で教えてもらった。


金貨 100,000G

銀貨 10,000G

大白銅貨 5,000G(2)

白銅貨 1,000G(20)

小白銅 500G

鉄貨 100G


 なるほど、今ので、銀貨三枚(30000G)の取引か。外国人が苦労するはずだ。計算Ⅲを持っている彼女に金の管理は任せよう。ついでに古着や靴が売れるか聞いてみよう。売れるようだ。村に帰ったら、村のタンスとかに古着がないかな。強盗団が持って行ったあとか。


 とりあえず、古着店に持ち込むといいと云われたので、帰り道に立ち寄った。最低限の布を残して、靴と古着30人分で、銀貨4枚と白銅貨3枚。43,000G。


 意外と高く売れた。売値はもっと高いのかもしれない。それも尋ねると二倍から三倍で売れるらしい。食費がかからない俺たちが金を使うのは宿代くらいか。


銀貨 10,000G(4)

大白銅貨 5,000G(2)

白銅貨 1,000G(23)


 所持金73,000G也。なるべく小銭から使おう。重いからな。3万G分を支払って11日間のお泊りの宿も無事確保できた。


 宿の受付のおばさんも感じの良い人だったので、即金で支払った。何故かおばさんもニコニコとしていた。飯の準備をしなくて良いからなのだろうか。理由は、その場では分からなかった。


 あとからアイリーに尋ねたところ、浄化とクリーンの生活魔法が使えると、部屋を綺麗にして出てくれたら、キャッシュバックがあるとのこと。へえ、笑うわ。それ。リピーター狙いなのだという。


 風呂桶も用意できると云われたが、アイリーが川で泡魔法を使いましょう。部屋では浄化とクリーンがあるから大丈夫です、と答えたので、おばさんはニコニコ笑ったらしい。ちなみにおばさんはソフィアと名乗ったという。何故名乗りを上げたのか。いや、聞く必要もないな。


 持たざる者もいる世界で、このスキルは僥倖だ。

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