最終話

「ずっとああなんですよ」


 モニターの画面を、刑事が顔をしかめて見つめていた。


 医者が刑事に、未映子について説明していた。


 白い部屋の真ん中で、未映子は三体の人形を抱きしめて座っている。未映子は幸福そうに微笑んでいた。


 刑事が出て行ったドアから、車椅子が入ってきた。


「未映子」


 車椅子に座っている狩野は、首に包帯を巻いていた。あの時、奇跡的に助かった狩野は、一週間に一度未映子に会いに来ていた。


 未映子はもう狩野を認識することはできなかったが、狩野は一生未映子を愛し、側にいようと決めていた。


 人は誰かに愛され愛する事で、命を生きる事が出来るのかもしれない。


 狩野はモニターの中の未映子を見つめながら思った。


 未映子は今、生まれて初めて命を生きているのかもしれない。




「お母さん」


「なあに」


「未映子の事好き?」


「好きよ。だーいすき」


「未映子もお母さんがだーいすき」


「お姉ちゃんだけずるいよ」


「お母さんは、未映子も小夜香もだーいすき」


「わーい」


「ずっと三人で一緒だよ」


 未映子と小夜香を、治子が優しい微笑みで包み込んだ。未映子のとろけそうに幸福な笑顔が、光に包まれていった。



 (おわり)

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砂の城 はる @harujun666

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